毎日の習慣として定着している歯磨き。しかし、正しい歯の磨き方を知らないまま、自己流で磨いてしまっている人も多いでしょう。そこで今回は、第一三共ヘルスケアのオーラルケアブランド 「クリーンデンタル」「ブレスラボ」などのブランドマネジャーを務める、"歯かせ"こと、松田一成さんに、正しい歯の磨き方や歯磨きで用いるアイテム選びなどについてうかがいました。日々の歯磨き習慣を見直すきっかけとして、ぜひお役立てください。
■歯磨きは「1回3分」「1日3回」を基本にしたい
━━歯磨きは、1回につき何分くらい、1日何回くらい磨くのがいいのでしょうか。
歯磨きにかける時間は、1回3〜5分くらいがちょうど良いと言われています。「長ければ長いほど汚れが落ちるのでは」と思われがちですが、やり過ぎると歯ぐきを傷つけてしまう可能性があります。
「ながら磨き」をする人もいますが、どうしてもきちんと磨けていない箇所が出てきてしまいますので、できれば鏡を見ながら、3分間はしっかりと歯磨きに集中していただきたいですね。
磨く回数に関しては、厚労省が発表している「令和4年歯科疾患実態調査」によると「1日2回」という人が8割くらいのようですが、私たちとしては、1日3回の歯磨きを推奨しています。やはり、食事の後は歯の間に食べ物のカスが挟まっているので、それを取り除かないとむし歯や口臭の原因になります。
働いていて昼食後の歯磨きが難しい人もいると思いますが、歯を磨かないと口臭に影響するので、コミュニケーションを取ることが多い方は特に、昼も歯磨きをしていただきたいですね。あと、口の中の菌は寝ている間に最も増えるので、夜は1日のうち一番丁寧な歯磨きを心がけてください。
━━歯磨きは食後すぐと、少し時間をおいてから、どちらがいいですか。
「食べた後すぐに磨かないほうがいい」という考えもあるようですが、現在は、食事の後すぐに磨くことが推奨されています。やはり、食べ物のカスはすぐに取った方が、口の中の状態としてはいいですから。
食後の歯磨きが難しい場合は、マウスウォッシュをお使いいただくのもおすすめです。「高速ぶくぶくうがい」といって、口の中で勢い良く水を動かし、水の勢いで歯と歯の間にある汚れを取る方法もあるので、時間がない時はそれだけでもやってみてください。
━━歯を磨く前は、歯ブラシを水で濡らしてもいいですか。また、歯磨き粉はどのくらいの量を付けるのが適切なのでしょうか。
歯ブラシを水で濡らすと、歯磨き粉が泡立ってしっかり磨けた気になってしまうので、基本的には濡らさないほうがいいです。
ただ、歯ブラシを濡らさないまま使うと、歯ブラシの汚れが気になるかもしれませんし、泡立ち自体はけっこう心地良いですよね。ですので、しっかり磨くという前提なら、ある程度泡立ちがあったほうが日々の歯磨きが前向きにできていいのではと思います。
ただし、歯磨き粉を付けた後に水で濡らすと、歯磨き粉の成分が落ちてしまうかもしれませんので、歯ブラシを濡らしてから歯磨き粉を付けてください。
歯磨き粉の量は、全ての歯に薬用成分や殺菌成分が行き渡るよう、たっぷり付けてください。目安としては、一般的な歯ブラシの端から端まで、1㎝または1g程度を推奨しています。しかし、子どもの場合はフッ素の量が気になる方もいると思いますので、大人ほど量が多くならないよう気を付けてください。
■歯磨きは「力を入れ過ぎず、小刻みに、45度」がポイント
━━歯ブラシは歯にどのように当て、力加減はどのくらいにすればいいですか。
歯磨きでは、歯の表面の汚れを落とすのも大事ですが、歯と歯ぐきの間に歯ブラシの毛を入れて汚れを取ることが一番大事ですので、角度としては大体45度くらいにするのが理想的です。
また、力を入れ過ぎるのは良くないです。歯磨きは「45度の角度で」「小刻みに動かす」「力を入れ過ぎない」という3つのポイントを意識してください。力を入れ過ぎず細かく磨くためには、ペンを持つように歯ブラシを持つといいですよ。
━━歯磨き後のすすぎは、しっかりしたほうがいいですか。また、歯磨きの直後にマウスウォッシュを使ってもいいのでしょうか。
すすぎはできる限り少ない方がいいです。すすぎをし過ぎると、歯磨き粉の成分を全て洗い流してしまいますので、なるべく1回のすすぎをおすすめしています。ただ、泡が残るのが気になる方は、2〜3回すすぐのも悪くはありません。
