昨今、世間を騒がせ始めた「花粉皮膚炎」。花粉が舞う季節に起こる肌のかぶれなどのことを指す症状だが、「花粉症」がまだ発症していない人でも罹患する可能性があるという。さらにはマスクをしていても完全に防ぎきれないという話も…? 果たして、「花粉皮膚炎」とは何なのか。どのようなメカニズムで起こるのか。さらに予防法なども含め、よしき銀座クリニック院長の吉木伸子医師に話を聞いた。

■「花粉皮膚炎」が起こってしまうメカニズム

2025年は例年と比べて花粉の飛散開始が早く、さらにその飛散量が多いとされている。その結果、多くの人々が「花粉症」に悩まされているが、ここ最近は「花粉皮膚炎」という言葉も聞くようになった。その「花粉皮膚炎」について吉木医師はこう語る。

「花粉皮膚炎とは一般名称であり、医学的には、花粉によるかぶれ。スギなどの花粉による接触性皮膚炎またはもともとアレルギー体質をお持ちの方は花粉によるアレルギー性皮膚炎と呼ばれています。反応しやすい花粉の種類によっては春だけでなく秋に起こる方もいます」(吉木医師)

主には市販の薬では解決できない痒み、顔だけでいうと湿疹や赤みなどの症状が特徴。「花粉皮膚炎は、花粉によるかぶれなので、血液検査で花粉症と診断を受けなくてもどなたでも発症します。今年のように花粉の飛散が多い年のほうが重症化しやすいかもしれません」と吉木医師。「花粉症」とは関係なく発症してしまう恐れがあり、厄介だ。

一般的に「花粉皮膚炎」が起きやすい状態は肌が敏感になっており、外部から受けるさまざまな刺激から体を守る、皮膚のもっとも外側にある角層のバリア機能が低下している状態の肌のことをいう。

角層のバリア機能は主に、皮膚に必要な水分を保持するセラミドなどの細胞間脂質、角質細胞の中で水分を引き寄せるNMF(Natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)、水分の蒸発を肌表面で防ぐ皮脂膜の3つが重要な役割を担っている。しかし、さまざまな原因によりこれら3つが少なくなると、肌の水分を保つ能力が低下し、皮膚のバリア機能も低下した状態となってしまう。そうなると、刺激物質やアレルギー物質、さらに細菌などが体内に侵入しやすくなる。

その結果、かゆみや赤みなどの肌トラブルを引き起こす。そのため、バリア機能が低下している肌に花粉が付着すると、赤みやかゆみを感じる場合がある。