無印良品は2月20日からレトルトカレー「シャークカレー」を販売している。新潟県上越市にある直江津小学校の生徒と一緒に開発した商品。銀座にある新潟県アンテナショップ「THE NIIGATA」や無印良品の各店舗、にしき食品の公式オンラインショップで購入することができる。

無印良品×小学生の「カレープロジェクト」はなぜ始まった?

  • 銀座にある新潟県アンテナショップ「THE NIIGATA」

    銀座にある新潟県アンテナショップ「THE NIIGATA」

  • 「THE NIIGATA」内の『シャークカレー』コーナー

    「THE NIIGATA」内の「シャークカレー」コーナー

そもそも、なぜ無印良品と直江津小学校の生徒がともにレトルトカレーの開発に取り組むことになったのだろうか。報道関係者向けに開かれたお披露目会で、良品計画 信越事業部 事業部長の樋熊朋史氏がきっかけを明かした。

「2023年に良品計画と新潟県で連携協定を締結しており、大きく3つの取り組みを開始しました。健康医療福祉に関する健康ビジネス産業の創出・育成や、防災・減災に関することなどに加えて、『産業振興に関する事項』という取り組みがあり、これが今回のシャークカレーにつながっています。

産業振興に関する事項では、無印良品の店舗で地元の事業者が作っている"その地域のいいもの"を「諸国良品」とし販売する取り組みに加え、今回のように地域を盛り上げていくために子どもたちに学びを得てもらうための取り組みも行っているという。

  • 株式会社良品計画の信越事業部 事業部長の樋熊朋史氏

    良品計画 信越事業部 事業部長の樋熊朋史氏

直江津小学校の生徒たちとの出会いは、防災・減災の取り組みの一環として防災の特別授業を無印良品が実施したことから。その後の特別授業などの交流を重ねる中で、「どうして無印良品にはカレーの種類があんなにたくさんあるの?」という質問を受け、レトルトカレー15種の試食会を開催。そこから「直江津らしいカレーがあったらいいな」という声があがったという。

半年以上をかけ、総合的な学習の時間を「直江津カレーをつくる」活動にあて、直江津の食調べから使用する食材の選定、価格設定、パッケージデザインやコピー案づくりなどを無印良品、にしき食品とともに行ってきた。

樋熊氏自身も新潟出身とあって、「地域活性にチャレンジしていることは自分の会社ながら誇らしく思いましたし、無印良品がその地域に入ることでより活性化されることが実現できれば嬉しい」と喜びを語った。

無印良品のレトルトカレーの製造はにしき食品が手がけており、今回のシャークカレーの製造もにしき食品が担当している。

  • 無印良品のレトルトカレーや、人気の「レモンクリームチキンカレー」を製造するにしき食品

    無印良品のレトルトカレーや、人気の「レモンクリームチキンカレー」を製造するにしき食品

直江津小学校で生徒たちに価格の決め方についてレクチャーしたのは、にしき食品 常務取締役 営業本部本部長の菊池洋一氏。生徒たちは当初ワンコインの500円での販売を希望していたというが、試食を進める中で「じゃがいもや玉ねぎなど具材の量を増やしたい」との声が多かったという。価格や利益についても教えたうえで、生徒たちは話し合い価格を550円に決定。"ワンコイン"か"具材たっぷり"か……葛藤する生徒たちの様子を想像するとほほえましい。

さらに開発中にはこれまで取り扱ったことのなかった「サメ肉」への苦労も。サメ肉の身質は水分が多く、カレーソースとの馴染みがあまり良くなかったことから、しょうが汁に一晩漬けこむことでカレーソースの味なじみをよくしたという。

  • サメ肉をしょうが汁に一晩漬けこむことで臭みもなく味なじみがよくなる!

    サメ肉をしょうが汁に一晩漬けこむことで臭みもなく味なじみがよくなるそうだ

  • にしき食品の常務取締役 営業本部本部長の菊池洋一氏

    にしき食品 常務取締役 営業本部本部長の菊池洋一氏

商品開発を通じ変わっていった生徒たち

  • シャークカレーの開発に携わった直江津小学校の生徒たち

    シャークカレーの開発に携わった直江津小学校の生徒たち

お披露目会では直江津小学校の生徒と先生がオンラインで出演、商品開発への想いを語った。

青いカラーが印象的なパッケージは、生徒全員で話し合い「直江津の海と空、サメを象徴するヒレ」のイラストに決定。生徒たちはサメについても学習を重ねてきたため、特に「本物のサメは泳いでいるうちにヒレに切れ込みが入るから」と切れ込みを入れたのがこだわりだという。

  • 商品開発について語る生徒たち

    商品開発について語る生徒たち

生徒たちはこの日、直江津の無印良品の店舗で来店客に対して売り込みを行っている最中で、「東京の銀座でも今日からシャークカレーを販売しますよ。東京の人や外国から来た人にも買ってもらえるよ」と聞くと歓声があげた。

菊池氏は生徒たちとの商品開発について、「去年の6月から毎月1回、直江津に行って授業をしました。食材の選定からパッケージデザインや価格の決定などの方法をお伝えしたのですが、シャークカレーとシーフードカレーで意見が割れたこともありました。その際、シーフードカレーを希望していた子はわかりやすく落ち込むシーンもあったのですが、『商品企画ってこういうことなんだよ、実際の商品開発でもいろんなアイデアが出てきて採用されないものがほとんどなんだよ』と伝えて。それでもこれにしよう、と決めたらそのカレーをどうやって魅力的にしていくか切り替えないといけないということを話しました」と振り返った。

生徒たちの取り組みの様子も変わっていったそうで、「これが大人の仕事なんだよっていうのを感じてもらえたと思いました。この後実際に売れる現場を見るともっと感動すると思います。生徒たちにとって働くことや仕事をすることはまだまだ未知の部分が大きいと思いますが、この経験を通して、早く大人になりたいとか、勉強を頑張ろうとか、いろんな知識を身につけるきっかけになればうれしいですね」と語った。

  • 生徒たちへの想いを語る菊池氏

    生徒たちへの想いを語る菊池氏

隠し味は味噌!? 和風であっさり食べやすい

シャークカレーを食べてみると、想像していた以上に和風であっさりとした味わい。かつお出汁を使っており、隠し味には味噌が使われているという。サメ肉は白身魚のような食感で、ほろほろと口のなかで崩れる。当初生徒たちが試食した段階では具材はサメ肉のみだったが、「じゃがいもやにんじん、玉ねぎも入っているほうが良い」という生徒たちのアイディアで、具だくさんのカレーになったというが、食べ応えを考えると確かに正解かもしれない。

  • 生徒たちの想いがつまったシャークカレー

    生徒たちの想いがつまったシャークカレー

  • サメ肉は白身魚のような食感

    サメ肉は白身魚のような食感

  • カレーソースとの相性も良い!

    カレーソースとの相性も良い

直江津小学校の生徒たちのアイディアと想いが詰まったシャークカレー、ぜひ手に取ってみてほしい。