経済産業省によると、リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」を意味します。キャリアアップや転職を考える際、スキルを強化するためのリスキリングは重要な選択肢となります。しかし、数多くの資格が存在するため、どの資格を取得すべきか迷うことも多いでしょう。

今回は、マイナビニュースの男性会員に「リスキリングとして取得を検討している資格」をテーマとしたアンケートを実施。男性が取得したいと考えている資格の人気ランキングと、各資格の詳細情報を紹介します。

  • リスキリングの人気資格ランキングを紹介します

    リスキリングの人気資格ランキングを紹介します

リスキリングの人気資格ランキング【男性編】

男性のマイナビニュース会員に「リスキリングとして取得を検討している資格」(※複数回答可)をテーマにアンケートを実施したところ、結果は以下のようになりました。

1位:TOEIC(22.8%)
2位:中小企業診断士(12.3%)
3位:MOS(Microsoft Office Specialist)(11.7%)
3位:社会保険労務士(11.7%)
5位:FP技能検定(10.5%)
5位:宅地建物取引士(10.5%)
7位:基本情報技術者試験(9.4%)
8位:メンタルヘルス・マネジメント検定(8.8%)
9位:ビジネス実務法務検定(8.2%)
9位:行政書士(8.2%)
11位:ITパスポート試験(7.6%)
11位:プロジェクトマネージャー試験(7.6%)
13位:キャリアコンサルタント(7.0%)
14位:税理士(6.4%)
14位:司法書士(6.4%)
16位:データ分析実務スキル検定(CBAS)(5.8%)
17位:AWS認定(5.3%)
17位:Python 3 エンジニア認定基礎試験(5.3%)
17位:MBA(5.3%)
20位:VBAエキスパート(4.7%)
20位:マーケティング検定(4.7%)
20位:ビジネス統計スペシャリスト(4.7%)
20位:統計検定(4.7%)
24位:賃貸不動産経営管理士(4.1%)
25位:Python 3 エンジニア認定データ分析試験(3.5%)
25位:E資格(3.5%)
27位:ディープラーニングG検定(2.9%)

リスキリングの人気資格ランキング一覧

ここからは、トップ10にランクインした人気資格の概要や取得に適した職種、選んだ人のコメントなどを紹介します。

TOEIC

TOEICはビジネス英語能力を測定するテストで、企業の採用や昇進時に重視されます。特にグローバル企業でのキャリアアップを目指す方におすすめです。高スコアを持っていると、国際的なプロジェクトへの参加や海外赴任のチャンスが広がるため、多くのビジネスパーソンが受験しています。

・「業務で英文を翻訳したり、外国人とテレビ会議をする機会があったりするため」(45歳/メカトロ関連技術職(電気・電子・半導体・機械他))
・「これから絶対に必要不可欠だから」(48歳/販売・サービス関連(小売・フード・旅行・ホテル・エステ他))
・「英語力の向上に最も向いている資格だと思ったから」(52歳/その他技術職(医薬・食品・化学・素材他))
・「英語力も必要な時代かなと感じているからです」(46歳/建築・土木関連技術職(設計・施工・設備・研究開発他) )

中小企業診断士

中小企業診断士は、経営コンサルティングの専門資格です。経営戦略やマーケティング、財務など幅広い知識が求められるため、コンサルタントや経営管理職を目指す方に適しています。教育訓練給付金の対象となる資格であり、自己負担を軽減しつつ資格取得が可能です。

・「将来性があると感じたから」(47歳/営業関連(営業・MR・人材・コールセンター他))
・「経営コンサルタントとして知識を発揮できそうで、持っていて武器になりそうな気がします」(50歳/その他)
・「スキルアップのためです」(59歳/IT関連技術職(ソフトウェア・ネットワーク他))
・「今後のことを考えると一番メリットがある」(47歳/営業関連(営業・MR・人材・コールセンター他))

MOS(Microsoft Office Specialist)

MOSは、Microsoft Office製品の操作スキルを証明する資格です。ExcelやWord、PowerPointなどのスキルが評価され、事務職やデータ分析業務に就く人に特に有用です。特に大企業では、MOSの資格保有者が業務効率化に寄与する例が多く、資格としての評価が高まっています。

・「デジタル化が進む現代では、普段の作業効率化のため社内のDX化が不可欠になる。ただ作業用機械のソフトの互換性がうまくいかないことが多く、相当ハードなレベルのプログラミング技術が必要となってくるため」(57歳/技能工・運輸・設備関連(生産・製造・運輸・警備・農林他))
・「パソコンスキルが低く、とにかく高めたいから」(52歳/その他))
・「OfficeやWordの資格はあって困らないので」(48歳/その他)

社会保険労務士

社会保険労務士は、労働法や社会保険の専門家として、企業の人事労務管理を支援する資格です。法改正に対応するための知識が必要で、人事部門やコンサルティング業界での需要が高まっています。

・「どのジャンルの企業でも活用できそう」(35歳/営業関連(営業・MR・人材・コールセンター他)
・「総務で勤務しているので活かせる機会がたくさんあるから」(40歳/販売・サービス関連(小売・フード・旅行・ホテル・エステ他))
・「これから需要が増える資格」(53歳/その他技術職(医薬・食品・化学・素材他))

FP技能検定

  • FP技能検定もリスキリングで人気の資格です

    FP技能検定もリスキリングで人気の資格です

ファイナンシャルプランナー(FP)は、資産運用やライフプランニングに関するアドバイスを提供する専門家です。金融業界でのキャリアアップや独立を目指す方におすすめの資格で、個人のお客様の資産形成をサポートできます。教育訓練給付金による支援がありますし、業務に活かせるとして受験料の一部を負担する企業もあります。

