2023年8月に発売した写真集『Sugarless』(3,300円 玄光社)が1年半にわたるロングセラーを記録し、今年2月に重版となった女優の鳴海唯にインタビュー。女優になるという子どもの頃からの夢を叶えた思い、自身にとって転機となったというドラマ『わかっていても the shapes of love』(ABEMA・Netflix)について話を聞いた。(前後編の後編)

  • 鳴海唯

    鳴海唯 撮影:杉山慶五

夢を叶えるために上京を決意

――今回取材のお時間をいただくということで、過去のインタビュー記事をいくつか拝見したのですが、小学生の頃から女優になりたかったとか。今こうして当時の夢を実現できている毎日っていかがですか?

幸せです。今こうしてそう聞いていただいて、幸せな人生を送らせてもらってるんだなと改めて思いました。スタートは遅くなってしまったけど、19歳ぐらいの時に上京するという決断をしたことが全部、今につながってるし、あの時の決断をした自分が今の生き方の指針になっている部分もあって。

――というと?

本当はこっちの道に行きたいけど、そっちに行ったら後悔するかもしれないというような、大きな決断のタイミングって結構あるじゃないですか。そういう時にあまり迷わなくなったんですよね。上京することを決めた時、自分の好奇心が働くほうを選んで後悔しなかったよなと思う自分がいるので、迷うことなく大きな決断もできるようになった。だから、あの時の自分に感謝していて。

――やらない後悔よりやって大成功ですね。

まさにそうです! 踏み出したから、いろんな人に出会えたし、悪いこともいいことも全部、結果的にいいことになってるという統計が自分の人生にはあるので、この指針は間違いないんだろうなと思います。何もしないうちから迷うことが少なくなってきたかもしれないです。私も腰が重い時はあるんですけど(笑)。

――安心します(笑)。

言っても、小学生の時に女優になりたいと思ってるのに、8年間ぐらい何もしなかったわけですから。基本的に腰は重いと思います。

  • 鳴海唯

――その決断があって、朝ドラや大河ドラマの出演も実現されました。反響も大きいのでは?

帰省して、おばあちゃんに会うと、私の仕事をすごく活力にしてくれているみたいで、「あんた頑張ってるのね」と言ってくれます。朝ドラや大河ドラマ、ゴールデンタイムのドラマの反響はやっぱり感じますし、そんなふうに多くの方の目に留まるような作品に頑張って出たら、おばあちゃんが喜んでくれるんだと思うと、もっと頑張りたいという気持ちになりますね。

人生にはしんどい時間もあったほうがいい?

――これまで出演したなかで印象的なものを一つ挙げるとしたら、どの作品になりますか?

最近で言うと、『わかっていても the shapes of love』という作品です。病気で亡くなってしまう役を演じるのは初めてだったので、今までやってきたお芝居のアプローチとはちょっと違うといいますか、自分の想像の範囲でできる役ではなかった。なので、毎日、現場で悩んでいて、すごく苦しかったですね。でも、正解が分からなくて、悩んで悩んで、最後までその時間の中で役と向き合うということなのかなと。

だから、自分の苦手なことから逃げたくないと思ったし、分からないままでもいいから、役のことを考えて向き合って悩み続けることをしないといけないし、していきたいなっていうふうに思えた。そういった意味でも、『わかっていても』はすごく貴重な体験をさせてもらえた作品になりました。

――苦手なことが見つかると同時に、役者をする上で大切なことのヒントを得たと。

今まで自分が向き合ってきた役は、自分の人生の引き出しの中から出せるようなキャラクターだったのかなというふうに思ったりもして。でも、人の命が関わる役になると、どうしても向き合う時間が増える。正直いまだに何が正解なのか分からないんですけど、とにかく役のことを考え続ける時間が大切なんだろうなということが分かったので良かったですし、その作品が皆さんに届いて、自分がずっと悩んでたことを汲み取って、受け取ってくださる方がいてくれたので、頑張ってよかったな、逃げなくてよかったなと思いました。

  • 鳴海唯

――苦手なことから逃げずに向き合うことで学びを得られる。役者以外の仕事にも言える考え方かもしれません。

やってる時はしんどいんですけど、終わった後にいつも楽しかったなと思えるんですよね。楽しいことだけをやってると、終わった後に不完全燃焼といいますか、自分ができることだけをやって終わってしまったという気持ちになることも経験してきたので、結果的にちょっと苦しんだほうがいいかなと。人生って山あり谷ありだから楽しさを感じられると思うので、苦しいと思う時間もポジティブに捉えて、「よしよし、いいぞ! 今、苦しいからいいんだぞ!」というふうに思って、生きていきたいなと思います。

――しんどいと思った時、鳴海さんのお言葉を思い出して頑張ってみます。では最後に改めて、写真集の見どころを教えてください。

この写真集には私が普段見せないような、こんな素の表情を皆さんに見られるのはちょっと恥ずかしいかもと思うくらいの写真がいっぱい入っています。これから新しく鳴海唯のことを知ってくださる方にも、もうすでに知ってくださっている方にも、鳴海唯って本当はどういう人なんだろう? となった時に、この写真集を見ていただけたら、それが伝わるんじゃないかなと思います。私のプロフィールのような1冊になっていますので、私のことを知ってくださった方はぜひ手に取っていただけたら、うれしいです。

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■プロフィール
鳴海唯
1998年5月16日生まれ。兵庫県出身。2019年、NHK連続テレビ小説『なつぞら』でテレビドラマデビュー。2023年、『どうする家康』でNHK大河ドラマ初出演を果たす。2024年、TBS系ドラマ『Eye Love You』でゴールデンプライムタイム連続ドラマに初レギュラー出演するなど、注目を集めている。