イマドキの就職活動で年々、重要な意味を持ち続けているインターンシップ。業界・企業理解を深めるとともに、その後に続く選考を少しでも優位に進めるべく、多くの学生がインターシップの参加に精を出しています。
学生から人気の高い企業はインターンシップも当然「狭き門」。日本を代表する広告会社である博報堂/博報堂DYメディアパートナーズも例外ではなく、毎年非常に多くの応募が殺到しています。
同社の場合、その知名度も然ることながら、プログラム内容の品質や満足度の高さも、学生からの人気の秘密となっています。事実、2024年度には「第7回 学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」の優秀賞を受賞。
評価の高いインターンシップとはいかなる内容なのか、人事室タレントアクイジション部の白坂太秀さん、インターンシップの講師を務めるビジネスプロデューサーの福永モモさんに話を聞いてみました。
"本物"のクライアントがインターンシップに登場
優秀賞を受賞したプログラムは、2023年に実施した総合職希望者向けインターンシップ「BUSINESS CREATION CIRCUIT」でした。
博報堂/博報堂DYメディアパートナーズでは毎年、プログラムをブラッシュアップしており、2024年度は「インターンシップ『ビジネスデザイン篇』」として開催されています。
ただし、名称こそ変われど、基本的な内容は共通しており、合計5日間にわたる日程の中で講義とグループワークを交えながら、最終的にはクライアントのビジネスに寄与する博報堂/博報堂DYメディアパートナーズらしい提案をリアルに作り上げていく内容としています。
福永さん 「最初は会社概要やさまざまな代表事例の紹介から入り、次第に現場社員もメンターとして参加するグループワークに移行します。最後の2日間は博報堂/博報堂DYメディアパートナーズとお付き合いのあるリアルなクライアントさんの課題解決に挑んでもらっており、最終日にはクライアントの担当者さんが実際に登場して学生さんの提案を直接お聞きいただき、評価をいただいています」
昨年度は全国的な販売網を持つ超大手企業が登場。とある有名製品を習慣化して購入してもらう方法について、学生ならではの視点で編み出してもらったそうです。
学生にとってみれば、本当のクライアントが登場するインパクトは絶大ですし、広告会社とクライアントが「パートナーとして良好な関係を結んでいる様子」を見ることで、リアルな仕事の雰囲気を目の当たりにでき、志望度を上げる重要な要素の一つともなったようです。
一方で参加したクライアントの企業担当者の方にとっても、いくつもの選考を経て参加してくださっているインターン生の製品に対する声を聞けるというのは、ブランディング活動を考えるうえでプラスになると高い評価が得られたと言います。
学生自身のキャリアを開拓する場として位置づける
インターンシップというと、表向きは「学生が社会を知るためのきっかけ」ということになっていますが、企業側の本音としては就活本番での自社への志望度アップ、引いては早期選考という視点が付きまとってきます。
博報堂/博報堂DYメディアパートナーズでは、インターンシップの目的などもオープンにしていますが、あくまでも採用は"ファースト"ではないと位置付けています。
白坂さん 「学生さんが自身のキャリアビジョンを発見したり、将来やってみたいことを見出す機会としたりする場として、インターンシップを位置付けています。博報堂/博報堂DYメディアパートナーズに入社したい! と思っていただくことよりも、弊社との出会いを通じて、自分がワクワクすることや、得意なこと、大切にしたい想いなどに気づくことで、学生さん一人ひとりの今後の"自分らしいキャリア"を描くヒントを見つけてほしいです。だからこそ企業からの一方的なコミュニケーションではなく、学生さんと企業の双方向での活発なコミュニケーションを生むインターンシップになるようにたくさんの工夫をしているつもりです」
企業からの一方通行な情報提供になりがちなインターンシップという場を、学生が「自分らしく」成長する機会と捉えてプログラムを構成しているのは、多種多様な業界とつながりのある博報堂/博報堂DYメディアパートナーズだからこその視点と言えるかもしれません。
あえて日程を連続させずに開催することで、振り返りの時間を設ける
では具体的にどうやって"学生ファースト"なインターンシップに仕立てているのか? そこには広告会社らしい緻密な仕掛けが網羅されていました。
例えば、合計5日間の日程は、あえて連続させず、2週間ほどの期間で飛び飛びで開催。間に時間を置くことで、これまでの自分を振り返り、良かったことや改善したいこと、次に挑戦してみることなど、経験をふまえた教訓を引き出してもらうのがその目的だと言います。
福永さん 「例えば弊社ではフィロソフィーの一つである『生活者発想』を大事にしているのですが、前半3日間の個人ワークやグループワークだけでは、『生活者発想』をうまく意識できません。しかし、前半で悔しい思いを経験すると、後半開始までの期間、普段の暮らしでの気付きを意図的に得ようとするようになるので、最後の2日間のワークショップでは、考えの幅がものすごく伸びていて、このインターン中にも成長しているのがわかります」
後半のグループワークでは100名を超える参加者を5名程度のチームに分け、メンターとして現場社員が各チームについてサポートしますが、インターンシップ当日以外であっても、社員を交えて会議ができるようにしています。
また、チャットでの質問にも随時受け答えをしていて、人事担当者やメンター社員らが懇切丁寧に返答をするそうです。
プログラムがない日でもずっと見てくれている――そんな実感が学生の満足度向上につながっているのだと白坂さんは明かしました。
オンライン開催時は、弾幕のようにコメントが流れる?
