• 片岡愛之助

自身と演じたマキシムの共通点は「全くないです」と笑い、「正反対だから、そんなに根に持つんだとか、こういう考え方の人もいるんだとか、勉強になりました。唯一の共通点を探すとしたら、マキシムは虫が大好きで虫の研究ばかりしていて、僕は歌舞伎が好きで歌舞伎に没頭しているので、何か一つに没頭するというのは共感できました」と話した。

そして、自身の性格をどう捉えているか尋ねると、「悩まないです」と回答。

「悩んでずっと立ち止まっている時間は人生において無駄だなと思うんです。解決しないから悩み事なわけで、それを一生考えていても一生解決しない。ちょっと違う道に行ってみたら解決することもあるので、あまり悩まず次に行くようにしています」

悩まない性格は、両親の死も関係があると明かす。

「両親が2人とも早く亡くなり、母親が53歳、親父が56歳でした。母親が亡くなった時に、母親の骨壺を見て『人間死んだら終わりやで。だから、後悔しないように生きることが大事だな』と言っていた親父も1年後に骨壺に入ってしまったので、こういうことかと、その言葉が身に染みました。自分の人生だから後悔しないように生きていかないといけないなと。好きなことだけして生きていくというのは無理ですが、人生楽しく、調和を取りながらみんなと仲良く生きていきたいなと思っています」

両親の死をきっかけに「後悔しないように生きよう」と改めて感じ、悩んで立ち止まることがなくなった。

「もちろん『なんで失敗したんだろう』と考えることは必要ですが、反省したらすぐ次に行けばいい。ずっとそこでくよくよしていても次の扉は開かないので、切り替えが大事だと思います」

  • 片岡愛之助

仕事においても立ち止まることなく挑戦を続け、歌舞伎以外の仕事にも精力的に取り組んでいる愛之助だが、原動力は「もっとたくさんの人たちに歌舞伎に興味を持ってもらいたい」という思いだ。

「僕は歌舞伎役者で、特に上方歌舞伎を残していかなければいけないお家に入れていただいたので、最近上演されていない上方歌舞伎を復活させたり、新作を作ってみたり、歌舞伎に興味のない人たちに振り向いてもらうことがすごく大事だと思っています」

最近は海外の観客がとても増えているという。

「僕らも海外旅行をする時にその土地の文化を調べるように、海外の方が日本の文化に興味を持って歌舞伎を見に来てくれる。この間、歌舞伎で『流白浪燦星(ルパン三世)』をやったら、『ぜひこれを海外に流してほしい』という声がたくさんあったので、海外配信も決まりました。そうやって広まっていくのはうれしいですね。でも日本に住んでいる方たちになかなか興味を持ってもらえないので、そういう方たちにも興味を持ってもらうために僕はいろんな仕事をやっています」

幅広く活動する中で相乗効果も実感しているという。

「それぞれ全然違うステージだなと感じますが、結局職業としては俳優なので、どれをやってもとても勉強になる。『怪盗グルー』のような新しい仕事でも歌舞伎で培ったものが使えたりしますし、こっちで培ったものも新作歌舞伎を作る時に使えたりしますから。どん欲にいろんなことを死ぬまで挑戦し続けていきたいなと思っています」

実際に、歌舞伎以外の仕事でファンになってくれた人が歌舞伎を見に来てくれるという反響も感じている。

「今の時代はネットでいろんな感想を書いてくださいますが、『半沢直樹』の時に一番反響を感じました。『黒崎さんの歌舞伎が見たいと思って歌舞伎を見に来ました』って見に来てくれて、『歌舞伎かっこよかったです』『黒崎さんありがとう』という声をいただき、自分がやっていることは間違ってなかったんだなと。だからこれからも続けていこうと思います」

1年のうち歌舞伎は6カ月、残りの6カ月はドラマや映画などほかの仕事をするように決めているそうで、「10年以上ずっとそうしています」とのこと。そして、今後について「貪欲にいろんなことに、ご縁があるものには挑戦していきたいなと思っていますし、海外でいろんな歌舞伎ができればなと思っています」と抱負を述べた。