女優の松本若菜が主演するフジテレビ系ドラマ『わたしの宝物』(毎週木曜22:00~ ※TVer・FODで見逃し配信)の第4話が、きょう7日に放送される。

夫以外の男性との子どもを夫の子と偽り産み育てる「托卵」をテーマにした今作、その子どもが誕生したことで、主人公夫婦の関係性が徐々に良化していくかに見えたが、狂ってしまった歯車はもう誰も止めることはできず、“本当の父”の登場によってさらなる地獄が待ち受けていた――。

  • 深澤辰哉=『わたしの宝物』第4話より (C)フジテレビ

    深澤辰哉=『わたしの宝物』第4話より (C)フジテレビ

“背負っているもの”のなさが際立つ

今回の第4話と今後を占うためにも、登場人物たちが“背負っているもの”について考えたい。

主人公・美羽(松本若菜)のそれは、当然本作のテーマである「托卵」だ。美羽は孤独だったという言い訳が通用しない、夫以外の子どもを宿してしまったことに加え、前回最大の衝撃…その“報い”の象徴であるかのように、その子に「栞(しおり)」という名前が付けられた。栞とは“本当の父”との思い出であり、その名前によって、子どもにも逃れられない“背負っているもの”が加えられてしまった。

美羽の夫・宏樹(田中圭)も、いくら子どもが生まれたことで父性が目覚め、家庭をかえりみる人物へと軟化したからといって、過去の美羽への言動は許されるものではない。それが宏樹にとっての“背負っているもの”で、それが彼の中でよぎるからこそ、今では別人とも思えるほどの変化を見せているのだろう。

それとは対照的に、“本当の父”冬月(深澤辰哉)には、“背負っているもの”が見受けられない。もちろん美羽が結婚しているということを知りながら関係を持ってしまったことや、自らが立ち上げた事業によって仲間が失われてしまったこともあるにせよ、冬月のキャラクターを客観的に見ると、どこまでもまっすぐで誠実…“背負っているもの”が全く見受けられないといっていい。だがそれこそが冬月の“芯”となるもので、それによって冬月がより異質に映り、主人公夫婦とのコントラストが明確になり、「托卵」の怖ろしさがさらに浮かび上がってくるという絶妙な構造を見せているのだ。

また、冬月が後に“背負っているもの”=“本当の父”であることが知らされるであろうことも示唆することにもなり、今後のよりサスペンスフルな構造も生んでいる。加えて冬月に思いを寄せる同僚の水木(さとうほなみ)も、爆発テロに巻き込まれた際、亡くなった人物を冬月であると偽ったという“背負っているもの”があり、このことも冬月の“背負っているもの”のなさが、際立つ効果となっている。

  • 松本若菜(左)と田中圭 (C)フジテレビ

“ある人物”の介在がさらなる波乱に

第4話は、そんな冬月がいよいよ動き出していく。美羽は冬月が生きているという事実を知り、さらに“背負っているもの”が大きくなり、正気ではいられなくなるのだが、“背負っているものがない”、冬月は、何も知らないからこそ純粋でまっすぐな行動を見せる。それは「托卵」を介さないドラマであれば、不倫とはいえ、純愛メロドラマのように映ってもおかしくないのだが、その純粋さ、まっすぐさゆえに全ての行動が“凶器”に見えてしまうという、このドラマ独自のエンタテインメントになっている。

今回も冬月が美羽へ再び接触を試みるという前回同様のあらすじで、視聴者は粗方想像できてしまうのだが、その想像をあえてすかした上で、より怖ろしい展開へと導かれていく…。

さらに怖ろしいのは、“2人が再会する”からではなく、“ある人物”が新たに介在することで、さらなる波乱が起こるからだ。その人物とは、先にも述べた通り、各登場人物たちの“背負っているもの”を当てはめていくことで浮かび上がってくる。

その人物とは一体誰なのか、そしてその“背負っているもの”とは一体何なのか。毎回のようにどこまでいっても地獄でしかない展開へ導かれる今作だが、今回のラストを見ると、これまではまだまだ地獄ではなく、その入り口”に立っていただけだった!…と言えるような終わりで幕を閉じる。次回予告も併せて戦慄しか走らない第4話だ。

  • (C)フジテレビ