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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

CINEMAS+ではライター・木俣冬による連載「続・朝ドライフ」で毎回感想を記しているが、本記事では『おむすび』第8週~の記事を集約。
1記事で感想を読むことができる。

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もくじ

第36回のレビュー

第8週「さよなら糸島 ただいま神戸」(演出:盆子原誠)では、おじいちゃん(松平健)をなんとか説得し、結(橋本環奈)たちは神戸に向かいました。

少し長めのアヴァンは見送りシーン。
駅に、陽太(菅生新樹)おばあちゃん(宮崎美子)が見送ります。そこに永吉はいません。
結は陽太に、家族のように思っていた、お兄ちゃんみたいな弟みたいな、と言い、完全に陽太を振っています。報われない陽太。

神戸の震災で傷ついた心を抱えて糸島に来たとき、陽太が助けてくれたことを結は感謝します。彼女にとってとても大事なことだと思います。が、いかんせん、幼いときに陽太が結を守っていたエピソードが回想で描かれただけだったため、いまひとつぐっと来ない。
これをしっかり、本編として描いていたら、ここはかなりぐっと来たと思います。実感の大事さを考えさせられる場面でした。

私達は過去のことを実体験していないので過去として描かれたものにはどうも実感が沸かないようです。だからこそ、過去をいまと地続きと思わせるための方法を模索している。「おむすび」の場合、過去を過去として描いていて、極めてリアリストだなと感じます。実際、過去を実体験として認識することなんてできない、どうしたって漠然としてしまう。そういう現実を痛感させられます。

過去と分断されてしまう人間の本質を冷めた眼で見ている「おむすび」。
あんまり夢を持たせず、意外とドライだと思うのは、永吉の描写です。駅に見送りに来ないので、朝ドラあるある、主人公がバスや電車に乗っている途中で、ひとり見送る感動場面がくるかと期待したらーー
なくて、結たちが電車に乗って旅立つとき、永吉はひとり畑作業をしています。
松平健さんの存在感と糸島ロケのせいか、しんみりいいシーンでした。うんと引いた画とオルゴールの劇伴も良かった。

タイトルバック明けは、いよいよ神戸。
震災から12年、みごとに復興した商店街にはアーケードができていました。
本来、自分が率先して携わるはずだったアーケードを見て、聖人(北村有起哉)は早く、この街の役にたちたいと心を逸らせます。

商店街の住人たちは、あの頃と変わらず、みんな元気でにぎやかで、明るく結たちを迎えます。美佐江(キムラ緑子)は惣菜屋さんからパン屋に職種替えしていました。

みんな、結の変貌にはびっくり。なにしろギャルですから。
結は、12年前の地震のことを少し思い出し、心を揺らしますが、みんなの明るい歓迎に、忘れることができたようです。いや、はたしてほんとうに大丈夫なのか、どこかでひょいと傷が顔を出したりするのでしょうか。気になります。単に、思わせぶりな描写でないことを願います。

では、ここで、高橋テーラーの店主・高橋要蔵役の内場勝則さんのコメントをご紹介します。



Q1 出演が決まったときの気持ちは?

前回出演した『わろてんか』から7年。時間の流れは早いですね。また呼んでいただけるのはありがたいです。
震災を真っ向から描いている作品です。僕自身も大阪で阪神・淡路大震災を体験しました。風化させないためにもこうした作品は続けないといけないですし、作品と向き合うことで 30 年経て初めてわかることもあるのではと感じています。
今回、ぼくは神戸編での出演ですが、じつは糸島に縁があって。父の実家が福岡の博多で、父方の墓が糸島にありました。まだ僕の戸籍は糸島にあるんですよ。幼い頃、島に墓参りして海で泳いだ記憶があります。今回朝ドラで糸島が舞台と聞き、不思議な縁を感じましたね。

