味の素は、ご飯を炊く際に入れるだけで糖が穏やかに吸収されるご飯が炊ける炊飯器専用調理料「白米どうぞ」の販売を今年3月よりスタートしました。

「糖質を気にせず白米を食べたい」という消費者の想いを叶える「白米どうぞ」はどのように開発されたのでしょうか。味の素で新領域の商品開発を行い、「白米どうぞ」プロジェクトマネージャーを務める竹澤拓也氏に開発の背景を伺いました。

  • 味の素 コンシューマーフーズ事業部 新領域グループ 「白米どうぞ」プロダクトマネージャー 竹澤 拓也氏

「白米どうぞ」GI値を下げる味の素の技術とは?

「ご飯は好きだが、糖質が気になる」という方は多いでしょう。「白米どうぞ」は白米のGI値(食品の“糖質の消化吸収のされやすさ”を表す指標)に着目し、日本初となる、糖の吸収が穏やかなご飯が炊ける炊飯器専用調理料です。今年3月に味の素のオンラインショップで先行販売がスタートしています。

  • 「白米どうぞ」1合分スティック7本入袋(990円)、30合分袋(3,500円)

――「白米どうぞ」、3月の発売から約3カ月が経ちました、ユーザーの反応はいかがですか?

発売2か月で約20万食(1食1膳換算)を突破、想定の倍ほどのスピードで売れており好評をいただいております。通販のみの販売ではありますが、社内外でも大きな反響が寄せられていますね。SNSのクチコミやデジタル広告の活用、栄養士の方へのアプローチも行っています。

――「糖質ケアができる白米」はご飯好きにとっては嬉しい商品ですよね。まず「白米どうぞ」が生まれたきっかけを教えてください。

「白米どうぞ」は、味の素の酵素技術を基に作られた製品です。技術開発に7年、商品化に2年、トータル9年と、新製品としてはかなり長い時間をかけて開発しました。

  • 「白米どうぞ」1合当たり1本(4.5g)を入れる。無味無臭のパウダーだ

味の素は、スーパーマーケットなどのおにぎりに使われているご飯の老化防止や食感の維持のための酵素製品も手掛けており、酵素について多くの知見を持つメーカーです。酵素を使って健康価値を生み出せないか……と考えた際、白米のおいしさはそのままでGI値を下げることに着目したことが始まりです。

――そもそも「GI値」とはどのようなものでしょうか。

「GI値」は食品の"糖質の消化吸収のされやすさ"を表す指標です。まず糖質ケアには2つ考え方があります。ひとつは"糖質オフ"のように糖質自体の「量」を減らすこと。一方でGI値は、「質」の面でケアする考え方です。どちらが良いかというものではなく、糖質ケアをする際は両輪で考えてほしいですね。

GI値は一般的にまだまだなじみがない言葉で、認知率も3割程度。健康診断でスコアが気になる方や、筋トレに励む方には意識されている値です。

「白米どうぞ」を入れて炊飯すると、通常の白米のGI値を100とした場合、78.7と玄米と同程度のスコアに変化します。

――「白米どうぞ」は糖質を減らすのではなく、吸収を穏やかにするのですね。様々な炭水化物がありますが、そのなかでもなぜ「白米」にフォーカスしたのでしょうか。

酵素を使った商品を企画するにあたり、糖質ケアを行う方のリサーチを行いました。その中で、糖質ケアは適量の糖質を取ってコントロールすることが重要ではあるものの、極端に抜きすぎる方がいるというギャップ、そして糖質ケアをする本人だけでなく、一緒に暮らす家族の影響が大きいことに気づきました。

あるインタビューでは、夫や義父の糖質ケアとして白米を玄米やこんにゃく米に置き換えているご家庭の話を伺ったのですが、味がおいしくなかったり、白米との炊き分けをする手間がかかったりと、食事を用意する妻や家族の負担も大きいケースがありました。糖質ケアが必要な本人はおいしいご飯を食べられなくて辛い、そして家族も肉体的・精神的に辛い。この課題を味の素の酵素の技術で解決できると感じたんです。

