日本の俳優である生田斗真と、韓国で活躍するヤン・イクチュンがW主演を務め、現在公開中の映画『告白 コンフェッション』。原作は『カイジ』の福本伸行氏と、『沈黙の艦隊』のかわぐちかいじ氏という日本漫画界が誇る黄金タッグによる同名コミックで、大学山岳部OBの浅井(生田)とリュウ・ジヨン(ヤン)が登山中に遭難し、ジヨンが過去に2人の同級生の西田さゆり(奈緒)を殺したことを浅井に告白するという展開に。しかし眼前に山小屋が出現し、2人は一命を取り留める。死を覚悟した“告白”が引き起こす、山小屋内で進む2人の一夜を描いている。

今回は、W主演の生田とヤンにインタビュー。撮影中のエピソードや刺激を受けたこと、そして「日本と韓国の文化が混ざり合って面白いことをしたい」というビジョンについてなど、話を聞いた。

  • 生田斗真、ヤン・イクチュン

    左から生田斗真、ヤン・イクチュン 撮影:泉山美代子

映画『告白 コンフェッション』でW主演となった生田斗真&ヤン・イクチュン

――サスペンス映画でありつつ、ユーモアもある映画になっているのかなと思います。

生田:2人が雪山で遭難して、ある告白をきっかけに殺し合いみたいなことになっていくんですけど、怖ければ怖いほど、笑えてくることってあるじゃないですか。昔のゾンビ映画とかも、ゾンビがものすごく速く走ってくるのが怖いけど、ちょっと笑える。山下監督は当初からそちらを狙って作りたいとおっしゃっていて。だから、イクチュンさんが階段からゴロゴロゴロなってくるところとか、首がボキッとなるところとか、「怖いけど、ちょっと笑える」という絶妙なバランスというのは山下監督ならではなのかなと思います。

  • 生田斗真
  • 生田斗真

ヤン:山下監督ってすごく純粋な穏やかな感じの外見なんですが、作品に対しては“頑固さ”があるんですよね。なので、自分がこれは撮りたいと思った1シーン1シーン、こういうふうに表現したいと思ったところに至るまで頑固さが発揮されていて、山下監督ならではのイメージを作り上げているのかなと思います。

生田:期間的には3週間ぐらい。ほぼ同じセットで撮ってるので、例えばイクチュンが階段を落ちるところまでやっていて、次の日の朝にまた同じところへ行って、落ちて来たところからやって……と、ずっと同じ怖さをキープしなきゃいけない。それが大変でした。朝から「ああああ!!」とやって、「お疲れ様でした~」と帰って、次の日にまた「ああああ!!」というところから始まるから(笑)

ヤン:(日本語で)喉が痛いです!!(笑)

  • ヤン・イクチュン
  • ヤン・イクチュン

――お二人ともずっと叫んでますよね。

ヤン:僕はずっと喉を使って叫んでいたので、早く喉がかれてしまいました。生田さんもずっと咳き込む演技をされていたので多分同じように痛かったと思うんですが、本当に終始喉が痛かったです。テイクを重ねるというよりカット割りでの撮影が多かったですが、大切なシーンは監督も制作スタッフの方たちも長い時間をかけて撮らせてくださいました。やはり大切なシーンは時間をかけないといけませんので。

――ちなみに、作中のように友達同士で同じ人を好きになってしまう状況についてはどう思いますか?

ヤン:三角関係ですか? 韓国語で“サンガクガンゲ”ですね。

生田:一緒だね。

ヤン:似ています。三角関係というのは、本当に大変なものです。大学時代に1度経験があるんですが、大変です。人間のすることじゃないです。

生田:(笑)

日本と韓国の文化を織り交ぜるような作品に挑戦したい

生田斗真、ヤン・イクチュン

――今アジア映画が盛り上がっているタイミングでもあります。その中で今作がどのように受け入れられてほしいですか?

生田:韓国の俳優と日本の俳優が同じ作品に出るというのも面白い試みだと思いますし、日本や韓国だけじゃなくて、たくさんの国の方々にアジア映画の面白さが広がっていってくれると嬉しいと思います。どの国でもきっと面白く観ていただけると思うので、そこは期待しています。

ヤン:本当に、誰が観ても楽しんでいただけると思うので、この作品が健全に世界で評価されてほしいと思っています。アジア映画であれアジア文化であれ、国や人種にとらわれず、映画は映画として評価していただければうれしいです。とても独創的な映画になっているので、その点を評価してもらえればと。

――今回お二人にとってチャレンジングだったこともあったと思うんですが、また今後チャレンジしたいなと意欲が湧いたこと、刺激になったことを教えていただけますか?

