タイ第二の都市チェンマイを拠点に活動するインディーポップ・バンド=YONLAPAが、ビルボードライブ横浜のステージへ初登場。オルタナロックをベースに様々な要素を取り入れながら展開される彼らの音楽は、作品リリースや数度の来日公演を通じて、ここ日本でも厚く支持されている。バンド結成に至る経緯から、各メンバーの音楽的バックグラウンド、現地シーンの特色、ライブの意気込みまで、幅広く話を訊いた。
4人の出会いと多様な音楽観
―YONLAPAの結成以前、Noinaさんはシンガーソングライターとして活動されていたそうですね。
Noina:そうなんです。大学生の頃からチェンマイのミュージック・バーで弾き語りのライブをやっていました。それをMinimal Recordのスメットさんが観てスカウトしてくれて、本格的にアーティスト活動を始めました。
―どんな経緯でバンド結成に至ったんですか?
Noina:スメットさんと相談する中で、タイのシーンでロックバンドが盛り上がっていることもあって「バンドで活動してみたら?」と提案されたのがきっかけです。中学の頃から、アメリカのパラモアのような男女混成のバンドが好きで、憧れていたんです。そこから、地元のシーンで活動しているミュージシャンたちに声をかけていきました。
Nawin:ある日たまたまコンビニにいたら、Noinaからいきなり「バンドやらない?」って声をかけられました(笑)。あまりに急だったので最初は冗談かなと思っていたですが、どうやら本気だと分かって「オッケー、やろうぜ!」と返事をしました。
Gun:僕も元々Noinaとは知り合いだったんですが、誘ってもらってすごく嬉しかったですね。自分にとってもいいステップになると思ったし、色々な音楽に挑戦できるいい機会だと思ったんです。
Fewchy:僕も友人のつながりです。僕が入る前から既にドラムレスでいくつか曲があって、加入後からバンドのサウンドを一緒に仕上げていきました。
Noina:チェンマイのミュージック・バーのシーンはとても小規模なものなので、みんな仲良しだし、すぐ繋がる近い関係性なんです。
人気曲「Let Me Go」(2019年)
1stアルバム『LINGERING GLOAMING』(2023年)
―YONLAPAの音楽はインディーロックを軸としつつも、色々な要素が溶け込んでいるように聴こえるんですが、それはメンバー皆さんのそれぞれの好みを反映した結果なんでしょうか?
Fewchy:「こういう音に統一しよう」とは意識していなくて、みんなの好みがバラバラなので自然とそうなっているんだと思います。僕自身、その時々の流行を追いながら幅広く聴いていますし、最近だと、Men I Trustやユセフ・デイズにハマっています。自分のプレイの参考にもなっていますね。
Nawin:僕は60〜70年代の古いロックから、最近はヒップホップやジャズ、トリップホップ系のアーティストを聴いています。
Gun:僕もピンク・フロイドやビートルズとか昔のロックが好きで、YONLAPAでも、そのあたりのサウンドをいかにアップデートしながら取り込めるかを意識しながらやっています。
Noina:こんな風にみんなバラバラな音楽性なので、始めのうちは意見のぶつかり合いも結構あって、演奏を合わせるだけでも結構大変で(笑)。けれど、お互いのアイデアを尊重して調整していくうちにみんなの考え方も変わってきて、結果的に今のサウンドが出来上がってきました。
―YONLAPAという名前の由来は何ですか?
Noina:単純な理由で、私の本名から取っています。色々と候補を考えてみたんですが、なかなかしっくり来る名前がなくて。バンドでの初ライブの日程が迫っている中で、「弾き語りの時代にもこの名前でやっていたしYONLAPAでいいか」ととりあえずスタートしがら、結果的に定着してしまって(笑)。今となっては良いネーミングだと思っています。
チェンマイの空気感、日本の音楽も語る
―みなさんから見て、チェンマイのインディーシーンに他の都市にはない特色があるとすればどんなところだと思いますか?
