大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で市原隼人が鳥山検校役を好演し、存在感を放っている。第11・12回の演出を担当した小谷高義ディレクターに、鳥山検校の描き方や市原との裏話を聞いた。

  • 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』鳥山検校役の市原隼人(左)と瀬以役の小芝風花

江戸時代中期の吉原を舞台に、東洲斎写楽、喜多川歌麿らを世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く本作。脚本は、『おんな城主 直虎』(17)以来、8年ぶり2度目の大河ドラマとなる森下佳子氏が手掛ける。

市原演じる鳥山検校は、当時吉原一の花魁と言われた瀬川(小芝風花)を高値で身請けをした男。“検校”とは盲人に与えられた最高位の官位で、鳥山は幕府の許しを得て高利貸しを行い、多額の資産を築いていた。金の力ですべてを手に入れた鳥山だが、妻・瀬以(瀬川)の心だけは自分のものにできておらず、蔦重の姿を感じ取っている。

実在の人物で史実から着想を得て描かれているという鳥山検校。市原は、視覚障害者の所作へ入念なアプローチをして演じているそうで、小谷氏は「検校は視覚障害を持つ方々のトップの内の1人。市原さんは所作を大切にされていました。当事者の方々への取材など、できる準備を貪欲に積み重ねられて、確固たる人物像を作り上げてくださいました」と称える。

演出としては、「音を敏感に感じる人」として描こうとしたと言い、「僕が担当したシーンだと、森下さんとも相談して三味線を弾いてもらいましたし、新田(真三)が演出した回だと、足音をどう聞き分けるか、気配をどう感じるのかということを意識的に描いていました」と説明。

「音や空気の揺れに対する敏感さを、市原さんは丁寧に突き詰めてくれました。普段は視線が合わないけれど、ここは目が合っていいですよねと、そういうことも細かく考えていただいていて、常に真摯な姿勢を崩されません。そうして生まれたある種の緊張感が、際立った存在感へつながっていると思います」と語る。

瀬以の蔦重への思いを察し、嫉妬するような場面も。小谷氏は「花魁を身請けするというのは、一筋縄ではいかないとわかった上でしょうし、瀬以が自分へどんな思いを向けているか、冷静にわかろうとしている人だと思います。それでもすべてがウェルカムで始まる話ではないので、だんだん疑心暗鬼になるのだと思います」と話していた。

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