Q2 演じる役・高橋要蔵について

おそらく店を継ぐ気はなかったのに、仕方なく二代目を継いだのでしょうね。そのうち仕事が面白くなって今も続けているんでしょう。商店街でもリーダーシップをとるわけでも、重要なことをなにかするわけでもない(笑)。
ほぼヘアサロンヨネダに入り浸っていて、ただワイワイガヤガヤしています。そういえば僕の店は、一切登場しないんですよ(笑)。ほとんど理髪店に入り浸っている。いつ仕事しているんでしょうね(笑)

Q3 神戸編撮影時のエピソードについて

商店街のメンバーとは、この仕事で初めて会った方々なのですが、初めて会った気がしなくて、ずっと前から仲良しな感じがします。撮影にもすっと入ることができました。理髪店のセットがまた素晴らしくて。平成時代の漫画
があったり、コンサートのポスターが貼ってあったり、待ち時間の合間に、「こんなコンサートあったね」と皆でワイワイ思い出話に花を咲かせています。
米田家が神戸に戻ってきたシーンは、僕らの撮影も震災のシーン以来で久々だったので、本当の再会のようでした。商店街はひとつの家族みたいなもので、一人でも欠けたらアカンという感じがあるんでしょうね。みんなで集
まる理髪店は茶の間みたいな感じで、結ちゃんや歩ちゃんは“みんなの子ども”という感覚もあるんだと思います。これでピースが揃ったというか、「やっと帰って来たか」という思いなのでしょう。

Q4 視聴者へのメッセージと見どころ
物語では、今後もいろいろ問題が起きますが、人と人との繋がりがあれば乗り越えられる、ひとりじゃないよというメッセージが伝わってほしいですね。


※この記事は「おむすび」の各話を1つにまとめたものです。

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--{第37回のレビュー}--

第37回のレビュー

結(橋本環奈)が神戸に引っ越してきた頃、四ツ木(佐野勇斗)も大阪に移っていました。社会人野球をやりながらプロ野球を目指します。

結の幼馴染のなっちゃんこと佐久間菜摘(田畑志真)は四ツ木の写真を見て、ギャル男かと思ってたら全然違うと驚きます。でもその頃、四ツ木は、高校時代の短髪とはうってかわって髪がやや伸び茶色になっていました。
コンタクトにして「メガネもヨン様も卒業」と宣言します。
社会人になったからイメチェンしたのか、結に合わせてちょっと雰囲気を変えてみたのか。高校野球時代は規則が厳しく真面目ふうにしていただけなのか。
いろいろ想像が膨らみます。

神戸編で突如出てきた昔仲良かったなっちゃんは、大学にいったら何を学ぶとかではなくサークルに入って彼を作りたいと軽い感じ。現代朝ドラならではの軽いノリに時代の変化を感じます。昔のことは実体験してないので知らないですがドラマでは昔の人はみな真面目で、彼を作るために進学するキャラは出てきたことはほぼありません。主に見合い結婚という親や親戚、近隣のつながりで結婚相手が決まっていたから社会に出て彼を作るという概念がなかったのでしょう。

真面目な四ツ木は結のことをいまだに「米田結」とフルネーム呼びしていて、
結はそれが気になっています。彼女はすでに「翔也」と呼んでいます。

自分の気持ちに素直になってからの結はすっかり、言動がサバサバしてしまいました。演技なのか、橋本環奈さんの地に近いのか、よくわかりませんが。
昔の結はただ猫をかぶっていたというふうに見えてしまうのがとても残念な感じがします。ただ、朝ドラ的な元気さ、明るさとは違う角度の元気さと明るさをもたらしたという点においては評価できます。

それに、学校のお金を出してもらっていることを気にしてバイトしようと考えるところはちゃんとしています。見た目や態度で人を判断してはいけませんね。

四ツ木との仲を聖人(北村有起哉)は認めてないのですが、愛子(麻生久美子)はふつうに結の恋を応援していて、デートスポットを教えてくれます。
典型的な、恋する娘に対する父母であります。
デートの日、翔也はスーツを着てきて、デートの前に結の家に挨拶に行きます。ここは真面目。
「結さんと結婚を前提におつきあいさせていただいております」
とかなり勇み足。そして、またいちご持参。