Fewchy:チェンマイは割とヒッピー的なスタイルの生演奏志向のバンドが多いような気がします。森の中で演奏するフェスの雰囲気にすごくぴったりくる感じですね。片やバンコクのシーンは、メインストリームの産業と距離が近いこともあって、プログラミングを駆使したDTM志向が強いアーティストが多い印象です。それには恐らく両都市の交通事情の違いも関係しているんじゃないかと思います。バンコクは車の渋滞もすごく、ちょっと人に会うだけでもとても苦労するので、リモートのやりとりが発展しているんですよね。その点チェンマイはお互いの家も近いし、すぐスタジオに入れますから。
―みなさんの音楽にもそういったヒッピー的なムードが反映されていると思いますか?
Noina:歌詞の部分には影響があると思います。作詞する時には、やっぱり街の雰囲気からその中で感じる気持ちが反映されますからね。チェンマイには自然も多いし、大都市の生活とはフィーリング面でも大きく違うと思っています。
Nawin:サウンドの面でも、チェンマイの自然豊かな環境からの影響は、無意識のレベルで僕たちに染み込んでいるかもしれませんね。
―メジャー産業のシステムとは離れたところで制作しているということの利点も感じていますか?
Noina:そうですね。実際に作曲するときにも、先輩ミュージシャンもいなければプロデューサーもいないので、自由に4人だけでやりたいことをできているし、だからこそ、いい意味で思ってもみなかった曲に仕上がることもあったり。とても面白いですね。
―皆さんはこれまでにも来日ツアーを行っていますが、印象に残っていることはありますか?
Gun:もう、全てがカルチャーショックでした! 中でも、ライブハウスのシステムにびっくりしましたね。楽屋から喫煙所、ステージ周りまで、全部がちゃんとオーガナイズされていて、感動しました。今回初めて演奏するビルボードライブ横浜も事前にinstagramで写真をチェックしたんですが、すごく綺麗なところで、今から緊張しています(笑)。
―昨年みなさんが共演した日本のバンド、MONO NO AWAREも同じ時期にビルボードライブへ出演することが決まっています(詳しくは後述)。彼らのステージはいかがでしたか?
Noina:とても良かったです! 私は元々彼らのファンだったので、共演できて本当に嬉しかったですね。楽曲からすごく日本らしい香りを感じるし、生楽器とエレクトロニック・サウンドのバランスも素晴らしいですね。お気に入り曲のプレイリストに入れて普段からよく聴いています。
―他に最近注目している日本のアーティストはいますか?
Fewchy:Nawinから教えてもらったレゲエバンドのASOUNDにハマっています。ベースがすごく効いているサウンドなんですが、バランスがとてもよくて、聴いていてすごく刺激を受けます。
Noina:私は細野晴臣さんの曲がお気に入りですね。欧米とアジアの音楽が混じり合っている様子がとても面白いです。
Nawin:僕は青葉市子さんかな。
Gun:青葉さんは僕も素晴らしいと思います。以前福岡のフェス「CIRCLE」で観て更に好きになりました。あとは、大貫妙子さんの曲もよく聴いています。
―メディアの発達によって手軽に各地の音楽を聴けるようになったというのは、みなさんの活動にとっても大きな意味を持っているんでしょうか?
Noina:そうですね。個人的にも、以前よりもヒップホップ系の音楽を楽しめるようになったし、リアルタイムで沢山の音楽に触れることができて、とても刺激的ですね。
―最後に、ライブに向けての意気込みをどうぞ。
Noina:今ちょうど新曲の練習に取り組んでいるところで、すごくドタバタしてしまっているんですけど(笑)、うまく間に合わせることができれば、その曲も演奏したいと思っています。ぜひみんなで観にきてほしいです。
YONLAPA at Billboard Live YOKOHAMA 2024
2024年10月23日(水)ビルボードライブ横浜
時間:1st Stage 開場 16:30 開演 17:30 / 2nd Stage 開場 19:30 開演 20:30
料金:Service Area : ¥6,900~ / Casual Area : ¥6,400〜
『YONLAPA LIVE IN FUKUOKA』
2024年10月18日(金) OPEN / START 19:00
会場:福岡 Kieth Flack
出演:[LIVE] YONLAPA、NONCHELEEE [DJ]YonYon、Somtam wan ang khaan DJs
『DEFOAMAT』
2024年10月19日(土)、20日(日) OPEN 14:00 / START 15:00