インターンシップというと"企業に見られている"というイメージが強く、発言を控えたり、委縮したりする学生もいるようです。選考は二の次だと考えている以上、同社ではそこを解消していく工夫も随所に盛り込んでいます。
白坂さん 「インターンシップの雰囲気づくりには相当注力しています。まず参加者の学生さん全員に開催の1週間前を目途にスターターキットと題した荷物をお送りしています。そこには、名入りの参加者IDカードや各種関連書籍、インターンシップ限定のノベルティグッズなどが封入されており、オンラインでも感じられる一体感を醸成しています。プログラム初日からは毎日、朝イチにはウォーミングアップと題して全員に『好きなことを教えてください!』といったフランクな質問を投げかけ、誰でも気軽に発言がしやすい空気を作っています。4日目まではオンライン開催なのでコメント欄でコミュニケーションをしていますが、僕ら人事や登壇者たちでも追い切れないくらいの発言が殺到します(笑)よくご参加いただいた学生さんから"オンラインでも圧倒的な一体感があった"と言っていただくのはこうした一緒に作り出している雰囲気が理由だと思っています」
福永さんによれば、それこそ「弾幕」のような勢いだそうです。
通常の自社説明会には数千人が参加するので当然、そちらでも多くのチャットが早く流れますが、インターンシップは100名超の規模なのに同等の発言量だと言いますから、いかにインターン生と会社の距離感が近いのかがうかがい知られます。
インターンシップに参加できなかった学生に対しても手厚くフォロー
仕掛けという意味で心憎いのは、インターンシップ生だけでなく、すべての学生に対してのフォローもある点です。
白坂さん 「多くの応募をいただいている中ですごく心苦しいのですが、インターンシップで受け入れられる人数には限りがあります。ただ残念ながらご参加が叶わなかった学生さんに向けても、昨年度からは限定のイベントを開催し、そちらにご案内をさせていただいています。弊社を知るきっかけとしてご活用いただき、少しでもキャリアを考えるヒントをすべての学生さんに届けたいという想いで実施をしています。また、弊社では現在大きく3つの時期に選考を行っていますが、それぞれでフラットに判断しています。かく言う僕もインターンシップ早期選考では不合格となり、春公募選考でリベンジして入社した身です。なのでもしそこで弊社自体に興味をお寄せいただけたら今後の選考にもぜひ引き続きチャレンジいただきたいなとも思っています」
インターンシップ後もすべての学生に寄り添う姿勢を貫いており、各選考へのエントリーも順調に伸びているそうです。
また、人事や社員の人柄に魅了されたのか、新卒入社としては縁がなかった人が、その後にキャリア採用として再チャレンジするケースも多いとのことでした。
またそれだけでなく、そうした学生がクライアントや協力会社として将来つながると考えれば、その場限りでのインターンシップや選考活動ではなく、持続的な人間関係を育むという視点が、今後の「採用のキーワード」になるような気がします。
学生たちへのエール
最後にお二人から就活中の学生に対してメッセージをいただきました。
福永さん 「自分はどのような思考回路を持った人間なのか、を満足して伝えることができたとき、納得して就職活動を終えられるのだと思いますし、その後の社会人生活も、次の目標に向けて突進できると思っています。就職活動は、『受からなかった』ことにどうしても落ち込みますが、十分に自分らしさを出していたとしたら、『自分にはその会社の雰囲気に合っていなかったんだろうな』と、納得ができて前に進めると思うんです。その話しの続きでいうと、例えば自分の志望とは少し違うかな? と思っていた会社だったとしても、合格通知が来たとしたら、働いていく中で自然と"合っている"と感じるようになるはずです。弊社のインターンは、『自分自身を知るきっかけを作れる』と思っていますので、インターンシップを通して、悔いのない就職活動をしてほしいですね」
白坂さん 「就活が早期化・長期化する中では、やりたいことを探して"沼って"しまう学生さんも多いと思います。その中でも諦めず、フラットな視点で等身大の自分を見つめながら頑張ってほしいですし、私たちもそういう学生さんを全力で応援したいと思っています。弊社のインターンシップには、これまで独力では気付かなかった自分を見つけるヒントが散りばめられています。将来の道を探すきっかけとしてもぜひ活用していただきたいと思っています。広告会社志望ではなくとも、他業界とのかかわりを通してビジネス全体が理解できるかもしれませんし、グループワークでの立ち居振る舞い方を通して自分の向き不向きに気付けるかもしれません。ぜひ多くの学生にエントリーしてほしいです。ただ、そうはいうものの、新卒採用担当としては、ウチの会社も志望してほしいという気持ちもあるのはここだけの本音です(笑)」
総合職向けインターンシップ「ビジネスデザイン篇」では、「これまでの人生最高に、脳が汗だくになる。」というキャッチコピー通り、粒違いな登壇者による講義や事例紹介、博報堂/博報堂DYメディアパートナーズらしい発想法を実践するグループワークなど、充実したプログラムを提供。
2024年度も夏と冬で実施を予定しており、学生自身が"自分らしいキャリア"を描くヒントを見つけられることを目的に、今後もより一層のブラッシュアップをしていくとのことです。