作品の中では当然ながら嵩が絵を描くシーンが多く登場。それらも吹き替えなしで北村が演じているそうで、「絵を描くことは馴染みがある」と絵との関わりを明かす。
「僕は小学生の時から絵画教室に行っていて、選択授業も全部美術でした。油絵やボールペン画で抽象的な絵ばかり描いていて、漫画タッチの絵は描いたことがなかったですが、絵を描くことはすごく自分にとって馴染みのあることで、学生時代、ずっと絵を描いていたので、嵩と通ずるものがあるのかもしれません」
自身も絵との関わりが深いからこそ「運命的な役との出会いだなとすごく感じます」と語る北村。絵を描く基礎があったからか本作において絵のレッスンは全くなかったものの、自主的にアンパンマンを描く練習をしているという。
「アンパンマンは誰しも描いたことがあると思いますが、いざうまく描こうとすると全然うまく描けなくて。高知でロケしたときも、ホテルでアンパンマンを描いていました。やなせさんのように、よどみなく描けるようになりたいと思っています」
また、子供時代に『アンパンマン』を楽しんでいただけでなく、20代になって改めて『アンパンマン』と触れる機会があったという。
「コロナ禍とかその少し前ぐらいに『アンパンマン』と出会い直しました。子供のときよりももっと深い目線でやなせさんと出会っていたので、運命的だなとずっと感じています」
東日本大震災で芽生えた思い「誰もが平和になる世の中のために頑張りたい」
戦争のシーンも描く本作。北村は「誰もが平和になる世の中のために頑張りたいという思いは3.11からずっとある」と、中学1年生のときに経験した東日本大震災によって芽生えた思いを明かす。
「震災当時、日活撮影所で『鈴木先生』というドラマを撮っていて、教室のシーンだったのですが、すごく揺れて、みんな机の下に隠れて。その日一睡もできなくて。そこから人生観というか、中学生ながらにいろんなことが変わりましたし、震災が起きるたびに何かできればなという思いがあります」
そして、エンタメを通して自分にできることを考えているという。
「作品を生んで、ドラマや映画で、今この時代に戦争などを忘れさせないために描き続ける仕事は僕らにしかできないと思っています」
さらに、「コロナ禍も人生観を変えた1つでしたし、やなせさんの役との出会いは運命を感じざるを得なかった」と語る。
「僕の人生いろいろあったので、そこと重ねるところもあって、戦争も経験されたやなせさんほどの紆余曲折は……僕はまだ27年しか生きてないので波風程度なのかもしれませんが、今自分ができることを精一杯やるために、自分自身の人生も回帰し、いろいろ思い返しながら演じています」
実在の人物を演じるのは、2017年に日本テレビ系の番組で明石家さんま役を演じて以来。「実在する方を演じるのは自問自答の日々です」と語る。
「基本的にどの役も向き合い方は同じですが、実在している偉大な方であるからこそ、情報をたくさん蓄積できる良さがあって。常にこれで合っているのか、嵩なら、やなせさんなら、と自問自答しながら作っている日々です」と述べ、「ゴール地点のやなせさんはユーモアがあってひょうきんで、優しさと愛を持っている人で。そこに至るまでに、ここでこうなっていかないといけないよねと、点を打ちながら演じるという感じで、そこだけは慎重に演じています」と話していた。
1997年11月3日生まれ、東京都出身。2008年に映画デビュー。映画『君の膵臓をたべたい』(17)で注目を集める。近年の主な出演作は、映画『サヨナラまでの30分』(20)、『さくら』(20)、『東京リベンジャーズ』シリーズ(21・23)、『明け方の若者たち』(21)、『スクロール』(23)、『法廷遊戯』(23)、『悪い夏』(25)、ドラマ『教場』(21、23)、『ナイト・ドクター』(21)、『名探偵ステイホームズ』(22)、『星降る夜に』(23)、『アンチヒーロー』(24)、Netflix『幽☆遊☆白書』(23)など。
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