聖人はその場で許さん!とかぶち壊すことはせず、結たちがデートに行った後、唇をパクパク鯉のように音をさせる落ち込み仕草をしていました。聖人はなにかとメンタル弱い。北村有起哉は朝、眠い顔の演技もうまい。

愛子が教えてくれたデートスポットは神戸の街が見渡せる場所。そこで街が復興して生き生き活動している姿を見て、この街への思いを実感します。四ツ木もこの街が好きになったようです。ちなみに待ち合わせ場所は、NHK大阪の入ってるビルのロビーがロケ地になっていました。

四ツ木は栃木、福岡、大阪、神戸とわりと定住しない人。
定住しない人はもうひとりいて、歩(仲里依紗)です。
佐々木(一ノ瀬ワタル)と国内外、旅して回っているようで、最近は言動がおじいちゃん(松平健)化してきました。

と、ここで思ったのは、トリノオリンピックに行ったとか言って、外国に行くお金がよくあるなあということです。この謎を解くヒントはここにあるのではーー。先日、脚本を書いている根本ノンジさんのもう一作「無能の鷹」(テレビ朝日)で主人公が東武ワールドスクウエアの世界の建造物の前でリモート会議をしていて、相手が海外を飛び回っていると勘違いするエピソードがありました。歩もこのパターンなのでは……。

そして結がいよいよ栄養士の学校に通いはじめますが、初日から一波乱。この件は明日まとめてレビューしたいと思います。


※この記事は「おむすび」の各話を1つにまとめたものです。

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--{第38回のレビュー}--

第38回のレビュー

「あんた なめとん?」
神戸栄養専門学校入学の日、結(橋本環奈)は気合を入れたギャルの格好にキツいダメ出しをされてしまいます。

ズバッと断じたのは、矢吹沙智(山本舞香)
あらかじめインフォメーションされている設定では、「高校時代は有名な陸上選手。当時はまだ珍しい、スポーツ専門の栄養士を目指している」とあります。

結をやんわりかばったのは、湯上佳純(平祐奈)。でも、結の髪色が彼女のペットのトイプードルに似ていると言い、やんわりしているけれど実は嫌味? 京都の人? 違います神戸の病院のお嬢様設定です。

派手なギャルの格好をクラス中から白い眼で見られても、結は好きを貫こうとします。
が、初日から、すぐに授業がはじまり、実習もあり、スズリン(岡本夏美)がくれたネイルをはずせと言われてしまいます。さらにメイクも調理実習に衛生的によろしくないと、とることになって……。結の存在完全否定という感じです。

実習があると知っていればメイクも抑えめにしたのかもしれませんが、言われるまで
とろうとしもしなかった結の認識の浅さがドラマとはいえ気にかかります。学校では完璧に地味にしていたリサポン(田村芽実)を見倣ってほしい。

ただ、学校も事前に、規定事項を文書で通知しておくものなのではという気もします。

ドラマですからあらゆる面で誇張、割愛しているということでスルーが吉とはいえ、自己紹介のとき、志望動機を「彼のため」と言うのも、いかがなものか。案の定「あさイチ」で博多大吉さんが疑問を発していました。
まあまあ、若いときには誰しもこんなこともあるよねえということかもしれません。

「なめとんの」と喧嘩ごしだった沙智とは実習の際、同じ班になってしまいましたが、彼女は何かと結に対して舌打ちしていて、感じ悪い。先が思いやられる感じです。

今日はこの感じ悪い(でも結への反感はごもっとも)沙智を演じる山本舞香さんのコメントを掲載します。お芝居では対立していますが、橋本環奈さんとは過去にも共演していて仲良しのようです。ツンツンしていることにも複雑な感情があるみたいです。

