マイナビは6月14日、日本のジェンダーギャップ指数向上に関するメディアブリーフィングを開催。労働における「ジェンダーギャップ指数」向上の解決策を提示した。

  • ジェンダ―ギャップ解消に"ポジティブな降格? 格差是正の糸口とは - マイナビが提言

2024年のジェンダーギャップ指数は?

世界経済フォーラムは毎年ランキング形式で、各国の男女格差を「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野で評価した「ジェンダー・ギャップ指数」を発表している。先日発表された2024年における日本の順位は、146カ国中118位。

本順位はG7参加国では最下位、また先進国の中でも順位が低く、未だ男女格差のある状況からは抜け出せていない。

  • 日本のジェンダーギャップスコアの現状(2024年)

ただし、すべての分野で格差が大きいわけではない。"1"で達成度100%を示すスコアを見ると、教育(72位/99.3%)・健康(58位/97.3%)分野においては、実はほぼ平等が達成されていると言える。一方で、政治(113位/11.8%)、経済(120位/56.8%)分野では低迷が続く。

分野によって偏りのある日本のジェンダ―ギャップについて、マイナビキャリアリサーチラボ 主任研究員の東郷こずえ氏は次のように語った。

「私はこの健康と教育でほぼ平等が達成できていることが、ネックだなと感じています。日本は先進国であり、教育も受けられる。そして、安心安全に暮らせるという中で、あまり不平等感をダイレクトに感じることはないと思います。ただ、経済とか意思決定の場に女性がいない、気づきづらい不平等感がある。そこが日本の不平等感の闇だと感じています」

その中でも経済参画に着目すると、2023年の日本における管理的職業従事者の女性割合は12.7%、部長相当職になれば1割未満と現状は深刻だ(令和4年雇用均等基本調査/厚生労働省)。

そこで本ブリーフィングでは、経済参画における格差是正について言及。今回は、女性の管理職比率を高める具体的な施策をみていく。

ジェンダーギャップの根底にある固定概念

そもそもジェンダーギャップはどこから生まれているのか。マイナビキャリアリサーチラボ 主任研究員である関根貴広氏は、労働者の固定概念に触れ、ギャップが生じるポイントについて説明をした。

  • 「男性」である(であるべき)とする傾向の意識を抜粋し性別で比較

マイナビキャリアリサーチLabが実施した「マイナビライフキャリア実態調査2024年版」によると、「仕事/稼ぎ手/組織のリーダーは男性」という規範意識を男女ともに持っているという。

例えば、「体力面で大変な仕事は男性がすべき」の項目では男女とも約半数が、「稼ぎ手/組織のリーダーは男性が向いている」の項目では男性は3人に1人、女性は4人に1人の割合となった。さらに、男性は4人に1人程度、女性は3人に1人以上の割合で「女性は男性より管理職になりたがらない」と考えていることが明らかに。

  • 「女性」である(であるべき)とする傾向の意識を抜粋し性別で比較

これを立場別で比較すると、組織内の上位者ほど強い性別規範意識下にあり、評価者ほど「男性管理職なら多少無理しても●●すべき」など性別的役割に縛られた管理職像を持っている傾向にあった。

この管理職のイメージを感じ取ることで、被評価者(一般社員)は「責任の重さの割に待遇が見合わない」「私生活と両立できるだろうか」といった不安や昇進への抵抗感につながっている、と関根氏は説明した。

  • 根深い規範意識は組織の上位者=評価者ほど強い

"ポジティブな降格"とは?

では、性別規範意識が残る日本社会でどのような対策を講じていけば、女性管理職増加につなげられるのだろうか。

関根氏は、男女比率改善が進まない背景には"定数"の問題が関係してくると指摘。一般的に管理職は総数が定まっているため組織拡大でもしないかぎり、増やすことは容易ではないという。

  • "ポジティブな降格"とは

そこで「ポジティブな降格」で、管理職の流動性を高めようというのが今回の提案だ。ポジティブな降格とは、子育てや介護をはじめ、専門的なキャリアを積みたい人、自己学習の時間がほしい人など、業務との両立が難しい管理職を対象として、自発的かつ時限的に降格をする取り組みだ。

管理職の負荷をライフステージの変化に合わせ軽減し、仕事と生活の両立基盤を創出するのに加え、定数である管理職の流動性を高め、昇進機会と意欲の向上を促すのが狙いである。

  • 女性より男性で高いポジティブな降格の利用・導入意向

一風変わった策だが、実際に利用したい人はいるのだろうか。同社の調査結果によると、全体の約5割が積極的に利用・導入意向を示しており、性別でみると、女性より男性が積極的な利用・導入意向を持っていることが明らかになった。

特に男性の「係長・主任・職長クラス」の利用意向は61.2%と最も高く、次いで男性の「経営層」が60.5%、女性の「課長クラス」59.8%となり、「係長・主任・職長クラス」以上は性別に関わらず利用・導入意向が5割を超えた。

  • ポジティブな降格の利用・導入意向

導入を希望する最多の理由として、経営層は「業績と評価のギャップの是正」、管理監督者は「管理職をやった後、待遇が見合っていないと感じた」をあげている。

  • ポジティブな降格による懸念点

また、同調査では"ポジティブな降格"に対する懸念点についても調査しており、「収入の減少」が組織内のポジションに関わらず最多回答となった。この結果からもわかるように本対策には収入減少の緩和措置は必須である、と関根氏は話す。加えて、時限的な降格から戻る際に元の役職に戻れるかなど、制度を実施するにあたって考慮すべき点は複数あるという。

最後に同氏は、「"ポジティブな降格"という選択肢を創出することは、働く人の管理職イメージや昇進意欲をアップデートしていくこと」だとし、それがゆくゆくは管理職の男女比率改善に向かっていくだろうと締めくくった。