「日本ワインの産地は?」と聞かれたら、真っ先に長野や山梨を思い浮かべる人が多いのでは? しかし、今、ワインファンが注目しているのは岡山県! 新世代の造り手たちが、どこよりも"高品質なぶどう"が育つ岡山に魅了され、この地で続々と独自のワインを作り始めていると言います。
今回は、そんな岡山ワインを深堀りできる「岡山テロワールを感じるワイナリー日帰りツアー」に参加し、その魅力をとことん体感してきました!
■奥深き岡山ワインの世界へ出発
ワイン旅のスタートは、JR岡山駅から。駅から歩いてすぐの岡山市営駅南駐車場に、3度の飯よりワインの好きなワインファン数十名が集まります。
今回のツアーは、2024年にスタートしたばかりの新企画。2024年9月に3日間限定で行われ、それぞれ内容も異なります。筆者が参加したのは、9月21日に開催された「岡山ワインバレー&domaine tettaコース」。
岡山県北西部にある新見地区の2つのワイナリーを見学し、テロワールセミナーや岡山ワインの試飲をしながらランチを満喫。最後に、日本最大級のチョウザメの養殖場へ行くという特別なバスツアーになっています。
道中、岡山ワインに精通する吉元英明さんが、これから行くワイナリーの歴史や特徴をレクチャーしてくれます。
吉元さんいわく、新見地区は、5億年ほど前まで海の底だったのだとか。それが地殻変動により、海底火山の影響で地盤が隆起。この辺りは、水はけがよく、ミネラルを多く含んだ石灰質の土壌になっており、醸造用ぶどうの生育に適しているとのこと。
岡山ワインにそんな歴史があったとは……!!
こちらが、今回試飲するワインリスト。2つのワイナリー「岡山ワインバレーワイナリー」と「domaine tetta」のワインがそろいます。どれも、飲んだことのないものばかり! これから出会うワインへの期待が一層高まります。
■保育園跡地でワインを造る「岡山ワインバレー」
そんなこんなで、1つ目のスポット「岡山ワインバレー」に到着。想像していたよりも、こぢんまりとした施設で、「えっ!?」と驚きの表情を浮かべる人も。
聞けば、こちらはもともと保育園だった建物をリノベーションし、2018年にワイン醸造所を開設したのだとか。
この日、代表の野波晶也さんが用意してくれたのは……
普段、めったにお目にかかることのない、ワイン用のぶどうの試食! イタリアで栽培されている「サンジョベーゼ」と「ネッビオーロ」、そしてさまざまな国で栽培されている「シャルドネ」です。
「ワイン用のぶどうって、酸っぱいんでしょ?」と思いきや、食べてみるとめちゃくちゃ甘くて濃厚!! あまりのおいしさに、お土産にしたいと思えるほどです(笑)。
そしてもうひとつ特別に用意されていたのが、収穫したばかりのぶどうを搾って造られたぶどうジュース。飲んでみると、めちゃくちゃフレッシュ&フルーティ……一口飲んだだけで「元気になったかも!」と思える"体が喜ぶおいしさ"です。
この日、野波さんと一緒にツアーの参加者を出迎えてくれたのは、パートナーの加藤萌さんと愛犬のためとも君です。加藤さんは「森の芸術祭 晴れの国・岡山」にも出展している、漆芸家でアーティスト。聞けば、「岡山ワインバレー」で造るワインラベルのほとんどは、加藤さんがデザインしているのだとか。
ワインが好きになってしまうと、ぶどう畑を見たくなりませんか? 今回のツアーでは、特別に「岡山ワインバレー」の圃場(ほじょう)も見学させてもらえることに!
案内してもらったのは、巨大なカレンフェルトと呼ばれる石灰石柱がすぐ近くにあるような、石灰土壌で赤土のぶどう畑。
野波さんによると、この畑の下には草月洞という鍾乳洞(しょうにゅうどう)が広がっているのだとか! このような水はけの良い複雑な地質だからこそ、ミネラル感豊富なおいしいワインが育まれるのだと実感……。この畑を見たら、ますます岡山ワインが好きになります。
■「食源の里祥華」で岡山ワインを飲み、学ぶ
お楽しみのランチは、山々に囲まれた静かな場所にある新見市哲多の和風レストラン「哲多食源の里 祥華」です。
メニューは、はすの実の煮物やコンニャクのお造り、どくだみや菊芋の天ぷら、雑穀米の釜飯などなど、体の中からリフレッシュできそうなものばかり。野菜不足の筆者にはうってつけです!
ランチをいただきながら、岡山ワイン5種の試飲タイム。
・岡山ワインバレー QAUGURA サンジョベゼ 2021
・岡山ワインバレー HAKUBI シャルドネ 2020
・岡山ワインバレー ノベッロベッロ サンジョヴェーゼ 2023
・domaine tetta Cabernet Franc 2022
・domaine tetta Shine Muscat 2023
しかも、ただワインを味わうだけではありません。今回は「岡山ワインバレー」の野波さんによるレクチャー付き。丁寧で細やかな野波さんの解説を聞きながらの試飲はとびっきり贅沢な時間です。
筆者が特に気に入ったのは、岡山ワインバレーの愛犬ためとも君をラベルにデザインした「ノベッロベッロ」。一口飲んだとたん、サンジョベーゼの軽い微発泡とは別に、ぶどうの皮由来のアロマが口の中に広がり、「こ、これはおいしい……」と思わずため息がもれるほど。