JR九州は、7月19日付で鉄道事業の旅客運賃・料金の上限変更認可申請を国土交通大臣宛に行ったと発表した。あわせて設備投資実績・計画も公開しており、主要プロジェクトとして「次世代車両の新製」「既存車両の改造」などを挙げている。

  • JR九州では、103系や713系、415系(ステンレス車)、キハ40系など、国鉄時代に製造された電車・気動車が現在も活躍中

主要プロジェクトのひとつ「次世代車両の新製」(2024~2030年度に約125億円)に関して、国鉄時代に製造された車両がすでに35年以上経過しており、延命工事等で長寿命化を図りながら使用しているものの、メンテナンスに人手や修繕等の費用を要している状況だという。次世代車両を新製し、国鉄時代からの老朽化した車両を更新することで、メンテナンスコストの削減、環境負荷の低減、騒音の軽減を実現するとともに、車内ビジョンによる案内の拡充、バリアフリーへの対応など快適な車内環境を提供。利便性向上を図る。

「既存車両の改造」(2024~2030年度に約110億円)は、「製作から20年以上経過した電車」を対象としており、主回路機器をエネルギー効率の高い機器へ取り替え、経年劣化の進んだ機器も更新。主回路機器を一新することで消費電力量を減少させ、環境負荷の低減を実現するとともに、経年劣化による不具合の発生を抑え、列車遅延・運休の未然防止を図る。

「次世代車両検査施設の整備」(2024~2031年度に約480億円)も推進。在来線車両の検査・修繕を行う工場の建物・設備に建造後100年を超えるものがあるなど老朽化が著しいことから、耐震性に優れた施設への整備を検討するとともに、自動化・ロボット化・レイアウト変更も行う予定だという。作業効率の改善、省力化・省人化による生産性向上、耐震性向上と環境負荷の低減を図り、環境にやさしい施設として安全・安定輸送の維持向上に寄与する。他にも主要プロジェクトとして、「鉄道施設の長寿命化」(2024~2027年度に約75億円)、「スマートフォンを活用したチケットレスサービスの導入・拡大」(2024~2027年度に約30億円)を進めるとのこと。

  • JR九州が近年投入した車両のうち、YC1系は今後も導入を推進。821系は運転区間の拡大を計画しているという

JR九州はこれまで、利用者サービス向上策の一環で次世代の近郊形電車821系や蓄電池搭載型ディーゼルエレクトリック車両YC1系を導入し、旧型車両の置換えを随時進めてきた。YC1系は今後も導入を推進し、821系についても運転区間の拡大を計画しているという。置換え時期に達していない近郊形電車811系も、主回路の改良で電力消費量の削減を図っている。

2023年度下期から近郊形電車813系のロングシート化も順次実施し、クロスシート車両と比べて1編成あたりの定員数が約30名増加する。今後も新型車両の導入等で環境効率の高い鉄道の利用を促進し、車内のリニューアル等で快適性向上に取り組むとしている。