KDDIは2024年10月から2025年2月までの約4カ月間、2名の高校生をインターン生として受け入れた。学校法人自由学園の教育プログラム「飛び級社会人」の一環で、今回で2度目の実施となる。
「飛び級社会人」は、自由学園独自の授業「共生学」の集大成として実施されるプログラム。平和・人権・環境について学んだ生徒たちが学校を離れ、企業や団体で社会人と触れ合いながら実践的な学びを得ることを目的としている。
今回は、インターンの対応を担ったKDDIサービス推進部の齋藤あかりさんと、実際にKDDIでインターンとして活躍した、自由学園2年生の江渡さんと松岡さんのふたりにインタビュー。学校では味わえない挑戦を経て得た、新たな視点と気づきについて話を聞いた。
■「menu」のSNS運用や広告づくり、MBTIコラムなどを担当
――今年で2回目となった「飛び級社会人」ですが、昨年の受け入れ後、社内の変化などはありましたか?
齋藤:私は入社一年目なのですが、社内からは「高校生のみんな、思ったより全然すごかった」「とてもしっかりしていた」「学んだことのほうが多かった」という声が上がっていたようです。
当時は、「auスマートパスプレミアム(現Pontaパス)」にもっと若年のユーザーにもアプローチしたいという課題があったので、高校生インターンの子たちの意見はすごく活用できたようです。
――改めて、KDDIさんが「飛び級社会人」で高校生インターンを受け入れた背景について教えてください。
齋藤:KDDIは若い人材の育成に力を入れているので、このプログラムにも共感する部分が大きかったということがあります。それと同時に、今年はちょうどPontaパスにリニューアルするタイミングで、「プロモーションに力を入れていこう」「もっと若年のユーザーにもアプローチしていこう」と考えていた時期だったので、私たちも高校生から学びたいと考えていました。
――高校生のおふたりがKDDIのインターンに参加したキッカケについて教えていただけますか?
江渡:最初にいろんな企業のオンライン説明会があったのですが、KDDIさんは「SNSの広告などをやってもらいますよ」とおっしゃっていたんです。私はもともとSNSが大好きなので、「向いているかも」「ちょっと興味あるな」と思って参加しました。将来は教員になりたいと考えているのですが、それとはまったく逆の分野の仕事にも触れてみたいなと思っていたので、参加することにしました。今回は、主にサービス戦略部とサービス推進部でお仕事させていただきました。
松岡:私はもともと企業に興味があって、将来は海外と関わる仕事をしたいと思っているんです。そのなかで、KDDIさんはどういう雰囲気なんだろう、普段どういうことしてるんだろうと気になりました。説明会で、「Pontaパス公式TikTokアカウント投稿の裏側」などを聞いて、面白そうだなと思い、参加しました。
――おふたりはインターンシップ中、どういったお仕事を担当されたのでしょう?
江渡:サービス戦略部のほうでは、デリバリーサービス「menu」のSNS運用と、Pontaパス内に掲載するmenuの広告を担当させていただきました。
松岡:サービス推進部のほうでは、Pontaパス内に掲載する音楽プレイリストの作成や、MBTIコラムを手掛けました。また、KDDIが出資している映画『私にふさわしいホテル』のコメント動画をフォトキャストで撮ったのですが、その台本作成から編集依頼まで、一貫して行ったりもしました。
■「人生で初めてのカンペ持ち、すごく緊張した(笑)」
――特に印象的だった仕事などはありますか?
江渡:コメント動画を撮影する前に、台本やカンペを作るという作業を経験させていただいたのですが、一つひとつの言葉をすごく丁寧に考える必要があって、「ひとつの短い動画にも、これだけの労力がかかっているんだ」とすごく勉強になりました。私が普段、どうでもいいと思って飛ばしちゃってる動画とかも、とても丁寧に作られているんだなぁと感じました。撮影中は人生で初めてカンペ持ちを経験して、すごく緊張したのを覚えています(笑)
松岡:私はMBTIコラムがすごく印象に残っています。自分たちから提案したものなので、すごく思い入れがあるし、頑張ったなぁって感じています。Pontaパスの利用者のボリューム層は40~50代、自分たちの親世代です。その世代のみなさんに、若者の間で流行っているMBTIについて知ってもらいたかったし、それをキッカケにPontaパスを使う人が少しでも増えればいいなと思いました。
――インターン中に苦労した思い出などがあれば教えてください。
松岡:苦労だらけでしたが、MBTIは今、本当にいろんなSNSにいろんな言葉で載っているので、それをどう自分たちの言葉で要約し、公式アカウントから発信するか、という部分がすごく難しかったです。あと、MBTIのタイプごとにおすすめのクーポンを用意してるんですけれども、「このMBTIとこのMBTI、結構似てるけど違うクーポンにしたいよね。どっちがどっちのクーポンの方がいいんだろう」っていうところはすごく悩みました。一番時間をかけたところかもしれません。
――正解がない部分なので、難しいですよね。納得がいく内容になったんですか?