写真提供:NHK



Q1 出演が決まったときの気持ちは

お話をいただいたときは、え!?って(笑)。嬉しいなとは思ったんですけど、朝ドラに呼んでいただけると思っていなかったので、なんでだろう?と疑問でした。現場に入ってしばらくたってから「沙智はもともと山本舞香で書いている」と脚本家さんがおっしゃっていたと聞いて、「もっと早く言って!」て感じでした(笑)。でも、そう言っ
ていただけてすごく嬉しかったです。ヒロインの橋本環奈とは映画「カラダ探し」で共演して以来の仲だから、環奈と一緒にお仕事できることもすごく嬉しかったです。初めての朝ドラだったので、環奈がいてくれて心強いなと思いました。

Q2 演じる役・矢吹沙智について

栄養学校メンバーのみんなは本当に栄養士になりたくて入学していますが、中でも沙智は難関と言われる「スポーツ栄養士」を目指してる子。自分の経験を踏まえた上でスポーツ栄養士を志しているから中途半端にやりたくないし、結を冷たく突き放したりもするんです。結と仲良くなりたいのか、壁を作ってるのかわからないようなところが難しい役だなと思いました。まだ 10 代の女の子だし、子供ながらに大人びようとして、栄養士になりたくて必死にもがいてるっていう感じですね。
ギャルの格好して登校する結も結だけど、突っかかっていく沙智も沙智。わざわざ「なめてるの?」って言うところとか、無視すればいいし、話しかけられたら冷たく返せばいいのに、ずっと結を気にかけていて。心のどこかで結と仲良くなりたいと思っているのかなとも取れますよね。もうちょっと口数少なくてもいいなって思っていましたが、良く言えば、沙智は自分の気持ちをちゃんと言葉にして伝える人なので、悪く言えば、おせっかいのうるさい人になってしまうから、そのさじ加減が難しかったです。
演じる上では、怒るレベルを結構考えました。ここで怒りすぎたら後がきかないなとか。だから、台本と向き合う時間がすごく長かったですね。

Q3 神戸ことばでのお芝居について

神戸ことばがすごく難しかったです。中途半端にはやりたくないので、ずっと音源を聞いていました。でも、口に出してみるとまた全然違うんです。ことば指導の先生につきっきりで居ていただいて、頭の中が神戸ことばでいっぱいでした。(森川役の)小手さんだけ標準語でずるいな!って(笑)。視聴者の方に「全然方言できてないじゃん」って言われるのも悔しいし、かといって、完璧に方言ができいてるわけじゃないのもわかっているから芝居で魅せたいし…っていう葛藤がすごくありました。やりきれてるのかなあという不安と闘いながらの撮影でした。私は集中していると周りから不機嫌だと思われちゃうけど、「大丈夫よ!みんななんとかやりきってるから!」ってメイクさんが声をかけてくださったり、いいスタッフの方たちばっかりですごく助けられました。環奈が座長としていい雰囲気を作ってくれていたのも助かったし、「やっぱりすごいな!」と思いましたね。方言には苦戦しましたが、今回神戸ことばの役ができて、すごくいい経験ができたと思っていますし、これを今後生かせたらいいな、自分の中でひとつ強みができたなと思っています。

Q4 視聴者へのメッセージと見どころ

結の大きな成長が見られるのがこの栄養専門学校編。人に対して、自分に対して恋人に対して、結の中で当たり前だった考え方がどんどん変わっていく、その力添えを沙智たちがやっているような、大人になっていく結の手助けを沙智たちがしている感じが見どころです。後半になるにつれて、結、沙智、カスミン、モリモリの絆が深まっていきますし、ひとつのことをみんなでやるっていうのはどの仕事でも大事なことだから、全く違う性格の子たちとどうやってうまくやっていくかっていうのを、視聴者の方々にも見ていただけたらいいですね。神戸ことばは…頑張ったのですが、あんまり期待してほしくないかな。まあ、ここは許してやろうかなぐらいの優しい気持ちで私の方言を見てください(笑)。

