生成AIの登場で、文章を手軽にアウトプットできるようになりました。しかし、AIが作った文章はどこか味気なく、ありきたりな表現で、血の通っていない感じがします。採用担当者の目に留まる文章とは言えません。
私はウェブメディアの編集者や「バズる表現」の専門家として、多くの人に注目される文章の仕組みを日々研究しています。
人の心に直接語りかけ、感情を揺さぶる唯一無二の表現こそが、バズるコンテンツを生み出すカギ。それは就職活動における自己PR文も同じです。
今回は、相手に強い印象を与える自己PRのメソッドを紹介します。
相手に強い印象を与える「神テンプレ」を覚えよう
自己PR文でもバズる記事でも、文章は「読みやすさ」が重要です。そのカギを握るのがテンプレート(以下テンプレ)。
中でも、最初に「『3つの〇〇』を紹介します」と宣言すると伝わりやすくなります。下記がそのテンプレです。
私の「3つの〇〇」を紹介します。
1つ目は「〇〇」です。(なぜなら)~だからです。これを生かして御社で~できます。
2つ目は「〇〇」です。(なぜなら)~だからです。これを生かして御社で~できます。
3つ目は「〇〇」です。(なぜなら)~だからです。これを生かして御社で~できます。
以上の3つの長所を生かして、ぜひ御社でも活躍したいと思っています。
まず、文章の冒頭で伝えたい要素を数字と共に伝えます。「3つの長所」「3つのセールスポイント」「学生時代の3大エピソード」などです。
数字を宣言したら、1つずつ説明していきます。理由と、あなたを雇うメリットもしっかり書きましょう。
私の3つの長所を紹介します。
1つ目は「丁寧なところ」です。アルバイト先で書類作成やデータ入力などの業務を担当し、ミスなく正確に仕事を進めることを心がけてきたからです。これを生かして御社での正確な事務作業ができます。
2つ目は「責任感の強さ」です。学生時代に街のゴミ拾いプロジェクトに参加し、チームの一員として最後までやり遂げることを大切にしてきました。これを生かして御社では仕事を完遂させます。
3つ目は「学習意欲」です。新しい知識やスキルを積極的に学び、つねに自己成長に繋げたいと考えているからです。これを生かして御社に入社後も、会社を支える最新技術を学びます。
以上の3つの長所を生かして、ぜひ御社でも活躍したいと思っています。
このテンプレだと、指定される文字数によって、変幻自在に文字数を変えられます。
文字数が足りない場合は「3つの長所」を「4つの長所」に増やしてもいいですし、「(なぜなら)~だからです」のところにエピソードを追加するのもよいでしょう。
数字は多すぎると冗長になりますから、3~5に留めておくのが丁度よいです。この型を覚えておけば、どんな内容の文章もスッキリ整理されて、読みやすく好印象を与えることができます。
では、紹介した例文を、さらに相手の心を震わせる文章にするためには、どうすればいいのでしょうか。
さらに強い印象を与える! 3つの必殺技
1.エピソードは具体的に、固有名詞まで書く
自己PR文はオリジナリティが大切。具体的に書くことは、バズる記事でも欠かせないポイントです。採用担当者に「おっ」と思わせるには、エピソードを具体的に書くことが大切です。
アルバイトの話なら「Mrs. GREEN APPLEのライブの物販会場で接客をした」「マクドナルドでインド人のリーダーのもとで働いた」など、固有名詞を登場させることで強く印象付けられます。
2.数字で語る
数字を入れることで、さらに説得力とインパクトを加えましょう。数字も、バズる記事には欠かせない要素です。
「Mrs. GREEN APPLEのライブの物販会場で1,000人以上接客した」「マクドナルドで身長が190cmあるインド人のリーダーのもとで働いた」など、数字を入れることで読み手により鮮明なイメージを与えます。
3.熱量のある言葉で飾る
「熱い」「情熱」「熱意」「燃える」「炎」など、温度の高い熱を感じさせる言葉を至るところにトッピングしましょう。熱くて勢いのある内容がバズるように、熱のこもったPR文が担当者の心に火をつけます。
「約3万5,000人が来場するMrs. GREEN APPLEのライブの物販会場で1,000人以上接客し、体が火照るほど働いた」「マクドナルドで身長が190cmあるインド人のリーダーのもとで情熱的な接客を学んだ」という感じです。
担当者は「熱い人だな」と好印象を抱くとともに、あなたに会ってみたいと感じるはずです。
これらの3点を加味して、先ほどのPR文をブラッシュアップしてみます。
情熱的な私の3つの長所を紹介します。
1つ目に「丁寧さ」です。アルバイトとして200店舗以上ある全国チェーンのホテルで1000室以上のベッドメイキングを担当し、ミスなく正確に取り組んできました。そこで、マネジャー、従業員の投票により決定されるコンテストで敢闘賞を受賞した経験があるからです。こうした経験を生かして、御社でも丁寧に、熱意を持って仕事に取り組みます。
2つ目に「責任感の強さ」です。8月の炎天下の中、渋谷のゴミ拾いプロジェクトに参加し、チームの一員として最後までやり遂げた根性が私にはあるからです。この経験を生かして、御社でも熱いチームワークで仕事を完結させることを約束します。
3つ目に「学習意欲」です。生成AIなどの新しい知識を国内外のサイトから学ぶのが好きで、週に5日、3時間以上は勉強しているからです。こうした意欲を生かして、仕事に役立つ最新技術を、心を燃やしながらしっかり学びます。
以上が私の3つの長所です。この誰にも負けない長所を生かして御社で活躍したいと思っています。
具体的かつ、熱のこもったPR文になったのではないでしょうか。受ける会社によって、自分流に内容をアレンジしてみましょう。
伝わる自己PR文は、簡潔かつ具体的に書くこと。固有名詞や数字で、オリジナリティを出すことで、あなただけの強みを生かせます。
採用担当者への印象付けもバッチリです。熱意を込めて、文章であなたの「本気度」をPRしましょう!
取材協力:東香名子(あずま・かなこ)
ウェブメディアコンサルタント/コラムニスト
編集プロダクション、外資系企業を経て、女性向けウェブサイトの編集長に就任。アクセス数を月間1万から650万PVに押し上げた。独立後はウェブタイトルのプロフェッショナルとして、メディアのコンサルテーション等を行う。2021年には「鉄道トレンド総研」を設立。鉄道に関するオリジナルの記事を配信している。最新刊に『超タイトル大全 文章のポイントを短く、わかりやすく伝える「要約力」が身につく』(プレジデント社)がある。