実際にユーザーに聞くと高い熱量で「欲しい」という声も多く、「お届けしなければいけない」という使命感から開発のスピードが上がりましたね。

――「白米どうぞ」はどのような仕組みで「GI値」を下げているのでしょうか。

酵素の持つ「でんぷん構造をのつながりを切る・つなぐ」という力を使い、お米のでんぷんを複雑化させます。もち麦などに似た消化されにくい構造に変化することで、糖の吸収を穏やかになる仕組みです。

  • 「白米どうぞ」がGI値を下げる仕組み

でんぷんの構造が変化しても、白米の味や食感は変わりません。またGI値が変わっても糖質自体の量は変わらないため、白米本来が持つ栄養素を摂ることができます。

――味は変わらないのですね。「よりおいしくする」ではなく、なぜあえて「そのまま」とされたのでしょうか。

皆さん、白米は大好きですよね。日本人はDNAレベルでお米好きだと思います。だからこそ人によって「おいしいお米」の正解は異なると考え、「白米どうぞ」で炊いてもお米の味を変えないようにしました。「食べたいけれど糖質が気になって諦めている」人にこそ、「自分がおいしいと思うお米」の味や食感をなるべくそのまま食べてほしいんです。

――開発の際、「こだわった点」「苦労した点」を教えてください。

こだわった点は、"普段の生活にどれだけすっと馴染むか"でした。糖質ケアは一時的なものではなく継続する必要がありますが、ご飯を炊くために水の量を変えたり吸水時間を長くしたり、面倒なことがあると続かないものですよね。我々味の素は調味料メーカーとして、本商品を開発する時に「簡便性があること」「日常の行動を変えないこと」を考えています。「白米どうぞ」も炊飯時に入れるだけでOKです。家族で一緒の食卓を囲んで同じものを食べるという日常の行動を買えない製品にしました。

  • 炊飯時に1合あたり1本の「白米どうぞ」を入れるだけという手軽さ

苦労した点は、開発に時間がかかったことですね。酵素の組み合わせはあらゆるパターンを繰り返し繰り返し組み合わせて、7年かかりました。ただGI値を下げれば良い訳ではなく、白米として受け入れてもらえる品質を維持しつつGI値を下げることは難しかったです。

――味の素といえば、うま味調味料「味の素」をはじめとした調味料や、冷凍食品など日々の食事が美味しくなる製品を多岐にわたり手掛けられています。味の素グループが「一貫して目指す姿」とはどのようなものがあるのでしょうか。

味の素グループは、アミノ酸の会社です。「アミノサイエンス」で人・社会・地球のWell-beingに貢献し、「おいしく食べて健康づくりをする」ことを創業以来一貫した志としています。「アミノサイエンス」は、アミノ酸のはたらきにこだわった研究プロセスや実装化プロセスから得られる素材・機能・技術・サービスの総称ですね。調味料や冷凍食品、コーヒー、医薬品など多角的に展開しているので、おいしく食べて、健康づくりをしてもらいたいと考えています。

また私が所属している新領域グループは、驚き・感動・喜びの価値があるものをお届けする事をミッションとしています。「白米どうぞ」も、「白米のおいしさはそのままに糖質ケアができる」という驚きや喜びを実現した商品です。届ける人の顔も、どう喜んでもらえるかもちゃんとイメージの通りで、ミッションを体現できていることが反響の良さにも繋がっているのかなと思いますね。

――好調なスタートを切った「白米どうぞ」、今後の展開は?

現在はECサイト「味の素ダイレクト」でのみ販売しているのですが、「どこで売っているの?」という声も寄せられているので、販売チャネル拡大を検討していきたい。また調剤薬局などのチャネルに置いてもらって、栄養士が食生活を提案する際に使ってもらうチャンスもあるかなと。欲しいと言って下さる方が沢山いらっしゃるので、買いやすくしていきたいです。

また中長期的にはこの技術を活かして新しい製品を開発できる可能性もあります。実際に「私、パンも大好きなんです」といった声も寄せられていて……好きな主食でうまく糖質ケアができる製品をつくりたいですね。


味の素が長年研究してきた酵素の技術を活用して生まれた「白米どうぞ」。糖質ケアが必要な方も、そうでない方も、おいしいご飯を一緒に楽しんでほしいという思いから開発された新製品、今後の展開にも目が離せません。

  • 炊きあがりはいつもと変わらず。自分好みのおいしいお米を食べながら糖質ケアができるのは嬉しい限り