※この記事は「おむすび」の各話を1つにまとめたものです。

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--{第39回のレビュー}--

第39回のレビュー

神戸での新生活のはじまり。
ヘアサロンヨネダはたちまち、旧知の人たちのたまり場になります。
朝ドラでは飲食店がたまり場になることが多いのですが、今回は珍しくヘアサロンです。
「そのために待合席、広くしてみました」(愛子)
って、しょっちゅう髪切ってもらったり顔剃ってもらったりするわけでもないのに休憩所になっていたら、ほかのお客さんが来づらい気がしますが、この商店街はもう常連しかいない世界と考えていいのでしょうか。

客ではないただ居座っている人の眼を配慮したのか、新たに開店するにあたり、カーテンで個室に仕切れるようにし、顔そりやスキンケアができるようになっています。

その説明を愛子がし、美佐江(キムラ緑子)がやけにはしゃぎます。これは台本にあるのか、台本には何もないから仕方なく緑子さんが埋めているのか、「ホンマや個室になるやん」とか「うち顔剃られるの見られとうなかったんよ〜」などと、なんとも空虚な感じです。
美佐江という人物は序盤の登場からつねに騒いでますが、明るさや元気が浮いていて、すごく気になります。もしかして、筆者の知識がないだけで、このへん、吉本新喜劇のような、独特の西の笑いをやろうとしているのかもしれません。でもなんか違和感が……。このドラマ、あとで、実はーーというのがしょっちゅうあるので、美佐江さんの空元気にも何かあるかもしれません。

ヘアサロンの場面の終わりは、「そういえば結ちゃんは…」「今日は…」というセリフがあり、そこから結(橋本環奈)の栄養士の学校の場面に転換します。
セリフで場面転換を促すってすごい力技だと感じますが、そうしないとわからない視聴者も世の中にはいるという、視聴者層を思いきり広げていることが、逆に目の肥えた視聴者を逃しているような気もしないでありません。このバランスが難しいところでしょう。

専門学校ではさっそく授業が本格化、その内容は想像していた以上に難しく、結は戸惑います。しかも、同じ班になった沙智(山本舞香)佳純(平祐奈)がそれぞれキツイ性格でギスギスしています。沙智はストレートにキツく、佳純は言い方は柔らかいがいちいち棘があります。彼のために栄養士になるなどと自己紹介した結も攻撃対象にされていますが、結の良いところは誰のことも馬鹿にしないことです。
沙智も佳純もなぜか、他者の考えていることを軽視しています。

沙智は早々に班を変えてほしいと先生に申し出て、そのせいで逆に班で協力して調理の献立を作る課題を出されてしまいます。
どうなる、献立作成。

班には沙智、佳純、結のほかにもう一名、森川学(小手伸也)がいます。「不動産会社の元営業で、入院をきっかけに栄養士を志す」という設定で、年齢は45歳。見た目は先生のようですが生徒です。温厚そうに見え、班のムードメーカーになりそうな森川を演じる小手伸也さんのコメントを見てみましょう。


Q1 出演が決まったときの気持ちは?

初めての朝ドラが 100 作目の「なつぞら」で、今回の「おむすび」は 111 作目。なんだかキリのいい数字にまた呼んでもらえましてとても光栄と申しますか(笑)、純粋に嬉しかったです。キャスト発表で橋本環奈さんと小手伸也が同級生とニュースが出た時は、ネットがざわつきまして(笑)。僕も最初はマジか!と思って一瞬学生服の自分を想像したんですけど、よくよく聞いてみると専門学校だから年齢が上の人もいるんですよね。橋本環奈さん、山本舞香さん、平祐奈さんの中に小手伸也がいるっていう状況は、一見オチのようなポジションに思われるかもしれませんが、社会人を経験して学び直すために専門学校に入る方は実際に大勢いらっしゃいます。そういう方々のリアリティをしっかりと表現したいと思って臨みました。