また、マウスウォッシュは、歯磨きをして最後の仕上げとして使っていただくのがおすすめです。マウスウォッシュの後は、基本的にはすすぎをしませんので、薬用成分が口の中に残りやすくなります。
あとは、歯磨きができない時、歯磨き代わりに使えるマウスウォッシュもありますので、職場などでお使いいただくほか、災害時にも非常に役立ちます。歯磨きができなくても、口の中をいったん清潔にできますので、災害時の口腔ケアという観点からもおすすめです。
━━フロスや歯間ブラシを併用する場合、どのタイミングで使うといいですか。
歯磨きの"前"にフロスや歯間ブラシで大きな汚れを落としたうえで歯磨きをすると、薬用成分が効率良く歯と歯ぐきの間に行き渡ります。
「まずはフロスで大きな汚れを落として歯間をきれいにし、その後で歯磨き、最後に洗口液で仕上げる」というのが、歯科医の先生も一般的に推奨されている歯磨きのルーティンです。
■歯周病ケアをしたいなら「殺菌成分」や「抗炎症成分」を含むアイテムを
━━正しい歯磨きのためのアイテム選びについてお聞きしたいのですが、歯磨き粉は何を基準に選べばいいですか。
歯磨き粉は、「何を一番ケアしたいか」が選ぶ基準になります。歯周病やむし歯を予防したいのか、美白ケアしたいのか、あるいは口臭が気になるのか…自分が一番気になる点を考え、その症状に応じた成分が含まれる歯磨き粉を選びましょう。
ただ、私たちとしては歯周病を予防していただくことが、これから先も美味しいものを食べていくために最も大事なケアだと考えています。
歯周病をケアしたい時に注目なのは、歯周病菌を殺菌してくれる「殺菌成分」や歯ぐきの炎症を予防する「抗炎症成分」です。むし歯をケアしたいなら、フッ素が入っているものがいいですね。
また、シーンや時間帯で歯磨き粉を使い分けるのもおすすめです。たとえば、朝外に出る時は口臭予防、昼はコーヒーや紅茶のステインが気になるから美白ケア、夜は歯周病ケア…という具合に。もちろん、同じものを使い続ければその歯磨き粉としての効果を最大化できますので、それもいい使い方です。
━━歯ブラシの選び方や交換の目安を教えてください。
歯ブラシ選びのポイントは3つあります。1つめは「毛」で、歯と歯の間に入りやすい、毛先が細くなっているものがおすすめです。毛の硬さは、硬いと汚れは落ちるけれど歯ぐきを傷つけてしまうし、柔らかいと毛が曲がってしまうので、基本的には「ふつう」がいいでしょう。
2つめは「ヘッド」です。特に女性は顎が小さい方が多いので、小さめのヘッドを使う方が奥歯が磨きやすいです。3つめは、歯ブラシの「柄」の部分です。柄が短い方が磨く時に小回りがきいて奥歯が磨きやすいので、自分の手にフィットする歯ブラシを選んでみてください。
歯ブラシの交換は、1ヶ月に1回が基本です。毛先が開いてくると、歯垢の落ち具合が40%くらい落ちるという実験データもありますので、毛先が開いてくる前に、1ヶ月を目安に交換することをおすすめします。
━━歯と歯の間をケアするには、フロスが最適ですか。
以前弊社の「おくちカレッジ」で実施した調査で、歯科医師・歯科衛生士の方126名に「歯ブラシの次に、ぜひ使ってほしい清掃道具は? 」と質問したところ、1位は「フロス」で55.2%、2位は「歯間ブラシ」で35.2%、3位は「洗口液」で7.2%という結果になりました。
フロスと歯間ブラシは"歯の間の汚れを取る"という目的は同じですが、フロスは歯と歯の間が狭い方でもお使いいただけます。歯ぐきが比較的健康な方は歯間ブラシが通りにくいと思いますので、そういった意味でもフロスは歯間の汚れを取るのに最も役立ちますね。
■歯周病は全身疾患とも関わりが深いのでケアを怠らずに
━━最後に、むし歯や歯周病、歯周病が影響する疾患について教えてください。
歯周病菌は、糖尿病、肺炎、認知症といった全身の疾患と非常に関わりがあることが知られています。
口の中の歯周病菌は、歯ぐきの毛細血管から入り全身をめぐり、悪さをします。また、歯周病菌の出した毒素が全身に回り、たどり着いたところで悪さをすることがあります。妊娠中の女性の場合、それによって早産のリスクが高まる恐れもあるんです。
30代の2人に1人は歯周病の初期症状があるとも言われるほど、私たちにとって歯周病は身近な存在です。歯周病を放っておくと、歯や歯ぐきだけでなく全身も悪くなっている可能性があること、そして、「お口が健康の一丁目一番地」ということをもっと多くの人に知っていただきたいです。