第83期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は2回戦が進行中。8月15日(木)には渡辺明九段―豊島将之九段の一戦が関西将棋会館で行われました。対局の結果、相掛かりのねじり合いから抜け出した渡辺九段が122手で勝利。貴重な後手番白星で1勝1敗の成績としています。

初白星はどちらに

ともに開幕戦を落としての2回戦。先手となった豊島九段は相掛かりの戦型を選択、右桂の活用を急いだのは近年流行の急戦志向です。続いて横歩を取って戦線を拡大したところで後手の渡辺九段は先手陣へ角を打ち込み対抗します。局面は落ち着きを取り戻し、局面は一転ジリジリとした駒組みに突入しました。

豊島九段が飛車の活用を図って盤上は再び動き始めますが、自陣への飛車の成り込みを許容した渡辺九段の対応が見事でした。竜に当てつつ金を引けば、まだまだ後手陣は安泰な上、飛車を移動させたことで、先手の角をいじめる筋も生まれています。一連の対応で貴重な手番を得た渡辺九段は、棒銀の要領で左辺から反撃に乗り出しペースをつかみました。豊島九段は作った竜の働きがいまひとつです。

渡辺九段が耐えて1勝

渡辺九段優勢とはいえ決め手をつかめぬまま戦いは終盤戦へ。激しいやり取りの中で双方の攻め駒ほとんどが駒台に載った場面は仕切り直しを思わせます。しかしここから渡辺九段は敵陣に打ち込んだ飛車をジッと自陣に成り返る粘り強い指し回しを披露。これが功を奏して形勢は再び渡辺九段に傾き始めました。

終局時刻は翌16日0時31分、最後は自玉の詰みを認めた豊島九段が投了。終盤の入り口の悪い流れを耐えて有利につないだ渡辺九段の粘り強い指し回しが光る一局となりました。これでリーグ成績は渡辺九段1勝1敗、豊島九段0勝2敗に。3回戦で渡辺九段は増田康宏八段、豊島九段は佐藤天彦九段と対戦します。

水留啓(将棋情報局)

  • 両者の対戦成績はこれで渡辺九段の24勝18敗となった(写真は第80期名人戦七番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

    両者の対戦成績はこれで渡辺九段の24勝18敗となった(写真は第80期名人戦七番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)