Q2 演じる役・森川学について

森川はグイグイ系ではなく、割と一歩引いたキャラクター。今まで演じてきた役柄上あまり信じてもらえないんですが、素の僕自身もわりと森川に近いメンタリティなので(笑)、役を作り込まずともこの現場にいると自然と森川になる感じです。橋本さん、山本さん、平さんの 3 人はもともと知り合いだったり共演経験があったりするそうですごく仲が良く、僕が混ざるとどうしてもおじさんがいるなっていう感じにはなるんですが(笑)、そのリアリティを活かしつつ、共演者としても信頼してもらえるよう心がけたつもりです。
今回、脚本家の根本さんからコメディリリーフ的な期待をいただいているような部分も感じてはいたんですが、そこよりもバイプレイヤーとして主演・橋本さんをどれだけお芝居で手助けができるか、橋本さんにフォーカスがちゃんと当たるお芝居をしないと!という使命感の方が強かったです。やはり主人公の成長や人生を描くのが連続テレビ小説の醍醐(だいご)味。どういうアクセントで、どういうスパイスでいれたらいいのかなと常に考えていました。そんな俳優・小手伸也としての思いが、「人のために」「仲間のために」と栄養士の学校で学ぶ森川の気持ちと、ちょうどリンクしていた気がします。

Q3 J 班と J 班メンバーについて

J 班は湯上さん(平さん)と矢吹さん(山本さん)がいがみ合ってる中で米田さん(橋本さん)が「まあまあ」と言っているのを、森川がさらに外側から全体的に「まあまあ」と言っている構図。そのユニット感がうまく出ているといいですね。
森川にとって非常に居心地がいい空間で、娘と言って違和感がないほどの年齢差のある女の子たちと親子のようでいて、仲間であり、同級生。意外と最初からそんな空気でいられたのは、やっぱり皆様のおかげで、何より座長として僕らを気遣ってくれた橋本環奈さんのおかげです。J 班で仲良くなるために 1 回食事会でもした方がいいのかなという気持ちでクランクインしたんですけど、すぐに「あ、これ必要ないや」って(笑)。現場でのそういう距離感や関係性に助けられて、すごく自然に撮影を楽しむことができました。
あと、これは自覚がなかったので難しかったんですが、3 人(橋本さん、山本さん、平さん)が森川をかわいいかわいいと言ってくれるので、ここで喜んではいけない!変に狙ってあざとくなってはいけない!と訳もわからず常に気をつけていました(笑)。

Q4 視聴者へのメッセージと見どころ

僕自身の勉強不足もあるかもしれませんが、管理栄養士という職業を描くドラマは結構珍しいですよね。専門学校での勉強ぶりとか、そこでの経験が結ちゃんの社会人としての、管理栄養士としての生き方を決めていくので、阪神・淡路大震災という物語の大きな起点に次ぐ、第 2 の起点のような気もしています。専門学校にリアリティがないと全体的なリアリティにも影響してしまう部分があるなと感じますし、シーン数はすごく限られているかもしれないですけれども、栄養学校での日常を表現する上ですごく重責を担ってると思うので、ぜひ注目してほしいですね。


小手伸也さんはいつもドラマである種の飛び道具的な存在として活躍しますが、このコメントを読むと、やりすぎないように、役割のリアリティを考えて、慎重に取り組んでいらっしゃるようです。

「おむすび」は阪神・淡路大震災から30年、復興してきた神戸を思うドラマでもあり、単なるひとりの女の子が栄養士を目指すコメディではないので、演じる側もさじ加減に気を使っているのでしょう。

時々はさまれる渡辺(緒形直人)のシーンだけ、ものすごく重たいのが、このドラマの難易度を物語っています。

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--{第40回のレビュー}--

第40回のレビュー

栄養学校入学早々、結(橋本環奈)の班がギスギスしています。沙智(山本舞香)が班替えを先生に要請した結果、難しい献立作成の課題が出され、各班で発表することになります。結たちの班はJ班のようです。

