俳優の高橋一生が、今秋に放送・配信される『連続ドラマW 1972 渚の螢火』(全5話 WOWOWプライム/WOWOWオンデマンド※第1話は無料放送)に主演することが8日、明らかになった。

WOWOW『連続ドラマW 1972 渚の螢火』で主演を務める高橋一生

『インビジブル』で第23回大藪春彦賞を受賞、さらに同作で第164回直木三十五賞候補となった小説家・坂上泉が、書き下ろしたクライムサスペンス『渚の螢火』(双葉文庫刊)を、高橋一生主演で実写ドラマ化。坂上の作品が映像されるのは、同ドラマが初めてとなる。

舞台は1972年の沖縄。現金を輸送していた銀行の車両が何者かに襲撃され、100万ドルが強奪される事件が発生。当時の沖縄は復帰に際して円ドル交換(米占領下ではドル紙幣を使用していたが、復帰に伴い円紙幣への交換が必要だった)が県政の重要事業と位置付けられていた。琉球警察はこの件が日本政府やアメリカ政府に知られると、重大な外国問題に発展しかねないとこれを秘密裏に解決する特別捜査班を編成。復帰までの期限は18日。彼らは事件解決に奔走する。

高橋一生は、捜査に当たる特別捜査班の班長・真栄田太一を演じる。真栄田は石垣島出身、さらに東京の大学に進学し琉球警察に入署したエリート。沖縄の出身でありながら地元の署員からは「ないちゃー(本土の人間)」と揶揄され、真栄田は自分が何者なのかアイデンティティを問い続ける。

高橋一生 コメント

――オファーがあった際の印象、脚本に関しての感想は?

高橋:本作のお話を頂いたときに、実話ベースの物語でも娯楽作品として作り上げることはできるのではないかと感じました。僕はフィクションは徹底してエンタテイメントであるべきだと常々思っているのですが、ただ楽しめるということだけではなく、その物語が深く見ている人にしみ込んでいくということは可能なんじゃないかなと、望みを見出していました。本作に描かれているのは、忘れてはいけないこと、残していかなければならない歴史的背景だと思います。お芝居を通して、自分自身がこの歴史を学び直すきっかけになりました。

――撮影を終えて感じたこと、真栄田のキャラクターに関して思うことは?

高橋:とにかく密度が高い撮影でした。毎⽇時間が溶けていくようだと感じていました。気づいたら「こんなに撮っていたっけ?」という感じで、とても充実していたと思います。僕が演じる真栄田は、自分がどこで⽣まれ、自分がどのように社会や風⼟になじんでいくのか、自分はどうあるべきか、とアイデンティティを問い続けているキャラクターです。 撮影を終えて、本作に携わる皆さんが僕の真栄田というキャラクターを形作ってくれたと実感しています。共演者の皆さん、平山監督をはじめ、スタッフの皆さんが僕を真栄田として見てくださってとても助かりました。

そして、真栄田が所属する本⼟復帰特別対策室を語るうえで欠かせない存在が、真栄田と双璧をなす刑事・与那覇です。2人は同い年で、真栄田が八重山諸島出身であるのに対し、与那覇は沖縄本島出身。真栄田も熱いが、彼も熱い男で、2人はぶつかり合います。内燃している器官は一緒だけれど、出力の仕方が違うという差異を上手く出せたと思いますので、是非2人の掛け合いにも注目していただければと思います。

――視聴者の皆様へのメッセージをお願いします。

高橋:歴史的背景がわからないという方にもクライムサスペンスとして楽しんでいただくことができる作品だと思います。そして、自分がどこで⽣まれたかによってその人の人⽣が最初から決まってしまいかねないレールが存在している、ということにも着目していただきたいです。それぞれのキャラクターが浮き立ってみえると思います。僕は、本作に登場するキャラクターに悪人はおらず、社会に捻じ曲げられてしまった人々の物語として捉えています。どの人物もそうなってしまった理由があり、純粋悪ではなく、風⼟、国の背景、出自の違いなどで、こんなにも変わってしまうのかということを本作は問いている。そういった点も感じていただければと思います。

【編集部MEMO】

■『連続ドラマW 1972 渚の螢火』ストーリー

1972年、本⼟復帰を間近に控えた沖縄で、100 万ドルの米ドル札を積んだ現金輸送車が襲われ⾏方を絶った。円ドル交 換が完全な形で遂⾏できなければ日米外交紛争に発展しかねないと、琉球警察はこれを秘密裏に解決する特別捜査班を 編成した。班長に任命されたのは警視庁派遣から沖縄に戻ってきた真栄田(高橋一生)。そのほか、同級⽣でありながら真栄田をライバル視する捜査一課班長・与那覇、そして定年を控えたベテランの玉城をはじめとするたった5人のメンバー。事件解決のタイムリミットは本⼟復帰まで18日間。捜査を進めるうちに、事態は沖縄財界や地元ギャング、さ らには⽶軍関係者を巻き込み、二転三転していく……。真栄田らは期限までに100万ドルを取り戻し、犯人を捕らえる ことができるのか——。沖縄の未来を懸けた戦いが始まる。