22日、昨年12月に亡くなった中山美穂さんの「お別れの会」が東京国際フォーラムで行われ、関係者ら約800人、ファン約1万人が参加した。

喪主を務めた妹・中山忍のコメントや小泉今日子の弔辞が涙を誘った一方、ファンの間で見られたのは「中山さんの作品を見よう」という動き。映画では4Kリマスター版が公開中の1995年公開『Love Letter』があがっているが、ドラマでは1990年放送の『すてきな片想い』(フジテレビ系、FODで配信中)をあげる声が目立つ。

デビュー作の『毎度おさわがせします』(TBS系)から、中山美穂役を演じた『ママはアイドル』(同)、月9デビュー作『君の瞳に恋してる!』(フジ系)、織田裕二とのラブストーリー『卒業』(TBS系)、遠距離恋愛がテーマの『逢いたい時にあなたはいない…』(フジ系)、シングルマザー役に挑んだ『For You』(同)、木村拓哉とのダブル主演『眠れる森』(同)など名作ぞろいの中、なぜ『すてきな片想い』が支持を集めるのか。

ドラマ解説者の木村隆志が改めてその魅力を掘り下げていく。

  • 『すてきな片想い』(C)フジテレビ

    『すてきな片想い』(C)フジテレビ

恋愛ドラマ全盛期でも際立つ純度

『すてきな片想い』は中山さんのファンのみならず、往年の月9視聴者からも評判がいい。

1987年のスタートから90年代前半にかけて、月9では『君の瞳をタイホする!』『君が嘘をついた』『君の瞳に恋してる!』『同・級・生』『世界で一番君が好き!』『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』『逢いたい時にあなたはいない…』『あすなろ白書』『君といた夏』など恋愛ドラマのヒット作が量産された。

中でも飛びきりピュアな恋模様が描かれたのが『すてきな片想い』。ひたすら一人の男性を想い続けるヒロインの純愛が今なお支持を集める理由だろう。今春は初対面の男女が夫婦生活を始める『波うららかに、めおと日和』(フジ系)の評判が高いが、35年前も今も純愛ドラマの希少価値は高いということかもしれない。

物語は、海苔問屋に勤める地味で恋に奥手なOL・与田圭子(中山美穂)が、スカートのファスナーが開いている姿や転んで生理用品をぶちまけたところを野茂俊平(柳葉敏郎)に見られてしまうシーンからスタート。

ある日、圭子は同僚・仁科友美(和久井映見)から紹介された男性に思い切って電話をかけてみると、意外にも意気投合して会うことになった。しかし、待ち合わせ場所に現れたのは失態を見られた野茂で、圭子は恥ずかしさのあまり逃げ帰ってしまう。さらに圭子は野茂との電話中、とっさに自分の名前を「林なな(※本棚の林真理子と吉本ばななの名前を見て)と偽名を名乗ってしまった。

その後、電話に加えて会う機会ができたことで野茂への想いは深まっていくが、親友・落合妙子(相原勇)に彼への恋を宣言されて言い出せなくなる。そんな彼女の周辺では、野茂の親友・潮崎豊(石黒賢)、高校の同級生・瀬戸哲雄(東幹久)、同僚・仁科友美も含め、片想いが交錯していく……。