• 長与千種

1985年に大阪城ホールで行われたダンプと長与による伝説の髪切りデスマッチも描かれているが、長与は「髪を切られている時は、会場にいる女の子たちの泣き声しか聞こえなかったです」と当時を振り返る。

本作で唐田も丸刈りに。長与は自身を投影し涙が出たそうで、「髪切りマッチがやっと自分の中で終わった」と感じたという。

「かっこよかったよ、唐田えりか。かっこよかったし、見ていて自分をアーカイブできた感じがしました。目の前で髪の毛が切られていくのを見ていた時に、自分を投影してしまって、髪切りマッチに関して初めて泣けて。何十年と時間がかかったけど、やっと泣けて自分の中で完結し、ありがとうという気持ちです」

約40年経ってようやく自身の中で消化できたという髪切りマッチは、長与にとってどのようなものになっているのだろうか。

「あれをやるために自分は生まれてきたのだと思います。その後もプロレスに携わって、今はプロレスの選手を育成していますが、それもこれも髪切りマッチがなければできなかったことなので。髪切りマッチのおかげで今がある。あれをやるために自分は生まれてきて、あれをやるために自分はプロレスの道を選んだのだと思います」

髪切りマッチも忠実に再現し、ダンプや長与の生き様が映し出されている本作。自分がドラマとして描かれることに、長与は「本当に不思議な感じがしています」と率直な心境を吐露しつつ、「どこまでやればいいのかなという不安は最初ありましたが、それ以上の答えを返してくれた女前の演者さんたちに、ありがとうという気持ちです」と感謝の思いを口にした。