フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、6日に放送された『上京物語2025~二十歳のふたり 駆け出した夢~ 前編』。一流のパン職人になることを夢見て上京してきた2人の若者を追った作品で、SNSでは同期の差が広がっていく様子に様々な声が飛び交った。

若手パン職人が集うコンクールの全国大会出場を決めた原さん(21)に対し、朝早い仕事になかなか慣れない福山さん(21)だが、「彼だからこそ共感してもらえるところがすごくあると思うんです」と強く訴えるのは、今回の取材で寄り添い続けた鴨下満ディレクター(テレビマンユニオン)。13日放送の後編を前に、話を聞いた――。

  • 『ザ・ノンフィクション』の密着を受ける福山さん (C)フジテレビ

    『ザ・ノンフィクション』の密着を受ける福山さん (C)フジテレビ

先輩たちに萎縮する姿に新人時代の自分を重ねる

今回の舞台は、世界大会でも優勝したパン職人の井上克哉さん(56)がオーナーシェフを務める「ラ・タヴォラ・ディ・オーヴェルニュ」。鴨下Dは、福山さんが通っていた愛媛の専門学校が、この人気店に卒業生を輩出していることを知り、井上さんに上京した新人たちへの取材を申し込んだ。

取材に入る前、井上さんからは原さんが順調に仕事をこなす一方、福山さんが苦戦していることを聞かされていたが、出会った印象は「すごく好青年だと思いました」とのこと。しかし、実際に仕事ぶりを見てみると、遅刻が多く、声も小さくなって自信を失った様子がうかがえた。

そんな姿に、自身の新人の頃を重ねたという鴨下D。

「僕は今37歳ですが、22歳で入った頃はテレビ業界もまだ体育会系で、先輩たちと日常会話ができなくて、すごく萎縮していたんです。だから福山さんの感じが、自分が当時、先輩たちに感じていた部分とすごく通じるなと、取材を始めた当初から思っていました」

一方で、「井上さんにとっては、地方からわざわざ朝早くてつらい仕事を選んできたのだから、自分の技を盗んで吸収するスタンスで来るのが当たり前だと思っていたんです」というだけに、消極的な福山さんとの接し方に戸惑いが。そんな2人がうまくコミュニケーションが取れない状態が続くことを心配しながら取材を続けていた。

  • 同期の福山さん(左)と原さん (C)フジテレビ

「彼の中で間違いなく成長があったんです」

今作が長編ドキュメンタリー初挑戦の鴨下Dは「これまで番組の取材中に、相手に対して自分の思いをぶつける経験がなかったのですが、『ザ・ノンフィクション』のいろんなスタッフの方に“取材対象に嫌われることを恐れすぎている”と言われ、ドキュメンタリーのディレクターは傍観して相手の言っていることを鵜呑みにしているだけじゃダメなんだと学びました」と、取材しながら進化。前編では、福山さんに変わってほしいと願う鴨下Dが、飲みに誘うシーンもあった。

この思いが徐々に通じていったのか、後編では、全国大会に向けて連日連夜、練習を続ける同期の原さんの刺激も受け、福山さんに少しずつ変化が生まれる。苦手だったフランスパン作りの練習を始めたのだ。

鴨下Dは「福山さんがフランスパンの成形を他のスタッフに教えながら頑張っていたんです。“自分は今までうまくいかなくて何度も指導を受けてきたからこそ、教えられる部分もある”と言っているのを見て、すごくいいシーンだなと思いました。彼の中で間違いなく成長があったんです」と、感慨深く見つめていた。