アンパンマンを生み出した漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さんをモデルにした連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)の脚本を手掛ける中園ミホ氏にインタビュー。やなせさんではなく妻・暢さんを主人公のモデルにした理由、そして、史実では高知新聞社の同僚として出会った2人を幼馴染として描いた理由を聞いた。
112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、やなせさんと暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田のぶを今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じている。
やなせさんではなく妻・暢さんを主人公のモデルに。中園氏は、NHKからの提案があり、その上で話し合いを重ねて、女性が主人公という朝ドラの王道スタイルに決まったと経緯を説明する。
のぶが主人公だが「分量的には2人とも同じぐらいで描いている」とのこと。また、夫婦になってからの2人を描くのではなく、幼少期から描いた理由について「どうしてもやなせさんの幼少期を描きたかったという思いがあり、青春期もやなせさんを描く上でとても大切だと思っているので」と明かす。
幼馴染という設定にした理由とは?
「やなせさんに『子供のときどんな子でしたか?』と聞いたら、『気が弱くてあまり男の子っぽい遊びはしなくて、女の子の友達がいた』と。その女の子について『ミホちゃんみたいな元気のいい女の子だった』とおっしゃっていたので、もし暢さんが近所に住んでいて、その頃知り合っていたら、こういう会話をしたのではないかと、オリジナルで作らせてもらいました」
また、「やなせさんは複雑な生い立ちで、センチメンタルな詩もいっぱい残されていて、幼少期はとても寂しかったと思うんです」とやなせさんの心情を推察し、幼馴染という設定には「元気のいい明るい女の子がそばにいてくれたらいいなという私の願望も入っています」と明かした。
幼馴染からどう恋愛に発展!?「自然に恋に落ちていたという感じ」
幼馴染の2人が今後、どういう風に恋愛関係になり、夫婦になっていくのか。
「この2人が出会ったら、こういう会話をして、こういうことが起きるのではないかという風に作っていったら、ちゃんと自然に恋に落ちていたという感じです。残っている暢さんのエピソードはほぼ全部入れていますが、2人の青春期に関する資料はほとんどないので、想像を膨らませて書いています。暢さんとやなせさんの間でこういう会話がなされていたのではないかなと。そこは自信があります」
嵩の母・登美子を演じている松嶋菜々子が主演を務めた『やまとなでしこ』をはじめ、数々のラブストーリーも手掛けてきた中園氏。「私はラブストーリーを書くのが大好きな人間ですが、最近はお仕事ものの依頼ばかりで、久々にすごく大恋愛ものを書いていて、それも楽しいです」と笑顔を見せる。
のぶと嵩は幼馴染という設定だが、高知新聞時代の2人も描く。中園氏は「高知新聞のあたりからかなり史実に忠実に描いています。貴重な資料もお借りして、(2人が編集に携わっていた)『月刊高知』も読み込みました。かなり史実通りになっていると思うので、高知の方たちに楽しんでいただけると思います」と予告し、「高知新聞にいた時期は2人ともとても短いのですが、戦争直後に2人がそこで出会ったということはすごく大きな意味があると思うので、とても大切に描きました」と語る。
中園氏は小学4年生のときにやなせさんの詩を読んで救われ、ファンレターを送ったことから文通していた過去があり、実際に会ったことも。一方、暢さんと会ったことはなく、しかも暢さんの資料はあまり残っていないという。
「暢さんの資料が残っていないのを逆手にとって、こういう人だったのではないかなと、そこは私のイマジネーションで作らせていただいていて楽しいです。高知新聞では編集後記を書かれていて、読むと人柄が伝わってきて、いろいろイメージが膨らみます」と述べ、今後の見どころについて「正義は逆転するという重いテーマと、青春もの、恋愛もの……いろんな要素が入っているので、1つには絞れないです」と語っていた。
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