「第40回ATP賞テレビグランプリ」(全日本テレビ番組製作社連盟主催)の受賞式が8日、都内のホテルで行われ、グランプリにドラマ『不適切にもほどがある!』(TBSスパークル/TBS)が決定した。

  • 『不適切にもほどがある!』磯山晶プロデューサー(左)と脚本の宮藤官九郎氏

    『不適切にもほどがある!』磯山晶プロデューサー(左)と脚本の宮藤官九郎氏

まず、ドラマ部門の最優秀賞に選ばれ、磯山晶プロデューサーは「このドラマを企画したときは、放送表現の適切・不適切の境界線を攻めようとか、そういうことは一切考えてなくて、中年のおじさんがすごい走り回って頑張る、元気が出るドラマを作りたいなっていう話から始まりました。できたらそのおじさんが、現代ではあまり言っちゃいけないようなことを言う人がいいねっていう話になって、だったら昭和からタイムスリップしてくればいいんじゃないの?っていう話になったような記憶があります」と回想。

そこから、「直前まで『時をかけるダメオヤジ』っていうタイトルだったんですけど、前クールに同じようなタイトルのドラマが他局さんであったために、『不適切にものがある!』にしました。でも、(脚本の)宮藤(官九郎)さんの最初の企画書みたいなものには、『娘がチョメチョメしちゃうから』っていうタイトルが付いてました」と明かし、「そのタイトルになったら、今ここでこんな表彰を頂くことになってなかったと思うので、本当に『不適切』っていう言葉をタイトルに入れて良かったなと思います(笑)」と苦笑い。

そして、「これをタイトルにしたことで、不適切と適切の境界って何だろうっていうことに、宮藤さんからもらう台本もそうですし、キャストもスタッフもみんなフォーカスできて、親子愛とかいろんなことを描く中でも、“不適切”という言葉が私たちをすごく集中させてくれて、皆さんのパフォーマンスがすごくよかったなと思っております」と、その効果を振り返った。

宮藤氏は「小川市郎という主人公には、いくつか決まりの口癖みたいなものがあって、“チョメチョメ”ばっかり言ってるわけではなくて、“本当にそうかな?”っていう言葉があるんです。僕は、それが自分の創作の中の原点というか、“本当にそうかな?”っていう気持ちでいつもドラマを作ってるような気がしています。今回で言うなら、“コンプライアンスが厳しいから、テレビドラマを今作るのは大変だよね。言いたいこともやりたいこともあんまりできないでしょうね”って言われると、“本当にそうかな?”と思うんです。いろいろ工夫すれば、まだまだテレビドラマだってやりたいことはできるし、面白くできるんじゃないかなっていうのが、このドラマの核になっているんです」と力説。

そんな今作の第1話の小川市郎の第一声は「起きろブス! 盛りのついたメスゴリラ!!」。宮藤氏は「何も工夫してないんですけど(笑)」と自虐しながら、「磯山さんと(監督の)金子(文紀)さんがずっと飽きずに僕を使っていただいて今日があるんですけど、これから先も“本当にそうかな?”っていうことがある限り、ドラマを作っていきたいし、テレビに関わっていきたいなと思っております。54歳にもなりまして、もういい加減、若いのに譲ればいいのにって自分でも思うんですけど、まだまだやり続けたいと思います」と意欲を示した。

そして、ドキュメンタリー部門最優秀賞の『新・爆走風塵 中国・トラックドライバー 生き残りを賭けて』(テムジン、NHKエンタープライズ/NHK BSプレミアム、NHK BS4K)、情報・バラエティ部門最優秀賞の『市民X 謎の天才「サトシ・ナカモト」完全版』(NHKエデュケーショナル/NHK BS1)と争われた投票で、今年のグランプリに決定。

再び登壇した宮藤氏は、プレゼンターの堺正章を目の前にして、「『チューボーですよ!』に出た時に酢豚の回だったんですけど、星3つ付けといて良かった(笑)」と会場を笑わせながら、「僕はいつも一生懸命作ってるんですけど、今回はいつも届いてないところに届いてるなという実感がありました。いつも届いてないところの人たちにも褒められましたし、そうするとやっぱり怒る人もいるんだなってことも分かりました。最近怖くてネットニュース見れません(笑)」と本音を吐露。

その上で、「(ネットニュースで)『不適切』っていう文字を見るたびにドキッとするんですけど、だいたい僕じゃないんですね。今年いろいろあった人は『不適切』って言葉が付きまといますよね。すいませんでした」と謝罪した。