三井住友カードは1月15日、三井住友カードが保有するキャッシュレスデータをもとに、訪日外国人のクレジットカード消費動向を時系列、国別、決済地域別、業種別などに細分化して整理・分析したレポートを公開した。分析には、2024年11月末までの決済データを使用している。

2024年の訪日外国人クレカ決済額は2019年比50.4%増に

訪日外国人による決済額は、新型コロナウイルスの5類移行や、円安による追い風を背景として2023年に大きく回復し、同年1-11月は、コロナ禍前の2019年に近い水準となった。2024年も訪日外国人の決済額は成長基調で推移し、2024年1-11月の決済金額は2019年同期比で50.4%増の水準に達した。また、前年の2023年同期と比較しても55.3%増の水準となり、2024年のインバウンド消費の好調さが伺える。

  • 決済額年次推移/決済額月次推移

決済地域別

決済金額の規模は、関東や近畿が引き続き大きい一方で、2019年からの伸び率で見ると東北地方の伸びが顕著となっている。東北地方の中で金額規模の大きい宮城県の決済額が2019年と比較して伸びていることに加え、山形県や福島県など伸び率の高い県が複数あることが貢献している。前年からの比較では中部の成長率が高く、86.3%増となった。金額ボリュームの大きい関東、近畿を比較すると、2019年同期比では関東の伸び率が高い一方、2023年との比較では近畿の伸び率が高く、勢いを増している。近畿をはじめ、コロナ禍前の2019年に中国人観光客による消費割合が高かった地域においては、中国人観光客の消費が緩やかに戻ってきていることで、前年対比の伸び率が高い傾向がみられる。

  • 地域別の訪日外国人決済額

2024年1-11月の決済額が上位の都道府県を見ると、2019年同期比では千葉県や京都府の伸び率が高くなっている。千葉県、京都府ともに、決済業種別にみると宿泊や飲食関連といったコト消費が好調であることが共通している。また、前年同期比では愛知県が110.7%増と高く、中国や台湾をはじめとしたアジア圏の訪日客による百貨店の消費が成長を牽引した。

  • 決済額上位都道府県の金額推移

国別の決済額構成比

2019年には決済額全体の約60%を中国が占めていたが、2023年のコロナ禍以降には約20%の水準となり、ついでアメリカ、台湾、韓国、香港などが存在感を増している。シンガポールはコロナ禍前には構成比で1.6%だが、2024年には4.3%まで拡大した。シンガポールの訪日客数増加の要因としては、海外旅行先として日本の人気が高いこと、また、為替影響により日本への旅行がしやすくなったことなどが考えられる。

  • 訪日外国人決済額の国別構成比

決済額上位国の金額推移

決済額上位国の金額推移を月別にみると、中国はコロナ禍前から規模が落ちているものの、2023年以降緩やかに回復している。アメリカは2019年と比較して2023年に金額規模が大きく成長し、2024年も引き続きプラス成長となった。特に紅葉シーズンの10月、11月には訪日客数が増加し、決済額は中国を抜き1位となった。

  • 国別の決済額月次推移

決済業種別

2019年1-11月と比較し、決済業種別ではホテル・旅館、飲食店・レストラン、テーマパークといったコト消費が好調となった。空港店舗も同期比で97.4%増と大きく成長した。また、前年同期比では免税店の成長率が137.6%増と高くなっている。好調なインバウンド消費を背景として、日本国内の免税店の数自体も2023年から2024年にかけて増加しており、決済額が増加したと見られる。

  • 業種別の金額推移

展望と示唆

訪日客数の増加に伴い、クレジットカードの決済データから見た訪日外国人の決済額も順調に伸長しており、2025年のインバウンド消費も引き続き好調に推移していくと見込まれる。国別の決済額構成比では、コロナ禍前の2019年と比較すると中国人観光客以外の割合が高まり、決済額も増加していることから、より一層多様な国の訪日外国人に対応するためのサービスや商品の需要が高まると見られる。一方、百貨店や免税店などの「モノ消費」が多い中国人観光客の回復が見られるため、再び訪日外国人決済額の国別・業種別の構成比に変化を及ぼすことも考えられる。