放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は14日の会合で、日本テレビのドラマ『セクシー田中さん』調査報告書について議論を行った。

  • 日本テレビ(左)と小学館

    日本テレビ(左)と小学館

ドラマの内容自体に放送倫理上の問題があるわけではない

この問題は、原作者の芦原妃名子さんが、ドラマの脚本作成において見解の相違が発生し、9話・10話の脚本を自ら執筆した経緯をSNSとブログで説明していたもの。芦原さんは後にこれを削除し、SNSで「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい。」とつづり、急死した。

同委員会では、「放送されたドラマの内容自体に放送倫理上の問題があるわけではない」とした上で、「ドラマ制作の過程で問題がなかったかどうかについて関心を持ってきた」と立場を表明。また、「放送局が自主的・自律的に問題を検討し解決への道を探ることが望ましい」という考えから、5月31日に日本テレビが調査報告書を公表したことを受け、議論を行った。

単純に仕事の仕方やサポートが不十分だったのでは

委員からは、「単純に仕事の仕方やサポートが不十分であったことなどが問題だったのではないか」「原作者を措(お)いて脚本家をディフェンスしているように読み取れるところがある」「“原作に忠実に”という点と、原作が完結していないので“ラストはオリジナル脚本になる”という点で、それをどう扱うかが両者の間で詰め切れておらず、すれ違いがあったことが問題である」と指摘。

また、「ドラマ化には改変ありきで進んでいることが問題ではないか。漫画原作の良いところは、絵コンテが出来ているようなもので、キャスティングにも反映しやすい効率的な側面がある。しかしコマ割りや表現は考えに考え抜いて作られているのだから、演出家や脚本家などの現場がそれをちゃんと尊重して制作するという枠組みを作ってほしい」「つくづく原作者として守りたいものがある場合には、最初にそれを文章で書いて、これが守られなければ、原作の使用許可をいつでも撤回できるとして、判子を押さないとだめだと感じた」と、漫画のドラマ化を進めるスタート段階においての合意形成のあり方について提案が。

一方で、「作っていくうちに想定外の展開があったり、演者が関わることで新しいものが生まれたりと、ある種の生き物のようなところがあると想像できる。最初に契約を作ることは難しいという人がいるが、そういう部分もあるのかもしれない」との理解もあった。

業界の契約体質が関係しているのでは

報告書では、原作者からの厳しい意見について、プロデューサーが咀嚼して脚本家に伝えていたことが明かされているが、「生き物であれば、咀嚼をせずに脚本家に対し原作者から出ている厳しい意見をちゃんと伝えるべきではなかったか」といった意見も。

そして、業界全体としての観点で、「日本のエンタテインメント業界の契約体質が非常に関係している気がして、条件は制作開始前に一定程度枠を決めて書面化しておかないといけないのではないか」「ある程度の条件を互いに都合の良い解釈をしている可能性があり、この業界の根本的な問題点のような気がする」といった声も出た。