・「公私とも役立ちそうなので」(57歳/営業関連(営業・MR・人材・コールセンター他))
・「簿記とか宅建の資格を取得しているので関連性があるからです」(45歳/営業関連(営業・MR・人材・コールセンター他))
・「お金を取り巻く仕組みなどを理解しておきたい。また定年後などにもキャリアを活かして何か事業をスタートさせたい」(54歳/公共サービス関連(公務員・団体職員他))

宅地建物取引士

宅地建物取引士は、不動産取り引きに必要な国家資格です。不動産業界でのキャリアを考える方に不可欠な資格で、賃貸物件の契約や不動産売買の重要事項の説明を行います。試験に合格すると、独立開業も可能となり、高収入が期待できます。

・「職の幅が広がると思ったので」(40歳/営業関連(営業・MR・人材・コールセンター他))
・「土地の売買について知識を得たい」(45歳/その他)

基本情報技術者試験

基本情報技術者試験は、IT業界への入門資格とされています。プログラミングやシステム開発の基本を学ぶため、エンジニアやITコンサルタントを目指す方におすすめです。国のIT人材育成支援制度の対象となり、取得費用の一部が補助される場合もあります。

・「現状自身が持っているスキルを明確にするため、近い資格の取得を考えています」(58歳/営業関連(営業・MR・人材・コールセンター他))
・「今の時代に必要な技術だから」(47歳/専門サービス関連(医療・福祉・教師・インストラクター他))

メンタルヘルス・マネジメント検定

メンタルヘルス・マネジメント検定は、職場のストレス管理やメンタルヘルスに関する知識を問う資格です。管理職や人事担当者が取得することで、社員の健康管理や職場環境の改善に役立てることができます。取得者には企業からの評価が高まる傾向があります。

・「メンタル関係の問題が増えてきており、興味を持ったから」(57歳/IT関連技術職(ソフトウェア・ネットワーク他))
・「身近にメンタルにダメージを受けている人がいて、自身もそれに近い経験がある。今後そういった場面で役に立ちたい気持ちがあるため」(53歳/販売・サービス関連(小売・フード・旅行・ホテル・エステ他))

ビジネス実務法務検定

ビジネス実務法務検定は、企業法務の基礎知識を学べる資格です。契約書の作成や法的トラブルのリスクを軽減するスキルが求められ、法務部や管理部門でのキャリアアップを目指す方に向いています。資格取得者は、企業内で法務リスクの軽減に貢献できると評価されます。

・「身近な自分の生活に直結する資格を取りたいから」(40歳/クリエイティブ関連(デザイン・編集・WEB・ファッション他))
・「経理が主業務だが、その他の事務業務も担当することがあるため」(52歳/事務・企画・経営関連(マーケティング・経理・企画・経営他))

行政書士

  • 官公署への申請書類作成や法的なアドバイスを行う行政書士が10位にランクイン

    官公署への申請書類作成や法的なアドバイスを行う行政書士が10位にランクイン

行政書士は、官公署への申請書類作成や法的なアドバイスを行う国家資格です。個人事業主として独立開業も可能で、企業の法務サポートを行うこともできます。補助金申請やビジネス契約のサポート業務に従事するケースが多く、特に中小企業の支援ニーズが高まっています。

・「行政書士の仕事に需要があるので、安定した職業だと思ったからです」(48歳/その他)
・「法務に強いITエンジニアになりたいから」(57歳/IT関連技術職(ソフトウェア・ネットワーク他))

助成金や給付金もリスキリング人気の一因

リスキリングに伴う資格取得により、転職活動が有利に進むだけでなく、社内での昇進や異動の機会も増えることが期待できます。そして、リスキリングに関連する資格の多くは、政府や企業の支援制度が活用できるというメリットがあります。

リスキリングに活用できる助成金

企業がリスキリングに活用できる助成金の一つとして、人材開発支援助成金があります。厚生労働省が主導している同助成金は、企業が雇用する労働者に対し、職務に関連した専門的な知識および技能を習得させるための職業訓練などを計画に沿って実施した場合、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成するという制度です。

同助成金の一つに「事業展開等リスキリング支援コース」があり、新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、新たな分野で必要となる知識や技能を習得するにあたり、国が企業側に賃金の一部を助成するというものです。

企業に勤めている人たちは、これらの助成金を活用して新たな資格を取得することも可能でしょう。

リスキリングに活用できる給付金

個人がリスキリングを行う際に利用できる代表的な給付金として、教育訓練給付制度があげられます。教育訓練給付制度とは、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるという制度です。

教育訓練給付制度には以下の3つの種類があります。一般的なビジネスパーソンが対象となるのは一般教育訓練でしょう。

名称 対象内容 支給額
専門実践教育訓練 特に労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練 受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6カ月ごとに支給。資格取得などをし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で支給
特定一般教育訓練 特に労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練 受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給
一般教育訓練 雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練 受講費用の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給

令和6年10月からこの教育訓練給付金が拡充されており、専門実践教育訓練や特定一般教育訓練は追加の支給金がもらえるようになっています。詳しくは厚労省の専門サイトで確認できます。

これらの支援制度を活用することで資格取得のハードルが下がり、リスキリングにチャレンジしやすい環境が整っていることも、昨今の人気を後押ししていると言えるでしょう。

「リスキリングで何を学ぶか」という悩みを解決するランキングを紹介しました

リスキリングを検討する際は、自分のキャリア目標や興味に応じて資格を選ぶことが重要です。今回紹介した資格は多くのビジネスパーソンが取得を検討しているものであり、効果的にキャリアアップを図る手助けとなるでしょう。

資格取得を通じて、新たなスキルを習得し、理想のキャリアを実現していきましょう。

調査時期: 2024年11月6日
調査対象: 男性マイナビニュース会員
調査数: 301人
調査方法: インターネットログイン式アンケート