JR東海は、今後の労働力不足を見据えた検査の省力化を目的として、緩み止め性能を向上させた新しい電車線金具を開発し、営業線での性能確認試験を開始したと発表した。

  • トロリ線を一定の高さに保つための「電車線金具」について、振動で緩まない方式の金具を開発した

東海道新幹線では、「電車線金具」と呼ばれる金具によってトロリ線を一定の高さに保ち、パンタグラフを介して列車に安定した電気を供給している。従来の金具は、締結ボルトを回すことでとイヤー片が締まり、トロリ線を挟み込んで固定する方式だった。緩み止めナットでボルトの緩みを防止しているが、列車通過時の振動で締結ボルトが回り、緩むことがあるという。

金具の健全性を保つため、すべての金具について定期的に締結ボルトの状態等を検査しているが、作業員が至近距離から行う必要があるため、列車が走行しない夜間の限られた時間帯にしか実施できないという課題があった。電車線金具は全線で40万個を超えるため、検査に多大な人員と時間も要していた。

新たに開発した電車線金具は、NejiLaw(東京都文京区)が開発した「一度締めると振動では緩まないL/Rネジの締結技術」と、JR東海が持つ電車線金具に関する技術を組み合わせたもの。NejiLawが開発した右ネジと左ネジの両構造を持つボルトを採用することにより、緩まないしくみを実現している。メンテナンス時に一定以上の力をかけると壊れるように設計し、容易に取り外せるようにした。

JR東海小牧研究施設などで振動試験を行い、締結ボルトが振動で緩まず、電車線金具として必要な性能を有していることを確認できたことから、営業線での性能確認試験を開始した。設備の健全性向上や検査の省力化、作業コスト削減などの効果が期待できるとしている。2026年12月まで営業線で性能確認試験を行う予定。並行して量産化の検討を行い、2027年度以降の導入をめざすとしている。