会場:東京・代官山T-SITE / フォレストゲート代官山 / 代官山UNIT / 晴れたら空に豆まいて
『FLAKE RECORDS 18TH ANNIVERSARY TONE FLAKES vol.163』
2024年10月20日(日) OPEN 17:30 / START 18:00
会場:大阪・ANIMA
出演:YONLAPA、REGA
詳細:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2453298
『YONLAPA LIVE IN MATSUMOTO 』
2024年10月21日(月) OPEN 19:00 / START 19:30
会場:長野・松本GNU
【アジア勢の公演が目白押し、ビルボードライブ注目公演】
Elephant Gym
”The Hidden World” Billboard Live
台湾が誇るスリーピースが登場
台湾・高雄出身のスリーピース・バンドがBillboard Liveに初登場。昨年10周年を迎え、4thアルバム『WORLD』をリリース。同作には亀田誠治(東京事変)、TENDRE、?te(Whyte)やYILE LIN(林以樂)といった国内外のコラボレーターが多数参加したことも話題を呼んだほか、今年6月には台湾のグラミー賞といわれる『Golden Melody Award(金曲奨)』にて審査員賞を受賞した。初期はスリーピースのバンドサウンドによるインストゥルメンタルを基調としながらも、現在はジャンルや音楽的枠組みを超過し、ボーカル入り楽曲や多様なアーティストとのコラボレーション、近年はライブにもホーンセクションを導入するなど、幅広い音楽性を体現してきた。本公演でも一部楽曲でホーンアレンジとプレイヤーを迎えたスペシャルな演奏を予定しているとのこと。しなやかに躍進するバンドの現在地をお見逃しなく。
【最新インタビュー】Elephant Gymが語るtoeからの影響、世界への眼差し、アジア・台湾・日本のつながり
2024年10月14日(月・祝)ビルボードライブ横浜
時間:1st Stage 開場 15:30 開演 16:30 / 2nd Stage 開場 18:30 開演 19:30
料金:Service Area : ¥7,000~ / Casual Area : ¥6,500〜
MONO NO AWARE
Billboard Live Tour 2024
勢いに乗る4人組バンドが特別編成で登場
玉置周啓(Vo, Gt)、加藤成順(Gt)、竹田綾子(Ba)、柳澤豊(Dr)からなる、MONO NO AWAREの東阪ビルボードライブ・ツアーが実現。今年6月にはニューアルバム『ザ・ビュッフェ』を発表し、ポップの土俵にいながらも多彩なバックグラウンドを匂わすサウンド、期待を裏切るメロディライン、言葉遊びに長けた歌詞を紡ぎ、ジャンルの枠に囚われない自由な音を奏でる彼ら。本公演はサポートに清水直哉を迎えてピアノなどの鍵盤楽器を入れた特別編成でのパフォーマンスとなる。ライブバンドとして進化し続ける4人組の貴重なクラブ公演は見逃せない。
2024年10月22日(火)ビルボードライブ東京
2024年10月24日(木)ビルボードライブ大阪
時間:1st Stage 開場 17:00 開演 18:00 / 2nd Stage 開場 20:00 開演 21:00
料金:Service Area : ¥6,000~ / Casual Area : ¥5,500〜
ADOY×Whyte
at Billboard Live YOKOHAMA 2024
ADOY
Whyte
アジアの今を担う2組のスプリット公演
アジアの音楽シーンを牽引する気鋭の2組が一挙来日。韓国の4人組シンセポップ・バンド、ADOYはK-POPとは一線を画す「K-INDIE」の活況を象徴する存在。80年代のエッセンスを感じさせるメロウな浮遊感を漂わせつつ、幅広いリスナーの耳を捉える洗練されたポップサウンドが支持を集めている。一方、台湾の新星R&Bシンガー、Whyte(壞特 ?te)はジャズやソウルをルーツに持ち、同じく台湾出身のElephant Gymによる4thアルバム『WORLD』への参加も記憶に新しい。スモーキーで温かい歌声と心地よいサウンドの組み合わせは、親密なクラブ空間に映えること間違いなし。
※1stステージ:Whyte/2ndステージ:ADOYが出演
2024年10月28日(月)ビルボードライブ横浜
時間:1st Stage 開場 16:30 開演 17:30 / 2nd Stage 開場 19:30 開演 20:30
料金:Service Area : ¥8,000~ / Casual Area : ¥7,500~