生田:イクチュンさんのお芝居をずっと間近で見て一緒にお芝居をさせていただいて感じたんですが、本番の時の爆発力や集中力が素晴らしいんです。オフの時はスタッフで談笑してるし、力が抜けてるし冗談も言う。だけどセットに入ると本番に向けてだんだん役に入っていく感じがすごい。才能や感性もあると思うんですが、努力して手に入れたものなんだなと感じて、本当に刺激的でした。いい影響をたくさんもらえたなと思います。

  • 生田斗真、ヤン・イクチュン

ヤン:僕はチャレンジしたいこととして、もし可能であれば、日本で作品を撮ってみたいんです。昔から考えていたことなんですが、日本と韓国の文化が混ざり合ってちゃんぽんになってほしい。数年に1回とかではなく、定期的に文化が混ざり合っていくことによって、シナジー効果も上がってくると思うんです。日本は長い間の文化の蓄積があって、文化遺産もたくさん残っています。韓国は近代に入ってから、特に2000年代以降様々な新しい文化が動き出していますので、2つが混ざると両国にとって楽しい文化が生まれて、色々なコンテンツもできてくるでしょう。生田さんはこれから韓国の映画にも出てほしいです。そして韓国だけではなくて、他の国の作品にも出演して、挑戦してもらえたらうれしいなと思ってます。『アベンジャーズ』とか(笑)

生田:『アベンジャーズ』!?(笑)

  • 生田斗真
  • ヤン・イクチュン

――文化の話が出てきましたが、互いの文化について注目していることなどはありますか?

生田:イクチュンがお酒好きで、「どういうところで飲んでるの?」と聞いたら、コンビニの前で飲んでいるそうなんです。韓国ではコンビニの前にテーブルがあって、お店で買ったものをそのままそこで飲むそうで、それがすごい好きだというので、いつか韓国のコンビニの前で一緒に飲みたいな。

ヤン:行きましょう! 近所の仲のいい人たちと一緒に、野外で安く、気楽にカジュアルに飲みたい時にいいんですよ。楽しいですし、暑い日でも夜になると少し涼しくなるので、外の風を浴びながら、缶ビールを開けて飲むと雰囲気があってすごくいいですよ。

――ヤンさんから見て日本の文化についてはいかがですか?

ヤン:私は昔から日本の文化には関心が高くて、音楽とか映画とかアニメーションとか幅広い文化に惹かれ、すでにたくさんのものを吸収している状態です。長い間日本の文化に触れる経験もしてきたんですけど、今、韓国の大衆文化もはずみがついている感じがしますし、日本の文化と混ざり合って何か楽しいことができないかと試したい気持ちが強くて。日本と韓国の文化を織り交ぜるような形で、文化人や俳優さん達とコラボするような作品に挑戦してみたいと思っています。メジャーはメジャー同士でたくさんのことをしていると思うんです。でもそれ以外にアンダーグラウンドだったり、個人同士で作っているものだったりもあると思うので、そういう試みにもマスコミの皆さんが目を向けていただけたらうれしいです。

■生田斗真
1984年10月7日生まれ、北海道出身。2010年公開の荒戸源次郎監督作『人間失格』で映画初出演、初主演にして第53回ブルーリボン賞新人賞を受賞。以降、守屋健太郎監督作『シーサイドモーテル』(10年)、『源氏物語 千年の謎』(11年)、『僕等がいた前篇/後篇』(12年)、『脳男』(13年)、『土竜の唄』シリーズ(14、16、21年)、『予告犯』『グラスホッパー』(15年)、『秘密 THE TOP SECRET』(16年)、『彼らが本気で編むときは、』『先生!、、、好きになってもいいですか?』(17年)、『友罪』(18年)、『湯道』『渇水』(23年)など数多くの作品で主演を務める。主演舞台である2024年劇団☆新感線44周年興行・夏秋公演 いのうえ歌舞伎『バサラオ』上演を控える。

■ヤン・イクチュン
1975年10月19日生まれ、ソウル出身。2009年の長編映画監督デビュー作『息もできない』で、監督のみならず主演・製作・脚本・編集を手がけ、ロッテルダム国際映画祭タイガー・アワード(グランプリ)、東京フィルメックスの最優秀作品賞(グランプリ)と観客賞をはじめ、世界各国で25を超える賞に輝く。以降、俳優としてヤン・ヨンヒ監督作『かぞくのくに』(12年)をはじめ、日本でも『夢売るふたり』(12年)や、『中学生円山』(13年)などに出演。17年の『あゝ、荒野』2部作では菅田将暉とともにボクサーを目指す若者役でW主演を務め、大きな話題を呼んだ。近年では日本でも大ヒットしたNetflixオリジナルドラマ『地獄が呼んでいる』(ヨン・サンホ監督)に出演している。