はじめての共同作業。結、沙智、佳純(平祐奈)、森山(小手伸也)が相談しますが、案の定、沙智と佳純の意見が合いません。どちらかの献立案を選んだら、ますます険悪になると思って結は困ってしまいます。

そんなとき、糸島のカラオケにいるハギャレンから電話がかかってきます。東京の大学に行ってるリサポン(田村芽実)が帰ってきたのでみんなで集まっているのです。久しぶりにハギャレンの声を聞き、友情の尊さをしみじみ実感する結。

それをきっかけにしたのか、結は、沙智と佳純の献立案の折衷案を提案します。ただ、洋風と和風でアンバランスな感じ。どうしたものかと思ったとき、居酒屋でバイトしている森山が洋風のスープの出汁を和風に替えたらと提案します。
結果的に、みんなのアイデアが合わさることになりました。それをとりまとめたのは結です。さすが名前が「結ぶ」だけあります。

ところが、食材を買いにいったら、小松菜が売り切れ。小松菜だけ売り場が空っぽになっていて、ご都合主義的な気もしますが、買い物にいって、欲しいものだけたまたまなくてギリギリする経験はよくあります。

原価を超えない代わりの食材はーー結がスイスチャードを思いつきました。
糸島の農家にいただけはあり、野菜には詳しいのです。
筆者はスイスチャードを知りませんでした。今後はスーパーで気にしてみたいと思います。

買い物に手間取って遅れをとったものの、J班も無事に料理が完成。スイスチャードは小松菜よりも黄色や赤と彩りが鮮やかで、逆に料理の見た目がよくなった気がします。原価300円以内で、こんなにボリュームある料理ができるんですね。

石渡先生(水間ロン)にも褒めてもらえました。石渡先生、穏やかですが、目が笑ってない、ちょっと謎めいた人です。彼の目のどアップを多用するのはなぜ。

森山が想像したとおり、この課題は、みんなの協調性を見るものでした。社会人になったら気が合わない人ともコミュニケーションをとらないとならないので、
誰とでもうまくやれるようになることも、学校での学びのひとつのようです。

といっても沙智は簡単には結たちに心を許しません。結がみんなでプリクラをとりに行こうとしても沙智は参加しませんでした。
とりあえず、佳純と森山と3人でプリクラ(マブと書いて)。結だけにみんなを結びます。
最初は戸惑っていた森山がだんだん調子に乗っていき、最後はノリノリでした。

まあそのうち、沙智も結の謎パワーで結ばれてしまうでしょう。気楽に見ていきたいと思います。

それより心配なのは、歩(仲里依紗)です。あちこち旅していましたが、ついに神戸に戻ってきました。「ただいま神戸」と商店街に降り立った歩は糸島に来たときとは違い、派手な格好に戻っていました。
もともと、神戸に、真紀ちゃんのお墓参りに家族で行きたいと思っていた歩です。先に、家族が神戸に戻ってきてしまい、肝心の歩はなかなか帰ってこなかったわけですが、これまでの米田家の傾向から察するに、歩は神戸に戻って過去と向き合うのがこわくてこわくてたまらず、ずるずると引き伸ばしていたのではないでしょうか。
来週はいよいよ歩が過去と向き合うことになりそうです。



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--{作品情報}--

作品情報

放送予定
2024年9月30日(月)より放送開始

出演
米田結(よねだ・ゆい)/ 橋本環奈
『おむすび』の主人公。平成元年生まれ。 自然豊かな福岡県・糸島で、農業を営む家族と暮らしている。 あることがきっかけで、人々の健康を支える栄養士を志すようになる。 

【結の家族・米田家の人々】

米田歩(よねだ・あゆみ)/ 仲里依紗
主人公・結の8つ年上の姉。
福岡で“伝説のギャル”として知られる。 奔放な振る舞いで米田家に波乱を巻き起こすが、ギャルになった裏にはある秘密が…。 
主人公・結の父。 娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。 

米田聖人(よねだ・まさと)/ 北村有起哉
主人公・結の父。
娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。 

