大人の本気って、やっぱりスゴい。

横浜・みなとみらいで1月24日から26日にかけて開催された「YOXO FESTIVAL 2025 -横浜でみらい体験-」。企業や学校、個人、イノベーター、クリエーターらが「未来」をテーマに展示やワークショップを行ったこのイベント、その一角に明らかに異彩を放つエリアが存在した。

  • 「YOXO FESTIVAL 2025 -横浜でみらい体験-」

それが「魔改造MONSTERS 勝手に大集合!2025」ブースである。なんとこのブース、NHKの人気番組「魔改造の夜」の参戦団体が“非公式”で“勝手に”集まっちゃったのだ……! 今回はそんなユニークかつハイテクなイベントの模様をレポートしたい。

「魔改造MONSTERS 勝手に大集合!2025」に潜入!

  • 「魔改造MONSTERS 勝手に大集合!2025」

NHKが不定期で放送し、コアな人気を誇っている「魔改造の夜」。超一流のエンジニアたち「魔の技術者」が1ヶ月半かけて、玩具や家電を怪物マシンに“魔改造”し、「魔改造倶楽部」という組織が主催する夜会で競い合うという、技術開発エンタメ番組だ。

設定もさることながらテーマも毎回かなりファニーで、例えば「電動マッサージ器 25mドラッグレース」、「キックスケーター25m綱渡り」、「洗濯物干し25mロープ走 4K完全版」、「トースター高跳び」などなど、想像の斜め上をいくものばかり。だからこそ、めちゃくちゃ面白いのだ。

ちなみに、参加企業・団体を「魔の技術者」と称しているだけあって、実際の企業名は一応「H野製作所」「Sニー」「Tレ」などと伏せられている。しかし、ユニフォームに企業名がモロに入っているなど、完全にバレバレ。まあ、そのへんは御愛嬌ということで。

そんな彼らがこのたび、非公式で「YOXO FESTIVAL 2025」に集合したのだが……

  • 非公式なのにすごい人気

会場の熱気がスゴい!! やっぱりコアなファンがたくさんいるんだと思われる盛況っぷりである。なお、2日間の開催で展示内容はガラリと入れ替わる。

  • ずらりと並ぶ摩訶不思議なマシンたち

会場に入ってまずお目見えするのは、「トラちゃんウサちゃん50mリレー」の回で走ったマシンたち。トラとウサギの人形を魔改造して行ったレースで、展示企業は「Kセラ」「T・DK」「Yマハ発動機」の三社である。

  • T・DKの「トランチャー」と「グラビット」

こちらは番組内でレースを制したT・DKの「トランチャー」と「グラビット」。トラがウサギに接触することで、“ランチャー”のようにバトンが飛び出し、それをウサギが“グラブ”(掴み取る)する仕組みを採用したモーター駆動タイプだ。

  • Yマハ発動機「トラちゃん」

  • Yマハ発動機「ウサちゃん」

こちらはYマハ発動機の「トラちゃん」と「ウサちゃん」。トラちゃんは尻尾でバトンを抱えながら後ろ向きに走り、ウサちゃんがそのバトンを耳でキャッチするという斬新な発想に基づいて作られている。

Yマハ発動機の魔の技術者によると、「普通の虎って、前に走るときは前の足と後ろの足が同時に動きますが、後ろに下がるときってずりずりと下がっていくじゃないですか。 なのでトラちゃんも、後ろに下がる虎の動きをできるだけリアルに再現できるようこだわりました」とのこと。いや、そこまでこだわるの!? 大人の本気ってスゴい……。

ちなみに、コースが壊れてしまうので抑制しているが、理論上は最大時速30kmものスピードが出るとのこと。しかも番組終了後も改良を続け、今はさらなる軽量化にも成功し、より速くなったという。

