※後編では、NO.10(第10問)以降を掲載しています。NO.9(第9問)以前をお読みになりたい方は、前編をご購入ください。
はしがき
振り飛車党が頑張った一年でした。佐藤天九段は名人戦と棋聖戦で挑戦者になるまであと一歩のところまで迫り、升田幸三賞を受賞しています。西田六段は永瀬九段もイチ押しの振り飛車党で、王将戦でプレーオフに進出しました。今回の表紙は、王将戦でリーグ入りを決めた一番のものです。何とも強い三段玉でした。
本誌に連載している私の講座で取り上げたものは、割愛しています。その中では、棋士編入試験の最終局▲柵木四段―△西山女流三冠が印象に残りました。戦型は西山の三間飛車に、柵木の腰掛け銀急戦。実はこの急戦、明治生まれの「将棋学徒」こと小堀清一九段(1912‒1996)が得意にしていた形です。駆け引きや水面下の変化に違いはあれど、古豪の作戦が大一番で蘇ったのは驚きました。藤本六段も指しているのを見ると、その優秀性は21世紀生まれの棋士にも認められているといっていいでしょう。
古い作戦が新しいエッセンスを取り入れて進化しているのを見ると、改めて温故知新を実感します。今回は新手・新構想だけではなく、知る人ぞ知る「干瓢(かんぴょう)巻き」の謎にも迫りました。ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。
七段 勝又清和
編集協力 小島渉
本文中、一部肩書・段位を省略しました
※本文中の段位は将棋世界本誌掲載当時のもの
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NO.10
ヒント
愛媛の個性派オールラウンダー、黒田がまたも面白い手を披露した。△3三角なら普通だが……。
(R6/5/10 牧野―黒田 棋聖 後手番)
第10問解答
△4四角(解答図)
2筋を放棄して角を上がったのが大胆だ。本誌の今年3月号に掲載された黒田の講座によれば、解答図で▲2四歩なら△同歩▲同飛に△3三桂▲2三飛成△2二飛と反撃するとある。飛車をぶつけて指せるようだ。
実戦は▲2四歩ではなく▲7六歩とし、△3二金▲6八玉△3三金▲3八銀△2二飛と進んだ。3三金型向かい飛車は阪田流の応用で、黒田は2021年の朝日杯将棋オープン戦・千葉幸戦で指している(22年度版の新手年鑑に収録)。詳しくはマイナビ出版の「4手目の革新!菜々河流向かい飛車」を参考にしてほしい。牧野戦・千葉幸戦の結果は、どちらも黒田勝ち。
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