能登半島地震の復興支援イベントとして、「NTT西日本北陸支店ふれあいスポーツ教室」が、10月12日に石川県能登町の藤波運動公園で開催された。能登高校をはじめとする高校6校の生徒とジュニアクラブ(中学生)の総勢約80名が参加。世界トップクラスの技術を肌で感じるさまざまなプログラムを通じて、参加者たちは爽やかな汗を流していた。

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    石川県能登町の藤波運動公園で開催された「NTT西日本北陸支店ふれあいスポーツ教室」

通信の復旧作業が縁でソフトテニス教室を実施

NTT西日本ソフトテニス部は広島県広島市に活動拠点を置く、日本ソフトテニス連盟に加盟する部員数は 11名(選手9名、スタッフ2名)の実業団チーム。地域に密着した企業の実業団チームとしてスポーツ振興を促進し、社会貢献活動とソフトテニス技術の向上を目的にソフトテニス教室を各地で開催している。

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    NTT西日本ソフトテニス部は、社会貢献活動とソフトテニス技術の向上を目的にソフトテニス教室を各地で開催している

NTT西日本北陸支店事業推進室室長の奥山学氏は、開会の挨拶の中で復興支援イベントとして今回のソフトテニス教室を開催することになったきっかけを語った。

「NTT西日本北陸支店は震災からの通信の復旧作業のため、資材の置き場や社員の宿泊場所として、能登高校の体育館を貸していただいた際、ソフトテニス競技のトロフィーなどがたくさん飾られているのを見ました。同校がソフトテニスの強豪校で、また地域としてもソフトテニスが非常に盛んなことを知り、本日のイベントを開催することになりました」(奥山氏)。

世界No. 1プレイヤーの上松俊貴選手をはじめ、世界で活躍する選手が所属するNTT西日本ソフトテニス部。通常は2~3名のメンバーでソフトテニス教室を実施することが多いそうだが、今回は所属部員11名の全員が参加した。

「今回ソフトテニス部の皆さんにお願いしたら、快く引き受けていただきました。過密なスケジュールの中でソフトテニス部の皆さんが揃うということは滅多にないことです。今日は限られた時間ではありますが、一流選手の皆さんからいろいろなことを教えていただいて、今後の練習などに活かしてほしいと思います」(奥山氏)。

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    NTT西日本北陸支店事業推進室室長の奥山学氏「過密なスケジュールの中でソフトテニス部が揃うということは滅多にないこと」

続いて、NTT西日本ソフトテニス部・堀晃大監督からは「能登は僕が大学の時にインカレがありまして、非常に懐かしい思いで通ってきました。今日はメンバー全員で能登の皆さんと一緒にテニスを楽しみたいと思います」と挨拶。選手紹介とプログラムの実施内容を説明した。

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    NTT西日本ソフトテニス部・堀晃大監督「メンバー全員で能登の皆さんと一緒にテニスを楽しみたい」

さっそく参加者たちはNTT西日本の選手たちと一緒にウォーミングアップを行い、「忍者サーブ」(ジャンプサーブ)の練習も行われた。

「忍者サーブは実際に試合では使わないかもしれないんですけど、ウォーミングアップがてら、普段の練習に1分でも2分でも取り入れてください。サーブ力はもちろん、スマッシュ力も培われるし、ダイナミックな動きをすることでいろんなプレーができるようになってくるので。普段の練習からいろんな動きをするように意識しましょう」(堀監督)

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    「忍者サーブ」(ジャンプサーブ)を披露

NTT西日本の選手たちとの試合形式の練習も

選手たちの実際のプレーを見ながら、ボレーボレーなど普段の練習の中での注意点・留意点が伝えられた後は、広岡宙・上松俊貴ペアVS内本隆文・内田理久ペアのエキシビジョンマッチも実施。

堀監督の実況とチームキャプテンの林佑太郎選手の解説のもと、ナショナルチームのトッププレイヤーたちによる"ガチ試合"が繰り広げられ、会場は大いに盛り上がった。

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    ナショナルチームのトッププレイヤーたちによる"ガチ試合"も

