伊豆急行は、2月3日に国土交通省中部運輸局宛で鉄道旅客運賃の変更認可申請を行ったと発表した。実施予定日は2026年3月とされ、伊東~伊豆急下田間の各キロ程で普通旅客運賃を値上げする。車両更新を含む設備投資の計画についても発表された。
伊豆急行線は首都圏と伊豆東海岸を結ぶ鉄道路線として安全運行とサービス向上に努めてきたが、年間輸送人員は1991年度の1,000万人をピークに減少。2019年度は475万人、コロナ禍の影響を受けた2020年度は256万人と大幅に落ち込んだ。コロナ禍の収束、インバウンド需要の回復等で2023年度は385万人となったものの、コロナ禍前の水準には届かず、依然として厳しい状況が続いている。このような状況下でも設備投資を継続実施してきたほか、利便性向上を目的に交通系ICカードシステム(Suica)の導入、クレジットカード決済の対応によるキャッシュレス化を推進してきた。
2023年3月、コロナ禍による輸送人員減少やエネルギー価格の急騰に対応するため、上限認可まで引き上げる運賃改定を実施した。しかし、今後の人口減少や観光需要の多様化など勘案すると、インバウンドの増加を考慮しても輸送人員の大幅な回復を見込むことはきわめて困難であり、現在直面している車両・変電所設備等の大規模な更新投資を着実に実行するために、現行運賃のままではその所要額を十分に賄えないことから、安全・安心な鉄道サービスを将来にわたって持続的に提供していくため、旅客運賃改定の申請を行うに至ったと説明している。
初乗り運賃にあたる1~4kmの普通旅客運賃は現在、168円(1円単位)・170円(10円単位)だが、改定後は185円(1円単位)・190円(10円単位)とし、現行より17~20円値上げする。5km以降の普通旅客運賃も値上げに。伊豆急行線の全区間(伊東~伊豆急下田間45.7km)に相当する44~46kmの普通旅客運賃は、現行の1,687円(1円単位)・1,690円(10円単位)から、改定後は1,856円(1円単位)・1,860円(10円単位)とし、169~170円値上げする。通勤定期・通学定期は据え置くとのこと。
あわせて設備投資の計画も発表。おもな投資計画の内容として、法面補強工事(富戸~城ヶ崎海岸間ほか)、自動列車停止装置更新(ATS-P化)、変電所機器更新(伊豆高原変電所ほか)、電力管理システム更新、列車運行管理システム更新、車両更新、ICカードシステム更新を挙げた。このうち車両更新に関して、経年の進んだ既存車両を計画的に更新するとのこと。消費電力の少ないVVVFインバータ制御車両を選定することで、運行コスト低減とともに環境負荷の低減も図る。
その他、運行費用削減策として、組織再編と現業区の統廃合、短編成化によるワンマン運転、無人駅化による必要人員の見直しも実行してきた。VVVFインバータ制御車両の導入による運行コスト低減も含め、利便性に配慮しつつ、今後も経営の効率化に努めるとしている。