米田愛子(よねだ・あいこ)/ 麻生久美子
主人公・結の母。
結の祖母・佳代と家事をしながら、聖人の営む農業を支えている。 絵を描くのが得意。

米田永吉(よねだ・えいきち)/ 松平健
主人公・結の祖父。
野球のホークスファンで、自由奔放な“のぼせもん”。 困っている人がいたら放っておけない、情に厚い性格。 

米田佳代(よねだ・かよ)/ 宮崎美子
主人公・結の祖母。
古くから伝わる先人たちの知恵に明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもある。 

【福岡・糸島の人々】

四ツ木翔也(よつぎ・しょうや)/ 佐野勇斗
福岡西高校に野球留学中の高校球児。
四ツ木という姓と眼鏡姿から「福西のヨン様」と呼ばれている。 糸島に練習場があり、結と時々出くわす。栃木県出身。 

古賀陽太(こが・ようた)/ 菅生新樹
結の幼なじみで高校のクラスメイト。野球部員。
父は糸島の漁師だが家業を継ぐ気はなく、IT業界を目指している。 ある約束により、結のことを何かと気にかけている。 

風見亮介(かざみ・りょうすけ)/ 松本怜生
書道部の先輩。
結にとって憧れの存在。 書道のイメージを一新するような書家を志している。 

宮崎恵美(みやざき・えみ)/ 中村守里
結のクラスメイトであり、高校での最初の友達。
結を熱心に書道部へと誘う。 派手なギャルが苦手。 

真島瑠梨(ましま・るり)<ルーリー>/ みりちゃむ
結の姉・歩が結成した「博多ギャル連合」(略してハギャレン)の、現在の総代表。
ハギャレンの復興を目指している。

佐藤珠子(さとう・たまこ)<タマッチ>/ 谷藤海咲
ハギャレンのメンバー。
子どものころからダンス好きで、ハギャレンではパラパラの振付を担当。 筋が通らないことを良しとしない、一本気タイプ。

田中鈴音(たなか・すずね)<スズリン>/ 岡本夏美
ハギャレンのメンバー。
結と同い年で、いつもスナック菓子を食べている。 手先が器用で、ネイルチップ作りが趣味。

柚木理沙(ゆずき・りさ)<リサポン>/ 田村芽実
結のクラスメイト。
学校では校則を守るおとなしい女子高生だが、実は隠れギャル&ハギャレンメンバーでもある。ギャルの歴史を本にすることが夢。

ひみこ / 池畑慎之介
糸島の「スナックひみこ」の店主。
年齢、性別、経歴、すべてが不詳の謎の人物。 糸島の住人一人一人の事情をなぜか把握している。 

草野誠也(くさの・せいや)/ 原口あきまさ
糸島の商店街で陶器店を営んでいる。
ホークスの大ファン。 

古賀武志(こが・たけし)/ ゴリけん
結の幼なじみ・陽太(ようた)の父親。
糸島で漁師をしている。 

大村伸介(おおむら・しんすけ)/ 斉藤優(パラシュート部隊)
糸島の商店街で薬店を営んでいる。
ホークスの大ファン。 

井出康平(いで・こうへい)/ 須田邦裕
結の父・聖人(まさと)の幼なじみ。
糸島の農業を何とかしたいと日々奮闘している。 

佐々木佑馬(ささき・ゆうま)/ 一ノ瀬ワタル
結の姉・歩と行動を共にする“自称・米田歩のマネージャー”。

大河内明日香(おおこうち・あすか)/ 寺本莉緒
結の姉・歩と対立していた、元天神乙女会のギャル。

飯塚恭介(いいづか・きょうすけ)/ BUTCH
福岡県博多のカフェバー「HeavenGod」の店長。


根本ノンジ

音楽
堤博明

主題歌
B’z「イルミネーション」

ロゴデザイン
大島慶一郎

語り
リリー・フランキー

制作統括

宇佐川隆史、真鍋 斎

プロデューサー
管原 浩

公式サイト