1月中旬から4月中旬まで災害復旧作業時の拠点・宿舎として、NTT西日本北陸支店が能登高校の体育館を借りたことが縁となり、開催に至ったという今回のイベント。北陸支店では4月下旬から今回の教室開催に向けた準備や調整を進めてきたという。

「毎月いろいろな大会の試合に出場する選手たちのスケジュール調整が大変でしたが、本社の総務人事部に経緯をお話しして相談したところ、堀監督や選手全員から快諾があり、今日の開催になりました。天候にも恵まれて本当に良かったです」とは、NTT西日本北陸支店事業推進室室長の奥山氏。

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    講習会が各コートで実施された

開催にあたっては能登高校の協力を得て、他校のソフトテニス部やジュニアクラブなど地域の生徒たちが広く参加するかたちでの開催が実現したようだ。

「生徒の皆さんに元気を与えられて、何か希望や期待を持って未来へ向かっていただくような気持ちを少しでも持っていただけたら、我々も嬉しい限りです。このようなイベントを通じた地域貢献活動は今後も考えていきたいと思っています。一方で奥能登豪雨もあり、災害が重なって発生している状況でもありますので、地域の皆さんへ迅速に安定した通信サービスをお届けできるよう、引き続き努めていきたいと思います」(奥山氏)

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    NTT西日本の選手たちとのミニゲーム

プログラムの最後はグループに分かれ、ローテーションを回すかたちでNTT西日本の選手たちたちとのミニゲーム、前衛練習と後衛練習の技術的な講習会が各コートで実施された。また、試合で緊張してしまったときの対処方法など、メンタルの講習も同時に行われ、3時間以上にわたるソフトテニス教室は終了した。

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    参加した中高生たちはアドバイスに熱心に耳を傾けていた

「辛くて苦しいとき、一歩だけ進む」

閉会式で堀監督は「今日は本当にありがとうございました。短い時間で本当に申し訳ありません」と、本イベントの開催に携わった関係者などへの感謝を述べ、参加者の子どもたちへ次のようにメッセージを送った。

「本当にこの教室の話を聞いた時は絶対に能登へ行きたいという気持ちでいました。みんなと触れ合うことで、僕も選手も能登に来ることで逆にみんなから元気をもらって色々と学ぶことがたくさんあるだろうなと思っていました。部員の中にも2011年の東日本大震災を経験し、仮設住宅に避難した選手がいます。2014年の広島の豪雨災害では、僕の自宅の数十メートル先の地区で被害があり、とても小さな地区の中で70名以上の方が亡くなられました」(堀監督)

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    堀監督「僕らも能登ことをずっと思い続けています」

「震災のことを思い出させてしまい申し訳ないんですが、辛くて苦しいとき、シンドイときにちょっとだけ頑張る。一歩だけ進む。それがすぐ結果や成果につながるとは限らないんですが、『辛』という字に『一』を足して『幸』になれるように。何事も前向きに一生懸命取り組んでいくことが大切なことかなと思います。

僕らは1カ月後に東京・有明で全日本選手権があります。能登へ来たこと、みんなの笑顔を思い出して、この縁を大事にして、ひたむきに頑張ってきます。これからも応援していただきたいと思いますし、僕らも能登ことをずっと思い続けています。今日は本当にありがとうございました」(堀監督)

最後はサイン会と写真撮影会も行われ、参加者たちは予定の時間ギリギリまでソフトテニスを通じた選手との交流を楽しんでいた。

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    サイン会と写真撮影会も

閉会式の後、能登高校2年の高澤泉さんは「NTT西日本の選手からアドバイスをもらえて、普段なかなか訊けないような質問もでき、とても勉強になりました。自分は最後の1年間になるので、今日学んだことを活かし、最後の大会に向けて頑張っていきたいと思います」と感想を語ってくれた。

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