それ以上に支持を集めたのが、社内の人間関係。歩の同期である桐明真司(瀬戸康史)、人見将吾(桐山照史)、香月あかね(山本美月)との関係性は熱く、上司である織田勇仁(遠藤憲一)、安芸公介(山内圭哉)との関係性は温かく、どちらも視聴者の感動につながっていた。その点で当作は「清々しい若者群像劇と、慈愛に満ちた師弟の物語が共存した稀有な作品」と言っていいのではないか。とりわけ最終話は同期や師弟の互いを思い合う姿に泣かされる。

もちろんきれいごとばかりでは職場の臨場感が出ないものだが、単純作業しか振ろうとしない上司、要領がよく部下を使うだけの上司、女性を軽視するデリカシーのない上司、不正の疑いがある上司など、若手の壁となる人物も巧みに描写。それを丸山智己、矢柴俊博、マギーら芸達者なバイプレーヤーが巧みに演じることでリアリティにつなげていた。

今春、就職や転職をする人々にとっては元気をもらうだけでなく、いい意味で働くことについて考えさせられる作品だろう。なかでも最終話で先輩社員になる桐明が新入社員たちに贈った言葉には当作の魅力が凝縮されていた。

唯一見ていて「もったいないな」と思わされたのは、全9話ではなく、少なくとも全11話、できれば全12話で描いてほしかったこと。同作は韓国ドラマ『ミセン-未生-』の日本版リメイクだが、日本の連ドラ換算で34話分の長さがあった原作を全9話にまとめられていた。そのため「登場人物のセリフで物語を進めていく」というケースも目立ち、これらを「心理描写を織り交ぜてじっくり描いていたらもっと感動できたのではないか」と感じさせられる。

ただ、これは裏を返せば、動画配信サービスにおける“一気見”という観点では、「全9話のほうが見やすい」という感もあり、今となっては良かったのかもしれない。

フジと中島裕翔の長期的な関係性

最後にもう1つ挙げておきたいのが、主演を務めた中島裕翔について。

中島にとってゴールデン・プライム帯の連ドラ単独初主演を飾った作品だが、それまでは2013年の『半沢直樹』(TBS)に半沢の後輩行員役でレギュラー出演したにもかかわらず、俳優としてのイメージは薄かった。

まだ「旧ジャニーズ事務所のアイドル好きでなければ知らない」というポジションに過ぎず、主演は大抜てきというニュアンスがあったのは確かだ。当初、原作の韓国ドラマを見た人々の中には、「名作の主演にアイドルを起用するなんて」という批判も少なくなかったが、徐々にそんな声は消えていった。

中島にしてみれば同作は、2014年の『水球ヤンキース』で山崎賢人、間宮祥太朗、中川大志、吉沢亮を率いる形で主演を飾り、15年の『デート~恋とはどんなものかしら~』で杏をめぐる長谷川博己のライバル役を好演した上でつかんだ主演だった。さらに18年と20年の『SUITS/スーツ』で織田裕二の相棒を務め、2022年の『純愛ディソナンス』で教師と生徒の禁断愛を演じ、そして現在の『秘密』。これらの出演作はすべてフジ系だけに、戦略的な起用にも見える。

中島はフジに才能を認められて機会をもらい、成長をうながされ、フジは中島の才能にほれ込んで機会を与え、成長をうながしてきた。そんな両者の関係性がより強固になったきっかけは『HOPE』だったのではないか。

いずれにしても、仕事に悩み、喜び、怒り、涙する……そんな多くの視聴者が自分に置き換えられる若者を演じた中島の評価が上がった作品であることは間違いない。

日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。