「103万円の壁」の行方に注目が集まっている。と同時に、収入から引かれる税金や手取り額の実情に対する関心も過去にないほど高まっている。そこで今回は、大手買取専門店「買取大吉」を展開するエンパワーで独立・開業したフランチャイズオーナーの一人にインタビュー。サラリーマンから独立し、収入や支払う税金はどのように変わったのかを聞いてみた。
「もっと何かできることはないか」会社員時代の葛藤
――まず、独立以前のキャリアについて教えてください。
高校卒業後は食品会社の工場で機械のメンテナンスなどをしていたのですが、なかなか給料が上がらず、もっと稼げるようになりたいなと思うようになったんです。それで働き始めてから1年半くらいで転職し、自動車のセールスマンとして5年ほど営業を担当することになりました。その後に独立し、今に至っています。
――会社員をやめて独立しようと思った理由はなんだったのでしょう?
簡潔に言うと、どんどん実力もついてきて、もっと自分個人の力でできることがあるんじゃないか、と思ったからですね。自動車のセールスマン時代は、入社1年目で北関東エリアの【新人の部】販売台数1位、2年目には県内の「トップセールス」に選出され、その後は「100台以上売るセールス」にも選ばれました。
しかし入社から約3年が経って実績もついてきた頃、「もっと高みを目指して、何かできることはないか」と考えるようになったんです。このまま働いてどんなに成果を上げても、おそらく年収は1000万円くらいが限度だろうとも感じていました。そこで、今から1年3カ月ほど前、24歳のときに独立を決めたんです。
――独立にあたって、なぜエンパワーが展開する「買取大吉」のフランチャイズオーナーになろうと考えたのでしょう?
前職では車の買い取りなども担当していたのですが、やはり下取り価格を高めに提示させていただくと、お客様にすごく喜んでいただけたんですよ。そこでまず、「買い取り事業で独立するのもよさそうだ」と考えるようになりました。
最初は車の買い取り事業を立ち上げようかとも思ったのですが、かなりのランニングコストが必要になりますし、独立の一歩目としてはなかなか難しそうだったんです。そこでリユース業界に目をつけ、エンパワーさまに資料請求し、「これなら今の自分でもできるかもしれない」と考えた結果、買取大吉のフランチャイズオーナーをさせていただくことになりました。
フランチャイズオーナーになって約1年、年収は4倍以上にアップ!
――独立後から現在の店舗運営状況について教えてください。
まずは2023年12月に1号店、2024年9月には同じ県内に2店舗目をオープンしました。そして2月に3店舗目を2店舗目と同じ市内に開業しました。
店舗運営は順調で、おかげさまで毎月黒字経営ができており、今のところ赤字を出したことはありません。
――勝因はどこにあるのでしょう?
やはり一番大事なのはマーケットだと思います。出店する場所が悪ければ数字は伸びません。これについては、店舗の立ち上げ前に買取大吉の本部から調査データをいただき、それに基づいていい場所に出店できたことが本当に大きかったと思います。
あとは顧客対応の際におさえておくべきポイントなども従業員と共用しているので、それがリピーター獲得や売上に繋がっているんだと思います。前職での経験やノウハウ、知識などもどんどんスタッフにシェアするよう意識しています。
もちろん、本部から接客の指導をしていただいたり、粗利を取る方法などについて教えていただいたりするなど、手厚くサポートしていただいているおかげでもありますね。
――フランチャイズオーナーになってから、収入はどれくらい増えましたか?
まだ独立して1年ですが、4倍くらいはもらえるようになりました。前職の年収が700万円ちょっとだったのですが、今は3000万円近く稼ぐことができています。今後は2店舗目、3店舗目の売上も出てきますので、今よりもさらに上がっていくんじゃないかと期待しています。
税金面でのメリットは? 売上が上がり法人化するとより節税できる
――会社員時代と比べ、税金面でのメリットなどは感じられていますか?
経費に計上できる幅は会社員時代より増えましたね。もちろん、すべて業務上、必要な経費ですが。例えば通勤車の購入費やガソリン代、オフィスの家具、家電、備品、消耗品、打ち合わせを兼ねた従業員との食事も「接待交際費」という名目で計上しています。
個人事業主は数字を上げれば上げるだけプラスになるので、販促費を積極的に使っているのですが、これも経費に計上できるのはうれしいですね。
――今は個人事業主ということですが、法人化はしないのでしょうか?
所得が増えてきて節税効果も上がるので法人化を検討しています。所得税は最大税率が45%になる累進課税ですが、法人であれば最大税率が23.2%におさえられるんです。また福利厚生費用や住宅費、経営者である私の給与・賞与も経費になるなど、経費の幅も広くなると聞いています。
自分でどこまで節税に力を入れるかはさておき、会社員より幅が広がるのは間違いないのではないでしょうか。
――それでは最後に、独立したことのメリットについて教えていただけますか?
一番はやはり所得が上がった点、そして自由度が高くなった点じゃないでしょうか。頑張れば頑張るだけ収入にも直結するので、会社員時代と比べてもモチベーションはめちゃくちゃ上がっています。従業員を雇えば自分の時間が増えて、家族と過ごす時間だって増えます。
あと、会社員時代は上司や先輩がいましたが、自ら事業を立ち上げれば自分がトップになるので、やりたいことができるんですよね。「頑張っていい店にしていこう」と目標を立て、従業員と一緒に達成するための努力をする。これは本当に幸せなことだと日々、実感しています。