パンク修理が苦手……というのは初心者だけでなく、中級者にも少なくない。手順は頭で分かっていても、実際に修理してみないと自信は持てないもの。これまで運良くパンクしなかった人も、走る距離が伸びれば、自ずとパンクを経験する確率は高くなる。
いつパンクしても慌てないように、まずは一般的なクリンチャータイヤで基本を確認しておこう。タイヤの規格は詳しく解説すると、かなりマニアックになる。ここでは初中級者向けにデフォルメして簡単に説明する。
まず、走っているときにタイヤに違和感を感じたら、できるだけ早く安全な位置に止まるのが鉄則。そのまま走っていると、最悪、タイヤが外れて転倒したり、ホイールを傷めてしまったりと、走り続けてもいいことは1つもない。
車道で修理するのは危険なので、作業するのは歩行者の邪魔にならないスペースのある歩道や空き地がいい。適当な作業スペースまで走ってしまいがちだが、必ず押して移動する。
原因を究明する
パンクは大きく分けて3種類。原因によって対応策も異なる。ただ、シチュエーションや音などで、おおよそパンクの原因の方向性は分かる。
1.貫通パンク
路上の異物が設置面のトレッドゴムを貫通、インナーチューブから空気が漏れる最も典型的なパンク。穴の大きさにもよるが、空気が抜けるまで、ある程度の時間がある。
2.スネークバイト
主に空気圧が不足してリムのエッジでチューブに穴が空くパンク。段差を越えたときに起きやすく、穴の形状が蛇に噛まれた痕に似ている。穴が2つ空くので、空気はあっと言う間に抜ける。
3.サイドカット
タイヤ側面の部分(ケーシング)が切れて、内側のインナーチューブが外側にはみ出しパンクする。他のパンクと比べて大きめの音がする。
「1.貫通パンク」「2.スネークバイト」はインナーチューブを交換すれば基本的に解決する。問題は「3.サイドカット」の場合。根本的な修理はできないので、内側からインナーチューブが飛び出さないようにタイヤブートや補修テープで応急処置し、最寄りの自転車店へ向かう。
インナーチューブを交換する
タイヤレバーを使ってタイヤをリムから外し、パンクの原因となったインナーチューブの穴を見つける。
穴の位置を見つけたら、同じ位置のタイヤに異物が刺さっているか、リムに凹みがないか確認する。ガラス片など鋭利なものが刺さっている可能性があるので、素手でタイヤの内側を触るときは気をつけること。
焦って地面に置いて作業すると、タイヤに小石が入って、パンクが再発することもある。また、直接パンクの原因になった異物の他にも、タイヤのゴムの部分(トレッド部)に切れている部分がないかチェックする。二度手間にならぬよう、慎重過ぎるぐらいを心掛ける。
スネークバイトの場合、アルミリムなら凹み、カーボンリムならヒビが入っていないかチェックする。ホイールが破損するようなときは、転倒するようなショックがあったときなので、単なるパンクなら大きな問題になることは少ない。もし、リムが凹んでいたら、パンク修理後も損傷が進まないようにスロー走行をしながら、最寄りのショップを探してリムが問題ないか相談する。
パンクしたインナーチューブと異物を取り除いたら、工程の半分以上は終わり。あとは元通りにするだけ。タイヤがリムに戻せなかったり、タイヤタイヤレバーを使った作業で交換したチューブをパンクさせたり、ミスが起きやすい工程はここからだが、正しいホイールの構造を理解し、落ちついて作業すれば難しいことはない。一つひとつのステップを踏んでいけば、パンク修理は誰にでもできる。
まず、チューブに息を吹き込んで膨らまし、全周に渡ってタイヤに挿入する。これはタイヤとホイールの間に挟まってパンクするのを予防するためで、ポンプを使ってチューブを膨らます場合は、入れすぎるとタイヤが嵌めにくくなるので注意する。
タイヤを戻す
スムーズな作業のポイントは、タイヤとリムの接触部となるビードを適正な位置にすること。このシンプルなコツを忠実に守れば、タイヤを嵌めるのに工具や力はいらない。そのためにもリムの構造について学んでおこう。
通常、クリンチャータイヤは内側からインナーチューブ(空気圧)によって押され、ビードでリムと嵌合している。
タイヤをリムに戻すとき、ビードはリム外径を越えて装着される。タイヤが嵌まりにくいのはビードの周長が、リム外径よりも短いから。そこでスムーズに嵌めるため、タイヤを両側からつまむようにして、ビードをリムの中央部分(リムベッド)の凹んでいる部分に、しっかりと落とす。
リムベッドはビードよりも周長が短いので、リムが凹んだ位置にビードがあれば作業もラクに出来る。一発でビードが収まることはないので、嵌めにくくなってきたら、何度もタイヤをつまんで余裕を作り出す。
これを繰り返すことで、リム外径を越える部分のビードに余裕ができる。これまでにタイヤを嵌めるのに苦労してきた人は、この工程の丁寧さに欠けていたのが、装着で苦労した最大の理由だ。ゆっくり丁寧に作業すれば、ほとんどのタイヤは手だけで簡単に嵌まる。
次回はパンク修理の最新グッズやチューブレスレディについて紹介しよう。