番組では予算の上限が5万円に設定されている。魔の技術者いわく、「金属部分に予算のほとんどを使っているので、バトンタッチの機構などは極力、予算をかけずに作りました。バトンを受け取るウサちゃんの中に入ってるのは、段ボールとそこらへんに落ちてたスポンジなんですよ(笑)」。段ボールとスポンジで作れちゃうんだ……ホント、スゴいな。

実際にリレーが見れる実演も

この日は屋外でトラちゃんとウサちゃんの実演リレーも行われた。一時はウサちゃんが動かず、「こんな事態は初めてです。やっぱり『魔改造の夜』には魔物が棲んでいる(笑)」と技術者が焦るシーンもあったが、その後、無事にリレーに成功! バタバタ走るトラちゃんとウサちゃんの動き、めっちゃ可愛かった〜!

  • トラちゃんとウサちゃんの実演リレー

こちらもYマハ発動機の怪物マシン。鳩時計を魔改造し、鳩を高さ8メートルのカゴに入れる「鳩時計鳩入れ」の回で戦い、見事に1位を手にした優勝機である。

  • Yマハ発動機「鳩時計鳩入れ」

1分30秒の制限時間内に100羽の鳩を発射でき、より多くの鳩を入れたチームが優勝という条件だったのだが、「私たちが1位になったと言っても、結局2羽しか入らず、2位のチームが1羽、3位が0羽だったんですけどね(笑)」と魔の技術者は笑う。

開発のポイントは、「うちは鳩をあえて重くしました。もともとの鳩が2.7グラムくらいしかなくて、そのまま撃つと失速してフォークボールみたいに落ちちゃうんですよ。形は変えられないルールだったので、質量で安定させて距離を伸ばそうという作戦でした。鳩を送り込むためのマガジン部分などにはYマハ発動機の電動自転車『PAS』のドライブ部分を豪華に2台分使っています」とのこと。

ちなみに、PASのドライブは「我々のゴミ箱に落ちてたのをそのまま使っただけ」ということで0円とカウントしているらしい。さすが超一流の技術者、言い訳も天才的である。

会場では「電動マッサージ器25mドラッグレース」のマシンも発見!「電動マッサージ器でレースをしようぜ! 」と考えるほうも考えるほうだが、実際に作ってしまえる魔の技術者たちも相当なものである。スゴすぎるんですけど!?

  • 「電動マッサージ器25mドラッグレース」

こちらはペンギンちゃん5体を魔改造し、1分間でいかに大縄を多く跳べるかを競った「ペンギンちゃん大縄跳び」の回の怪物マシン。番組内で唯一、マシンと人間の連携が求められた競技である。

  • 「ペンギンちゃん大縄跳び」

「Rコー」チームの作った怪物マシンはなんと、番組終了後に1分間で170回も飛ぶことに成功し、「1分間に最も多くロボットが縄跳びを跳んだ回数 」としてギネス記録にも乗っているのだという。真ん中のペンギンの頭部についているセンサーが大縄を感知した瞬間にマシン本体が飛び上がる仕組みを採用しているため、大縄を回す人間の技術も大きく問われる。

  • Rコー「PENTA-X」

魔の技術者は「ハイテクとアナログのハイブリッド。たくさん回していると“ゾーン”に入ってくるんですよ(笑)」と笑っていたが、ギネス記録は並々ならぬ努力の結晶なのである。

直接感じられる技術者の熱量と愛情

他にも多くの怪物マシンが会場に並んでいたが、どのブースにも共通していたのは、魔の技術者たちの熱量が半端ではないこと、そして怪物マシンがどれも輝いていたことの2点である。

限られた予算と時間のなかで、最大限の知恵とアイデアを振り絞ってベストのマシンを造り出す。そうして完成したマシンはどれもキラキラと輝いて見えたし、魔の技術者たちの語り口からは溢れんばかりの愛情が伝わってきた。

いや~、めちゃくちゃ楽しかった。この「魔改造MONSTERS 勝手に大集合!」というイベントは今回で2度目の開催だったそう。次回も非公式での大集合、楽しみにしています!