高級時計ブームが終わりを告げようとしているらしい。その筆頭はバブルに沸いたロレックス、しかもどうやら、背景には為替などの影響もあるようで……。
ロレックス・バブルは本当に弾けたのか、現行品もヴィンテージも同様の影響を受けるのか。気になるロレックス市場の最新事情について大手買取専門店「買取大吉」の鑑定士である木村健一さんに話を聞いた。
ロレックスの価格が変動するのは「ドル建て」だから
――バブルが弾けたといわれる最近のロレックス相場について教えていただけますか?
昨年はロレックスの価格が過去最高値を更新してニュースにもなっていましたが、最近は緩やかに落ち着きを見せています。ロレックスも金と同様、ドル建てで取り引きされているので、為替の影響を思いっきり受けているんですよ。ここ1カ月の推移としては10%程度下落していて、以前よりは買い求めやすくなっています。
ただ、ロレックス人気は変わらずで、ブティックに行ってもなかなか買えない状況は継続中です。
――なるほど、金と同様に為替の影響を受けやすいんですね。
ブティックで購入する現行品は金とほぼ同じ値動きをします。しかし、1980年代くらいまでにかけて販売された「ヴィンテージ」、1990年~2000年代くらいの「セミヴィンテージ」は現行品ほど為替の影響は受けにくいです。
廃盤品は欲しい人が多ければ多いほど価値が高まっていきますし、値崩れしにくい傾向にあります。
――「セミヴィンテージ」というのは初めて聞きました。
最近になって出てきたワードです。一般的には現行品の人気が最も高く、ツウの時計好きはヴィンテージを好む傾向にありますが、最近はこの「セミヴィンテージ」も人気が出てきて、値段も上がり始めました。
ロレックスの同じモデルでも年代によって値段はさまざま
――ちなみに、ロレックスならどんなモデルでも比較的高く売れるのでしょうか?
最近はロレックスでも細分化が進んでいて、同じモデルでも値段に差が出てきます。ここにあるのはロレックスの「エクスプローラー」、通称「オンリースイス」。90年代後半に出回ったモデルになります。
――「オンリースイス」? エクスプローラーにも種類があるんですか?
エクスプローラーはエクスプローラーなのですが、年代によってはダイヤルの文字やインデックス(数字)に微妙な違いがあるんです。この「オンリースイス」は、ダイヤルの6時位置に「SWISS」という文字が入っているのですが、ご覧になれますか?
――あっ、確かに「SWISS」という文字が入っていますね。
これも時代によって「SWISS-T<25」「SWISS MADE」などと表記が異なるのですが、この「SWISS」という表記のみの「オンリースイス」は約2年程度しか製造されなかったということもあって、近年は評価が高まってきています。
他に、エクスプローラーのインデックス部分がシルバーの単色になっている、通称「ブラックアウト」というモデルもあります。こちらは1990年代前半に1年間だけ販売されたモデルで、やはりその希少性が評価され、他のエクスプローラーの4倍くらいの価格で取り引きされています。
――同じ90年代のエクスプローラーでも本当に細かく分かれているんですね。ちなみに、ロレックス全体で一番人気が高いモデルは何ですか?
一番はやはり「デイトナ」ですね。これも細分化が進んでいて、1990~2000年代に出回った「セミヴィンテージ」の評価も高まっています。デイトナの「16520」というモデルも文字盤の種類が6種類くらい存在していて、一番高いものだと3,000万円、安くて400万円と、約10倍近い差があったりします。
――こうしたセミヴィンテージやヴィンテージは値下がりしてないんですよね?
そうですね。値下がりしているのは基本的に現行品で、2000年代以前のものは値崩れしていませんし、これからも価値が上がっていく可能性が高いと思います。90年代のセミヴィンテージは今もまだ中古店で手に入りますが、80年代以前のヴィンテージは欲しくてもなかなか出回っていないので、やはりそのぶん価値が高いということになります。
――セミヴィンテージはどれくらい値上がりしたんですか?
当時は現行品として30万円くらいで販売されていて、一時は25万円くらいまで取引価格が下がったのですが、今は90万~100万円くらいまで上がりました。
安い時計、劣化した時計、壊れた時計が大化けする可能性も
――ロレックスが実家に眠っている可能性ってあったりするのでしょうか?
意外とあるのではないでしょうか。以前は現行品でも20~30万円程度と、比較的購入しやすい価格で販売されていました。実際、昔仕事中に着けていた、または買ったけれど使っていなかった時計をお持ち込みになる方も多いんです。
――家で長く眠っていたロレックスを買い取るというパターンも多いんですか?
多いです。極端な例ですが、1970年くらいに販売された「デイトナ」で、ベルトもスカスカで重量も軽く、当時は20万円くらいで販売されていた時計が今では3,000万円の価値になっているケースもあります。
当時としてはデザインが奇抜で人気がなく、製造数も少なかったのですが、これが今となっては逆に希少価値として認められているんです。
当時買った人からすれば、今になってこんなに評価されているとは想像もできないでしょうし、手元にあっても無価値だと思い込んでしまっているケースもありえますよね。
――「こんな古いロレックス売れないでしょ」と思い込んでいても、実はそれがものすごいお宝に化けているパターンもあると。
あとは、経年劣化したロレックスも価値が上がっていたりします。昔のロレックスは経年劣化するものも多く、もともとブラックのダイヤルだったのが色褪せてブラウンっぽくなっている場合もあるんですよ。
持ち主は「こんなボロい時計が売れるわけない」と思うかもしれませんが、今ではこれが「トロピカルダイヤル」と呼ばれ、南国で日焼けして色褪せたような風合いが人気となって、価格も2倍くらいに上がっています。
ちなみに、実際に着用していた個体より、タンスで眠っていた個体のほうが色褪せ方が綺麗な場合が多く、価格もそのぶん上がるので、ぜひ探してみてください。ロレックス以外でも、例えばタグ・ホイヤーやオメガのスピードマスターの「トロピカルダイヤル」も人気です。
――それは夢がありますね!
基本的にギャランティカード(製品情報が書かれたカード)が付属していれば価値も10%くらい上がりますし、ヴィンテージに至っては30%くらいはアップするので、もし一緒に保管している場合はセットでお持ちください。壊れているものでも修理すれば使用できるので、一度価値を確かめてみるといいと思います。