松岡:納得できましたし、結構自信があるものが作れたと思っています。
――インターンを通して、「働く」ということに対する捉え方や見え方に変化はありましたか?
江渡:自分のお父さんやお母さんが疲れて帰ってくるので、「仕事って大変そう」と思っていたんですけど、KDDIのみなさんは、楽しそうに仕事している人たちがすごく多いんです。忙しそうだけど楽しそうだし、私たちにもすごく優しくて、いつも気にかけてくれていました。今は「働くのも悪くないかな」って思っています。
松岡:初めてインターンに参加して、「社会ってこうやって成り立っているんだ」と感じました。普段使っている電車やスマホも、その裏には数え切れない人たちの努力があって、みんなで一緒に大きなものを作っているんだな、と心から思いました。あと、齋藤さんが言った「社会人も楽しいよ」っていう言葉がすごく印象に残っています。
――「社会人も楽しいよ」ですか。
松岡:私はもともと働くことに対してマイナスイメージはなくて、むしろ「格好良く働く大人の女性になりたい」という夢があるのですが、齋藤さんはまさに“格好良く働く大人の女性”でした。身近で見つけた! って思いました(笑)
■「このやる気、自主性があれば、社会人として通用する」
――齋藤さん、ふたりのインターン生活を終えて、率直な感想をお願いします。
齋藤:ふたりとも本当に自主性がすごくて、少し業務のアドバイスをすると、アドバイスした以上の内容を考えてきてくれるんです。吸収する力も高くて、言ったことの何倍も理解して、吸収している印象がありました。
江渡:ふたりでよく「言われたこと以上のことをやらないとだよね」って話していたので(笑)
松岡:頑張っている大人たちを間近で見ていたのもあって、「言われたことをやるだけじゃ駄目だよな」って考えるようになりました。
齋藤:すごい、感心します……! 私たちKDDIとしても、プロモーションに力を入れる時期だったので、若い子たちのトレンドを知れたというだけでも大きな収穫でした。また、「半分はお客様目線、半分KDDI目線」という私たちにはない視点からの純粋な意見は、すごく参考になりましたね。
――改めて、齋藤さんから高校生のふたりにメッセージをお願いします。
齋藤:ふたりともこれくらいのやる気、自主性があれば、社会人としてもしっかりやっていけると思いますし、やりたいことをものにしていけるんじゃないかと思います。ぜひ自信を持ってほしいですね。今回のインターンもこれで終わりにするのではなく、ここで勉強したことをふと思い出してもらえると嬉しく思います。
江渡:本当に感謝しかない4カ月でした。齋藤さん自身のお仕事をしながら、同時に私たちの面倒も見てくれていたと思うので、ちょっと申し訳ないと思いつつ、今回の経験をこれからの学校生活で活かせたらと思います。
松岡:本当に感謝しかありません。よく大人が「高校生くらいが(人生で)一番楽しいよ」と言うと思うのですが……。それもわかるんですけど、私たちは将来を考える大事な時期ですから、もっと楽しそうに働く姿を見せてほしいという思いもあります。だからこそ、齋藤さんが「仕事は楽しい」って教えてくれたのは、私のなかですごく大きかった。今日まで成長させてくださって、本当にありがとうございました。
――今回のインターンシップの経験を、今後どのように活かしていかれますか?
江渡:インターン中は、ひとつの業務をやったら振り返り、また違う業務をやったら振り返る、ということを繰り返していたのですが、この習慣はこれからも大切にしていきたいと思います。今後の学校生活で、成功も失敗もたくさん経験すると思いますが、失敗したときはもちろん、成功したときも「何が成功の要因だったのかな」と振り返り、次に活かしたいと考えています。
松岡:私も本当に同じ考えですね。私たちはこの春から3年生になるのですが、来年度から学校や寮をどういうふうに運営していくかということを今まさに学年で話し合ってる最中です。いろいろな改革を進めていくことになりますが、その際もちゃんとひとつひとつの物事を振り返りながら、そしてその習慣を私たちの代だけで終わらせず、下の子たちにもちゃんと伝えていけたらいいな、と思っています。