JR東日本は3月15日にダイヤ改正を実施。中央線快速・青梅線でグリーン車サービスが開始された。昨年10月からダイヤ改正まで、「グリーン車お試し期間」として追加料金なしでグリーン車に乗車できたが、今後はグリーン料金が必要となる。昨年の「グリーン車お試し期間」に続き、グリーン車サービス開始後の中央線快速に乗車した。
4・5号車に2階建てグリーン車増結、快速・特快すべて12両に
中央線快速(東京~大月間)および中央線・青梅線直通列車のグリーン車は、E233系の4・5号車(東京方から4・5両目)に増結する形で編成に組み込まれた。それまで10両編成だったが、グリーン車増結後は12両編成で運行され、普通車の6号車に車いす対応トイレも設置している。停車駅のホーム上に「Suicaグリーン券」専用の券売機も設置された。
中央線快速・青梅線のグリーン車に関して、基本的な内装・設備は横須賀線・総武快速線のE235系1000番代に準拠しており、全席に電源を備えたリクライニングシートに着席できる。その他、背面テーブル、フック、網ポケット、ドリンクホルダーも使用可能。頭上の読取り機に「Suicaグリーン券」をタッチすることで車内改札を省略できる。他線区の普通列車グリーン車と同様、2両合計の座席定員は180名とのこと。
折返し駅での整備時間を短縮するため、2階建てグリーン車で初という自動回転式の座席を採用。ドアを両開き(幅1,300mm)とし、スムーズに乗降しやすくした。デッキの幅も広くし、平屋席が減った分、階上席・階下席の座席数を増やすことで定員数を維持した。
前述の通り、昨年10月からダイヤ改正まで「グリーン車お試し期間」とされ、追加料金なし(普通車扱い)でグリーン車を利用できた。この間に各編成へグリーン車の増結も順次行われた。お試し期間中、グリーンアテンダントは乗務せず、トイレ・ゴミ箱・無料Wi-Fiも使用できなかったが、グリーン車サービスを開始した現在は利用可能となっている。
普通車扱いだった期間のグリーン車はかなりの人気で、デッキにも多くの利用者が立っていたほどだった。昨年10月の運行開始直後、グリーン車を連結した編成が少なかったこともあり、東京駅で長い待機列も見られた。3月15日のグリーン車サービス開始後、お試し期間中より混雑は緩和されたと思われたが、SNSで「ほとんど人がいない」「ガラガラ」といった投稿も見られる。実際の様子はどうなっているのか。
休日夕夜間に東京~八王子間で乗車、利用者数は
今回は東京駅から中央線快速のグリーン車を利用してみた。東京駅での中央線快速の折返し時間は非常にタイトで、先行列車の3分後に次の列車が発車することも日常茶飯事。これだけ短い運転間隔でどのように車内整備を行っているか。ホーム上で観察してみた。
東京行の列車が到着した後、清掃員がグリーン車の車内に入り、1両あたり2人で作業を行っていた。両端の平屋席から点検を行った後、1人は階上席、もう1人は階下席を見て回る。反対側のデッキでゴミ箱からゴミ袋を回収しつつ、座席の自動回転を起動させたが、平屋席のみ手動で転換させていた。全員が作業を完了したところで、利用者への案内を開始。到着から発車まで3分程度という非常に短い時間の中、車内整備は約1分と迅速に作業を行っていた。階上席・階下席の自動回転も、作業短縮化につながっているように見受けられた。
ただし、東京駅の時点でグリーン車に乗車する人は、お試し期間中と比べて大幅に減少。多くて1両あたり10人前後という状況だった。時間帯によって多少変化すると思うが、どの列車も普通車が混雑し、グリーン車に余裕があるという状況が続いている様子だった。清掃・点検の様子がわかったところで、筆者もグリーン車の車内に入る。
今回は祝日の夜、東京駅を19時台に発車する中央特快(大月行)に八王子駅まで乗車。5号車(サロE232)の階上席に着席した。発車後の自動アナウンスを聞くと、グリーン車の案内が追加されている。東京駅を発車した時点で、階上席に着席した人は筆者も含めて8人。たしかに利用者数は少ないが、それだけ静かで快適に過ごしやすくもなった。
途中の新宿駅で2分ほど停車。筆者のいる階上席に7人乗ってきたが、新宿駅でも普通車の乗車位置に並んでいる人のほうが多かった。中野駅や三鷹駅でも、グリーン車に乗る人はほとんどおらず、普通車が混雑している様子。三鷹駅を発車した時点で、同じ客室内に乗り合わせている乗客は筆者を含めて17人だった。2人組の乗客は隣り合うように座って雑談し、1人で乗車した人はスマートフォンや缶ビールを片手にくつろいでいた。
国分寺駅に到着した際、見えた限りではグリーン車へ乗車する人はいなかった。一方、筆者のいる階上席からは3人が下車。青梅行と接続したものの、そちらもグリーン車の利用者はあまりおらず、普通車に利用が集中していた。立川駅で東京行の中央特快とすれ違ったが、やはりグリーン車よりも普通車のほうが混雑していた。
