第50期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定トーナメントが進行中。7月11日(木)には佐々木勇気八段―梶浦宏孝七段の一戦が東京・将棋会館で行われました。難解な終盤戦の中、二転三転の競り合いを153手で制した梶浦七段が次回戦進出を決めています。

中盤は佐々木八段リード

相掛かり空中戦に進んだ本局は佐々木八段が先手陣に角を打ち込み動き出します。香取りを受けるために先手が自陣角を投入したことで局面は穏やかな流れに移行するも、やがてしびれを切らした梶浦七段がこの角を犠牲に飛車を成り込んだのはリスキーな賭けでした。

佐々木八段は「駒得したら穏やかに」の方針に従って局面を中盤戦に押し戻します。形勢は後手優勢で、なんとか逆転を目指す梶浦七段は盤上いたるところで駒をぶつけて局面を複雑化。一足先に梶浦玉に王手がかかり始めた最終盤に本局のハイライトが待っていました。

銀捨ての勝負手で逆転

一分将棋に突入した梶浦七段はここで渾身の勝負手をひねり出します。自玉に迫る飛車と馬の目の前タダのところに銀を差し出したのがそれで、後手の攻め駒が一瞬凝り形になるため攻め合いの速度が逆転します。攻めの手番を得た梶浦七段は満を持して最後の反撃へ。

終局時刻は19時50分、最後は攻防ともに見込みなしと認めた佐々木八段が投了。梶浦七段は持ち時間を残す佐々木八段の時間攻めに苦しみながらも、なんとか勝負手を実らせ逆転をつかんだ格好。梶浦七段は次戦で羽生善治九段―菅井竜也八段戦の勝者と対戦します。

水留啓(将棋情報局)

  • 梶浦七段は局後「(終盤、銀のタダ捨ての勝負手で)難しくなったと思った」と振り返った

    梶浦七段は局後「(終盤、銀のタダ捨ての勝負手で)難しくなったと思った」と振り返った