俳優の市川知宏が、現在放送中の連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で朝ドラ初出演を果たす。演じるのは、主人公・朝田のぶ(今田美桜)の幼馴染で海軍中尉の貴島勝夫。14日放送の第11回で初登場する。市川にインタビューし、オファーを受けたときの心境や朝ドラへの思い、そして役どころについて話を聞いた。

  • 市川知宏

    市川知宏 撮影:蔦野裕

112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、アンパンマンを生み出したやなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じ、脚本は中園ミホ氏が手掛ける。

――朝ドラ初出演が決まったときの心境をお聞かせください。

とにかくうれしかったです。20代の頃は、朝ドラのオーディションを受けていたのですがご縁がなく、30代になってからはオーディションの機会も少なくなってきていたので、まさか出られるとは思っていませんでした。今回、『花子とアン』(2014)のときのオーディションでご一緒した(柳川強)監督が、貴島役が合うのではないかと思い出してくださったそうです。『花子とアン』は最終オーディションで落ちてしまったので、当時は本当に悔しくて。約10年越しに出演させていただけることになり、驚きと喜びがありました。

――約10年前のオーディションがきっかけで出演が決まるということがあるんですね。

監督が2年前にNHKの夜ドラに出ているのを見て思い出してくださったそうで、続けていたら叶うものなんだなと。積み重ねが大事だなと思いました。年齢が上がってオーディションの頻度が減ってきていたので、出たいという思いを忘れつつありましたが、今回出られるとなったときにすごくうれしくて、やっぱり自分は朝ドラに出たかったんだなと感じました。

――改めて朝ドラに抱いているイメージを教えてください。

ここまで歴史のある枠組みはなかなかないと思うので、役者業をしている人たちが出たいと思う作品という印象です。僕自身もそうで、若い頃は憧れが強かったです。

  • (C)NHK

――貴島中尉という役についてはどう思いましたか?

男としてかっこいいなと思いました。1935年という戦前の設定で、ちょっと不穏な空気が漂っていたと思いますが、『あんぱん』に登場するキャラクターはそれぞれ苦悩しつつも、明るくひたむきに懸命に頑張っている人たちが多く、貴島はその中でも、これから起こる戦争に対して、国を背負って頑張って訓練や勉強をしていて、時代を表す意味で陰の部分を背負ったキャラクターだと思いました。それはプロデューサーや監督からも言われていて、最初に出てくる軍人ですし、戦前という空気を担うキャラクターとして、軍人らしさや、国を背負って懸命に生きているという姿勢をしっかり演じ、視聴者の皆様に届けないといけないなと思いました。

――『アンパンマン』との関わりもお聞かせください。

自然と見ていたという感じで、お風呂に浮かぶグッズやアンパンマンの顔のボールとかもありました。今でもたまに見ていて、国民的に愛されている作品なので、見るとやっぱり安心します。甥っ子と姪っ子と横浜アンパンマンこどもミュージアムも2回ぐらい行ってテンション上がりました!

――ご自身も親しまれてきた『アンパンマン』の生みの親であるやなせさんと妻・暢さんの物語に出られるという喜びもありましたか?

そうですね。日本人の誰もが知っている作品で、みんな興味があるテーマだと思いますし、やなせさんはみんなを元気づけたい、勇気づけたいという思いで『アンパンマン』を生み出されたと思いますが、その裏には弟さんを戦争で亡くされたり、つらい経験があって、そこにたどり着いたのだと思います。やなせさん自身も戦争を経験されていて、それが『あんぱん』において大きな出来事になると思いますが、貴島も戦争や国を背負うという、その1ピースを担わせていただけたことがすごくうれしかったですし、責任を伴う役だなと思いました。