多摩川を渡って日野市に入り、日野駅、豊田駅と続けて停車。日野駅を発車し、しばらく切通しを走ると、視界の開けた築堤上に出つつ、豊田駅に向かって下り勾配を駆け下りていった。日中なら、車窓風景が遠くまで見渡せるだろう。東京駅を発車してから1時間弱で八王子駅へ到着し、今回はここで下車。大月駅へ向かう列車を見送りつつ、車内とホームの様子も見たが、普通車が混んでいて、グリーン車に余裕がある状況は変わらなかった。
東京~八王子間の運賃は830円、同区間のSuicaグリーン料金は750円(利用距離47.4km)。合計で1,580円となる。あまり距離が離れていないこと、この2駅間なら特急列車でも移動できることを考えると、少々割高な気もする。ただし、グリーン車の利用で混雑を避けられる可能性が高く、着席できれば快適なことに変わりはない。
次の休日、昼すぎに国分寺駅を訪れた際、階上席の窓側を中心に利用者が多少増えているように見受けられた。時間帯によっては、「JR東日本アプリ」の列車走行位置で「混み合っている」または「満席」の表示が見られ、とくに青梅線へ直通する列車にその傾向がある。東京駅の時点で利用者が少なくても、新宿駅で乗降する人もいるだろう。中央線快速・青梅線のグリーン車は今後、どれくらい浸透していくだろうか。
中央線グリーン車と他の有料列車の料金は
中央線快速・青梅線のグリーン料金は、他路線の普通列車グリーン車と同様、利用距離50km以内で通常料金1,010円・Suicaグリーン料金750円、100km以内で通常料金1,260円・Suicaグリーン料金1,000円。「JRE POINT」で利用する場合、利用距離にかかわらず600ポイントが必要となる。普通列車グリーン車は「グリーン車自由席」に分類されるので、利用区間分のグリーン券を持っていれば列車と座席はその場で選べる。
東京~大月・青梅間で利用距離が50km以内となる例は、東京~西八王子間(49.8km)、東京~羽村間(49.2km)、新宿~高尾間(42.8km)、新宿~青梅間(45.7km)、中野~相模湖間(47.9km)、三鷹~四方津間(49.9km)、立川~猿橋間(47.8km)、八王子~大月間(40.4km)。最も長い東京~大月間でグリーン車を乗り通しても利用距離は87.8kmなので、グリーン料金は最大1,260円(Suicaグリーン料金1,000円)となる。
大月・青梅各方面から、後戻りせずに東京方面へ乗り継ぐ場合のみ、1枚のグリーン券で別の列車のグリーン車へ乗継ぎが可能。ただし、立川駅で大月方面・青梅方面にグリーン車を乗り継ぐこと、中央線快速・青梅線から他線区の普通列車グリーン車に乗り継ぐことはできず、グリーン料金が別途必要となる。着席できず、デッキで立って利用する場合も、グリーン料金を支払わなければならない。
中央線の東京駅、新宿駅、立川駅、八王子駅、大月駅では、特急「あずさ」「かいじ」も停車する。特急料金(事前料金)は50kmまで760円、100kmまで1,020円。「えきねっと」に会員登録し、チケットレスで特急券を購入すると100円引きとなり、中央線快速のグリーン車より安くなる。主要駅間の移動なら「あずさ」「かいじ」のほうが安くて速い。
朝夕は他社線を走る「京王ライナー」「拝島ライナー」の存在も大きい。「京王ライナー」は新宿~京王八王子・高尾山口間などで運行され、同区間の運賃は410円、座席指定券も410円。「拝島ライナー」は西武新宿~拝島間で運行され、同区間の運賃は450円、座席指定券は400円。つまり、追加料金を払っても京王線は合計820円、西武線は合計850円なので、中央線・青梅線で同じ区間を利用するより半分近くも安く済む。「京王ライナー」「拝島ライナー」ともに列車・座席を指定するため、予約・発券できた時点で着席が保証される。
特急「あずさ」「かいじ」や「京王ライナー」「拝島ライナー」に対して、中央線グリーン車が優れている点を考えると、利用しやすさが挙げられる。最短3分間隔でグリーン車付きの列車を運行しているので、特急列車およびライナー列車の運行時間に合わない場合、または特急通過駅で乗降する場合でも利用でき、着席機会を得やすくなったのではないだろうか。なお、高尾~大月間はグリーン車付きの列車が少なくなっている。
他にも、特急停車駅間を移動する場合や、京王線・西武線の駅が目的地または生活圏の場合、そちらのほうが便利な可能性もある。中央線快速・青梅線のグリーン車は自由席なので、座れる可能性は高くても着席が保証されるわけではない。日常利用や休日のお出かけ、住んでいる地域なども踏まえて有料列車を使い分けてほしい。