毎年2月は「胆道がん啓発月間」。1年間で約2万以上の日本人が胆管がんと診断されています。その一方で、早期では自覚症状が少なく、進行とともに黄疸や痛みが出ることが多いため、個人では進行するまで気づきにくいのが特徴です。胆道がんのことを知り、早めに見つける手がかりとしましょう。
■胆道がんとは
胆道がんはその名の通り、肝臓から十二指腸へと胆汁が流れる通り道(胆管・胆嚢)と、その出口にあたる十二指腸乳頭などを含む『胆道』にできるがんです。
胆道は、「胆管」「胆嚢」「十二指腸乳頭」という3つからできています。胆管はさらに、肝臓内にある「肝内胆管」と、肝臓の外にある「肝外胆管」に分けられます。また「十二指腸乳頭」は胆道の出口で十二指腸に繫がった箇所に当たります。
胆道がんは進行すると、胆道の周囲にある肝臓、膵臓、十二指腸へ直接浸潤・転移するほか、血液やリンパ液を介してリンパ節・肺などに転移する可能性があります。
胆道のどこにできたかによって、胆道がんは次のように分類できます。
<胆管がん>
胆管がんは、
・「肝内胆管がん」:肝臓内の胆管にできた場合
・「肝外胆管がん」:肝臓外の胆管にできた場合
に分けられます。
さらに「肝外胆管がん」は、
・「肝門部領域胆管がん」:肝臓の血管の出入り口に近い
・「遠位胆管がん」:膵頭部の中を通る箇所にできる
に分かれます。
なお、「肝内胆管がん」は肝臓内にできるので「原発性肝がん」に分類されます。ただし、検査や治療方法は肝外胆管がんと共通しているので、胆道がんとして扱われることが多いです。
<胆嚢がん>
胆嚢にできたがんです。
<乳頭部がん>
十二指腸乳頭にできたがんです。
<胆道がんの年齢層・男女差>
胆道がんの患者さんは50歳代以上が多く、年齢が高まるほど胆道がんの罹患率は高くなります。なお、男性の方が女性よりも患者数は多めです。
■胆道がんの原因
胆道がんの代表的な原因は次の通りです。
<慢性炎症>
胆嚢炎、原発性硬化性胆管炎などによって引き起こされます。
<先天性疾患>
先天的な病気、中でも先天性胆道拡張症や膵胆管合流異常症によって発症します。 なお、膵胆管合流異常症は特に胆道がんの発生リスクが高いことで知られています。
<印刷工場で使われた一部の化学物質>
近年、印刷工場で塩素系の有機洗浄剤を使い続けてきた30~40歳代の作業員が、高い頻度で胆道がんになっていたことがわかりました。塩素系洗浄剤に含まれていた成分「1,2-ジクロロプロパン」「ジクロロメタン」が原因ではないかと言われています。こうした胆道がんについては2013年以降、労働災害として認定されています。
なお、その他の胆道がんの要因についてはまだよくわかっていません。
■胆道がんの症状
胆道がんの主な症状としては、「黄疸」「発熱」「右わき腹の痛み」「体重の減少」などがあげられます。特に黄疸は胆道がんでもっともよく見られる症状です。胆道がんの種類によって、次のようによく見られる症状や症状が出るタイミングは異なります。
<肝外胆管がん・十二指腸乳頭部がんの症状>
肝外胆管がん・十二指腸乳頭部がんによく見られる症状は「黄疸」です。黄疸は、胆道がんなどで胆管が狭まったり詰まったりして胆汁の排泄が妨げられ、その中に含まれるビリルビン(黄色い色素)が血液中に蓄積し、全身が黄色くなる状態をいいます。
黄色くなる主な部位は皮膚や白目ですが、尿が茶色っぽく濃い色になったりもします。また、十二指腸に排出されるビリルビンは減るため、白っぽい便になることもあります。黄疸が進行すると、「皮膚のかゆみ」「全身のだるさ」「食欲不振」「体重減少」も起こりやすくなります。
また、胆道が閉塞して胆汁が排出されにくくなると、胆管炎となって「高熱が出る」こともあります。
<肝内胆管がん・胆嚢がんの症状>
肝内胆管がん・胆嚢がんは、早期では症状がほぼ出ません。進行するにつれて黄疸が見られることがあります。また、胆嚢がんの場合は胆石発作や胆嚢炎によって「みぞおち・右わき腹の痛み」が出ることもあります。進行とともに、「皮膚のかゆみ」「全身のだるさ」「食欲不振「体重減少」「発熱」も起こるようになります。
■胆道がんの予防法
先天性胆道拡張症や膵胆管合流異常症といった先天的な病気がある場合は、胆道がんになるリスクが高いため、まずは専門医に相談し、定期的な検査や外科的治療の適応を検討するのが望ましいでしょう。印刷工場で働いている場合は、「1,2-ジクロロプロパン」「ジクロロメタン」を含む塩素系の有機洗浄剤を使わないことが、胆道がんの予防に繫がります。
それ以外にも、科学的な根拠に基づいた一般的ながんの予防法があげられます。国立がん研究センターをはじめとする研究グループが定めた「日本人のためのがん予防法(5+1)」で予防に取り組んでいきましょう。
<日本人のためのがん予防法(5+1)>
・禁煙
吸わない人もタバコの煙をできるだけ避けましょう。
・節酒
飲む時は「1日当たりのアルコール摂取量は23g未満(純エタノール量換算)」になるように心がけましょう。
・食生活の見直し
塩分を控え、野菜と果物を採り、熱い飲み物・食べ物は少し冷まして食べましょう。
・身体を適度に動かす
日常的に、無理のない範囲でできるだけ身体を動かしましょう。
・適正体重の維持
がん発症のリスクが低いと言われるBMI値をめざしましょう。男性は21.0~26.9、女性は21.0~24.9がおすすめです。
・感染予防
感染は、日本人のがんの原因の約20%を占めています。必要なワクチン接種と定期検診で、ウイルス・細菌感染を防ぎましょう。
最後に胆道がんの予防方法に関して、消化器内科の専門医に聞いてみました。
胆道がんは原発性硬化性胆管炎などの慢性炎症、膵胆管合流異常や先天性胆道拡張症などの先天的疾患、さらには一部の化学物質への曝露が原因の一端とされています。早期には自覚症状が乏しいため、リスク因子を持つ方は定期的な画像検査(腹部エコー、CTなど)でのチェックが重要です。
一般的ながん予防として禁煙・節酒・適正体重の維持など健康的な生活習慣を心がけることも、胆道がんのリスク低減につながる可能性があります。なお、胆嚢結石に関しては症状がない場合、胆道がんとの関連を示す十分な根拠はありませんが、3cm以上の結石や症状を伴う場合には慢性炎症との関係でリスクが高まる可能性があるため、医療機関に相談するとよいでしょう。疑わしい症状や黄疸がみられた際には、早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。