21日に放送されるテレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム『終りに見た街』(21:00~)。戦争体験者の1人として厳しい体験を次世代に伝えることをテーマに脚本・執筆された山田太一氏原作の『終りに見た街』が、主演・大泉洋×脚本・宮藤官九郎氏のタッグで3度目のドラマ化を果たし、令和によみがえる。大泉演じる主人公・脚本家の田宮太一は仕事もパッとせず、時に家族に疎まれながらも、家族と共に平穏な日常を送っていたのだが、ある日突然、太平洋戦争まっただ中の昭和19年6月にタイムスリップ。令和では知り得なかった厳しい戦時下のリアルに直面し、家族の形も変化していくことに。

今作には、吉田羊がしっかり者の妻・田宮ひかり役で出演。SNSでは「洋羊コンビ仲良しで大好き」「洋羊コンビの安心感」「また洋羊コンビが見られる」と、大河ドラマ『真田丸』(16年、NHK)や、昨年放送されたドラマ『ラストマン-全盲の捜査官-』(23年、TBS)で共演を重ねてきた“洋羊コンビ”の夫婦役に、喜びの声が上がっている。

そんな大泉と吉田に、宮藤の脚本の印象や今作の見どころについてインタビュー。互いの魅力や、吉田のコンサートに大泉がゲスト出演した際の思い出も聞いた。

  • 大泉洋、吉田羊

    左から大泉洋、吉田羊

吉田羊は“タイムスリップ女優”!?

――今作への出演が決まったときの心境を教えてください。

大泉:山田洋次監督の映画『こんにちは、母さん』(23年)で宮藤さんと共演させていただいてからすぐにこのドラマが決まって、宮藤さん脚本作品への初出演が叶ったことがうれしかったです。令和版の脚本を読むと、約40年前に山田太一さんが書かれた原作を、宮藤さんがさまざまなものやインターネットのある時代を反映させた2024年の物語にしていて、見事だなと。戦争という題材を扱うなかで、ぞっとする怖さもあれば笑えるところもあって、緩急も素晴らしい。山田太一と宮藤官九郎という世代を隔てた二人の天才のコラボという感じがして、なんて面白い物語なんだと思いました。

――吉田さんは、ドラマ『不適切にもほどがある!』(24年、TBS)で宮藤さんの作品に出演されたばかりですが……。

吉田:タイムスリップ続きですね(笑)。そろそろ、“タイムスリップ女優”と呼ばれても過言ではないかもしれません。

大泉:“タイムスリップしないと出ない女優”かもしれない。

吉田:タイムスリップありきで(笑)。出演条件は、タイムスリップ。

大泉:出演依頼が来ても「それ、タイムスリップしないんですか?」って。

吉田:「ずっと現代ですか?」って(笑)。

――(笑)。吉田さんの今作の印象を教えてください。

吉田:山田さんご自身が戦争体験者でいらっしゃるので、原作は描写がすごくリアルで詳細。当時の景色がありありと思い浮かびました。先程、洋さんもおっしゃっていましたが、令和版ではそこに宮藤さんのユーモアや現代ならではの感覚が掛け合わさって、これまでにない、新しいタイプの戦争ドラマになっていると感じました。

  • テレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム『終りに見た街』より=テレビ朝日提供

子どもたちの描かれ方に感じた恐ろしさ

――『終りに見た街』は、ラジオドラマや舞台作品にもなり、ドラマ化は今回が3度目となります。

大泉:時代によって戦争に対する考え方も違うので、何度リメイクしても意義のあるドラマだなと思います。

吉田:今、正に世界で戦争が起こっているからこそ、皆が自分ごととして捉えられるのではないかと。自分で調べて、情報を集められる時代ですから、ぜひご家族でご覧いただいて、戦争について考えるきっかけにしていただきたいです。

――戦時中にタイムスリップする家族を演じた感想を教えてください。

大泉:僕が演じる太一は、羊ちゃん演じる妻のひかりに頭が上がらなくて、2024年のリアルな夫婦の姿が描かれているんです。一念発起したときに、普段は厳しい妻が賛成してくれて喜ぶところは、とてもかわいかったですね。令和版で特に恐ろしさを感じたのは、子どもたち。現代社会に適応できない子どもたちが、何も考えず、流されて生きる戦時下のほうが楽だと感じて「国のために戦うんだ、悪い奴らをやっつけるんだ」という思考になってしまうのですが、確かに今の時代なら、こう考える子がたくさん出てくるかもしれないと怖くなりました。父親の視点で「それじゃダメだ」と考えさせられましたね。

吉田:私は、戦時下の設定でのお芝居をするのは今作でまだ2度目なんです。当時の格好をしてその時代の人々と対峙したとき、お芝居でも恐ろしくて。実際に戦時下で生きていた方にとってどれほど怖かったのか、どれほど絶望的な思いで生きていたのかと思うと、ぞっとしました。令和版では、原作にはないオリジナルキャラクターで、三田佳子さん演じるおばあちゃんの清子さんが登場します。唯一の戦争体験者である清子さんのアイデアによって、家族が戦火を生き抜いていくことになるのですが、三田さんが紡ぐ台詞、たたずまいにはとても説得力がありました。

大泉:約40年前にドラマ化されたときは主人公に戦争の記憶がある設定でしたが、今作は2024年の物語ということで、代わりに戦争を知るおばあちゃんを登場させて、家族が頼っていくという宮藤さんのアイデアがすごい。認知症が少し始まっていることも相まって、コメディ要素も交えながらストーリーが展開していくのですが、三田さんのお芝居が本当に素晴らしかったです。