2007年に女王様キャラのSMネタでブレイクし、近年は認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父との同居生活を描いた「FRaUweb」での連載「ポンコツ一家」が注目を集めているお笑い芸人・にしおかすみこ。同連載を加筆修正し、書き下ろしも加えた『ポンコツ一家2年目』が9月20日に発売された。笑って泣ける家族の日常を赤裸々につづっているにしおかにインタビューし、家族や介護との向き合い方について話を聞いた。

  • にしおかすみこ

    にしおかすみこ 撮影:蔦野裕

コロナ禍の2020年に久々に実家に帰った時に、ゴミ屋敷化した我が家と、認知症になり変わり果てた母の姿を目にしたにしおか。そこで同居を決意し、家族4人での生活が始まった。2021年より始めた、家族についてつづった連載「ポンコツ一家」が話題を呼び、2023年1月に『ポンコツ一家』を刊行。そして、このたび同居2年目のエピソードをまとめた『ポンコツ一家2年目』が完成した。

――「ポンコツ一家」の連載と1冊目の書籍『ポンコツ一家』の反響をお聞かせください。

「たくさん笑った」「泣いた」「感動した」と多くの方に言っていただけてうれしかったです。笑ってほしくて書いた本ですが、そういった声をいただいて逆に私が元気をもらっているので、すごくありがたいですし、ほっとしました。一発屋なので、「懐かしい」という声も多くて。一発屋で女王様をやっていたから、思い出しくださって、注目してもらえたというのもあると思うので、やっていてよかったなと思いました。

――改めて、4年前に同居を決断した思いを教えてください。

腹をくくったわけではなく、当時ゴミ屋敷になって床が砂場みたいになっていて、母が同じことを何回も繰り返したり、感情のコントロールができなかったりしたので、私がいた方がいいんじゃないかなという程度で帰りました。

――逃げずにちゃんと向き合うことにされたんですね。

逃げたくなる時もありますが、なるべく息抜きをして自分が病まないように、「今元気かな?」と心の健康を確かめながら生活しています。

――同居されてから4年経ちますが、ご家族はどう変化されていますか?

それぞれの症状の変化や年を取っていくというのは感じますが、3人とも個性がパワーアップしています。昔から母も姉も父も個性が強くて、私が一番薄いぐらいで。それに対する私の図々しさやふてぶてしさもパワーアップしていて、よりタフに図々しくなったなと思います。

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“ダメと言わない”勇気を持って見守るように

――ご家族と同居する前に抱いていた介護のイメージと、実際に介護と向き合うようになってから気づいたことをお聞かせください。

実家に帰るまで介護のイメージすらしてなかったです。一緒に住むようになって、認知症に関しては、すごくちゃんとしている時もあるけど、やっぱりすぐ忘れちゃうんだなと思う時もあって、難しいなと。認知症に関してもダウン症に関しても、母や姉の個性を見ないで知識だけで考えると間違った判断をしてしまうなと思っているので、母はどういう人なのか、姉はどういう人なのか、それぞれの性格をちゃんと見るようにしています。

――それぞれの性格をしっかり見て接していらっしゃるということですが、お母さまと接する時はどんなことを意識されていますか?

できることが少なくなっていくので、あまり「ダメ」と言わないようにしています。一緒に生活していると危なっかしいこともいっぱいありますが、何でも「ダメ」と言っていると母の行動範囲が狭くなるし、母の人生なので母の好きにしてもらいたいなと。その結果、ケガをしてしまうことがあったとしても、私は後悔しますけど、本人の人生なので仕方ないと思っています。だから、見守るのみですね。

――「ダメ」と言わずに見守るというのは、勇気がいることですよね。

そうなんです。ついつい「危ないよ」「ダメだよ」と言いそうになるんですけど、好きなようにしたらいいじゃんと思うようにしています。

――お姉さまに対してはいかがですか?

姉も基本的には一緒で、「ダメ」となるべく言わないようにしています。

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――そしてお父さまは酔っ払いとのことですが、酔っぱらっている時の対処法などあるのでしょうか。

ないです(笑)。昔から父はポンコツなので、受け止めているわけではないですが、そんなもんだと思うようにしています。

――ご家族について書くことで自分の気持ちが安定するということもあるのでしょうか。

それが今のところあまりなくて、1年前のことを書くと、1年前と同じぐらい腹が立ったりするんです。思い出して同じぐらい悲しくなる時もあるし。なのでどちらかと言うと、読んでくださった方がコメントをくださることで元気になるという感じです。そして、なるべく好きなことをして、しんどいことをなるべく引きずらないように、こまめにリセットするようにしています。