淡交社は、関西5大私鉄の熱い歴史から関西の発展をひもとく1冊『関西人はなぜ「○○電車」というのか -関西鉄道百年史-』(四六判288ページ、1,760円)を発売した。
関西の街を歩けば、「阪急電車のりば」に「阪神電車のりば」の案内板。鉄道会社のホームページには「京阪電車」。パンフレットには「南海電車まつり」に「近鉄電車の旅」。関西人に親しまれる阪急・阪神・京阪・南海・近鉄、いわゆる関西5大私鉄は「○○電車」の愛称で呼ばれる。
元全国紙の新聞記者で、「生粋の関西人」である著者の松本泉氏は、あるとき関東出身の友人から、「“電車”を付けて呼ぶのはヘンだ」と指摘を受けた。「なんでそんな当たり前のこと気にするんやろ」と思いつつも、あらためて不思議に感じたという。
そんな著者が改めて5大私鉄の歴史を調べると、1分1秒を競うスピードバトル、「えげつない」広告合戦、細かすぎるサービス争いなど、100年にもわたる企業間の対決が見えてきた。だが、その企業間競争こそが、いまある関西の経済発展や文化の創生に寄与してきたのだという。
同書のテーマは「鉄道から関西が見える」。ときに面白おかしく、ときに硬派な文化論的に、ときに昔の関西を懐かしみながら、5大私鉄の「争い」を通じて関西の歴史と文化をひもとく。各章のタイトルを見ると、「泥沼の百年対決(阪急VS.阪神)」「鉄路の敵は“プロ野球”で討つ?」「仁義なき買収合戦」「スピードで勝てんかったらアイデアで勝負」など、興味をそそる言葉が躍る。