スズキはインドで生産しているコンパクトSUV「フロンクス」を日本に導入する。このクルマは2023年4月にインドで発売して以来、中近東、中南米、アフリカなどへ販売地域を広げてきたスズキの世界戦略車。日本市場に導入するスズキの狙いとは?
小型車ラインアップのミッシングピース?
スズキには「バレーノ」という小型SUVがあって、日本でも2016年から2020年まで販売していた。このクルマは2022年にフルモデルチェンジしており、海外では現役で販売中だ。フロンクスはバレーノとプラットフォームを共有するクーペSUVである。
フロンクスは当初からグローバルカーとして開発したクルマであり、今回の日本投入も既定路線だった。
スズキは小型車を得意とする自動車メーカーだが、日本向けコンパクトSUVについては品ぞろえが手薄になっていた。もともと、バレーノとか「イグニス」といったクルマを日本で売っていたのだが、今では販売終了となっている。現在のラインアップで探すと、コンパクトSUVと呼べるのは「クロスビー」と「ジムニーシエラ」くらいだ。
これら2台は人気なのだが、コンパクトSUV市場で存在感を示しているホンダ「WR-V」やトヨタ自動車「ライズ」/ダイハツ工業「ロッキー」、トヨタ「ヤリスクロス」などとはキャラが違う。競合車に真っ向勝負を挑むには、「フロンクス」のようなクルマが不可欠だった。「バレーノの販売が終わって、日本ではスイフトより上のサイズのハッチバックがなくなってしまっていました。スイフトに乗っていただいているユーザーさんからすると、もう少し居住性や車格が上のクルマが欲しいと思っても、スズキのラインアップに選択肢がない状態だったんです」というのがフロンクス開発陣から聞いた話だ。
フロンクス日本仕様の特徴は?
フロンクスは投入する国や地域に合わせて仕様を変えている。日本向けで特徴的なのは4WDモデルが追加となっていること。雪の降る地域にもクルマを売るためには4WDが不可欠との判断だ。
運転の楽しさや後席も含めた乗り心地の良さ、静粛性の高さもフロンクスの特徴だとスズキは説明する。日本仕様には道路状況に合わせた専用チューニングを施したそうで、車線変更やコーナリングの際のロール、荒れた路面での体の揺れ、段差通過時のショック感などを抑えた乗り心地には注目してほしいとのことだった。直進安定性も高いそうだ。ちなみに、一般的に4WDは、リアの駆動系からも振動や騒音などが発生するので2WD(FF)に比べて乗り心地的に不利だが、そのあたりを含め対策を施し、2WDと比べても遜色のないレベルまで作りこんだという。
日本仕様のフロンクスは1.5Lの自然吸気エンジンを使ったマイルドハイブリッド車(MHEV)となる。インドで販売しているフロンクスには先進の運転支援システム(ADAS)が全く付いていないそうだが、日本仕様には電動パーキングブレーキを採用し、標準装備でアダプティブクルーズコントロール(ACC)や車線維持支援機能(LKA)などを盛り込んだ。スズキのADAS担当によれば、フロンクスのLKAでは運転の楽しみをスポイルしないよう、「介入感」をうまく抑えた絶妙な制御に挑んだとのことだった。
フロンクスの日本仕様はパワートレインがMHEV1択、駆動方式は2WDか4WDの2択。インテリアカラーは1種類だ。グレード展開がどうなるかは不明だが、装備差で細かく分割して複雑な売り方をするつもりはなさそうな感じがする。日本に導入するフロンクスの仕様を絞り込んでいるとすれば、その分、価格を低くできるはずだ。
原稿執筆時点で価格は不明なのだが、電動パーキング、ADAS、スマホのワイヤレス充電、シートヒーターなどが標準装備となり、2WDが200万円台前半とかであれば魅力的だと思う。ちなみにWR-V(2WDのみ)は209.88~248.93万円。ライズ(ガソリンとハイブリッド、2WDと4WDあり)は171.7~233.8万円だ。