女優の上野樹里が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、26日(通常と異なり13:40~ ※関東ローカル)に放送される『子育てシェアハウス始めます~うちの子と暮らしませんか~』。赤の他人同士が一つ屋根の下で暮らす「子育てシェアハウス」の人々を追った作品だ。

この生活を見て、「新しさと懐かしさが同居しているような感じでした」と捉えた上野。子育てという目的に限らず、SNS時代だからこそのコミュニティに可能性を感じたという――。

  • 『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した上野樹里

    『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した上野樹里

母一人での子育てに不安を感じ…「1歳児と暮らしませんか?」

2023年9月、SNSでの「1歳児と暮らしませんか?」という呼びかけに応じ、一つ屋根の下に集まった“赤の他人”同士の不思議な共同生活が始まった。発起人は、夫と一人息子と暮らす茉里依(まりい)さん(27)。夫とはマッチングアプリで知り合い、夫婦別姓を選択するため2年前に事実婚をし、ほどなく息子を出産した。

しかし、夫が育休を終えて職場復帰することになった時、母一人での子育てに不安を感じる。そこで呼びかけたのが、他人と子育てをシェアする「子育てシェアハウス」だった。

ゲストハウスも兼ねるこの家には、SNSを通じて、抱える背景も国籍もバラバラな人間が集まってくる。茉里依さんの思いに賛同した知人の小説家、休職中の教師、世界を放浪中のベネズエラ人家族、ウクライナから来た母子……自分らしく生きるために選んだ「新たな家族のカタチ」を見つめていく。

やっぱり人にしかできないものがある

このシェアハウスに上野が感じたのは、「時代の進化」と「懐かしさ」という一見相反するものだった。

「コロナでソーシャルディスタンスと言われるようになった余韻で、今も建物の入口に消毒液が置いてあったりしますし、私がこの前出演した『隣人X』という映画も異質な存在に不安を抱くという作品でしたが、そういうことがあったにもかかわらず、SNSをうまく利用して、こんなに人々が速い速度で出会って一緒に暮らすというのに、新しさを感じました。

 それとともに、昭和の風景じゃないですが、おむつを取り替えるのを手伝ったり、作ってくれたご飯を頂いたり、協力し合ってともに生きているのが、温かいなと思いました。家の中って落ち着く場所でもあるけど、自分たちの世界に支配しやすい空間でもあるじゃないですか。でも、いろんな人が一緒に住んでミックスされると、夫婦がちょっと不穏な空気になったときに上の階から笑い声が聞こえてきたら、それが心の救いにもなるし、逆に胸に刺さってつらくなるかもしれない。そんなドラマが一つ屋根の下で毎日あるのを見ると、これだけAIとかいろんな技術が発達しても、やっぱり人にしかできないものがあると感じられたんです。特に子育てなんてそうですよね。だから、新しさと懐かしさが同居しているような感じでした」

コミュニティに懐かしさを覚えながら、海外の人たちまで受け入れるところに今の時代も感じ、「言葉の壁もあるし、メキシカンな料理を作って“お米ないの!?”ってなるかもしれないけど(笑)、このシェアハウスは相手がもてなしてくれる気持ちを受け取り合って動いているので、見ていて気持ちがいいなと思いました」という。

  • 子育てシェアハウスの様子 (C)フジテレビ

最近の社会の傾向と逆行するようなスタイルも、魅力的に感じた様子。

「泥棒に入られないように、セキュリティや防犯カメラを付けて、何だか気づいたら牢屋の中に住んでいるみたいな世界もあって、それは本当に幸せなのか、というふうに感じたりします。SNSでも一番いい部分を切り取ってみんなに見せているだけでは、どんどん苦しくなる人もいるかもしれない。でも、このシェアハウスはいろんなところから来た人たちが混ざり合って、相手に隠さない人間臭さがありますよね。だから、いろんな境界線を越えている感じがして、重い空気もどこまでも軽くしていけるんだろうなと思いました!」

このシェアハウスが成立する背景には、中心にいる茉里依さんと夫のバランスの良さもあると感じた。

「茉里依さんは自分の弱さやダメなところと向き合って、悔し涙を流しながらも旦那さんに言われたことをちゃんと受け止めていました。でも、市民ミュージカルに参加したり、基本的にはめちゃめちゃやりたいことをやる人で、陽気な子どもみたいな感じ(笑)。それが、理詰めで考える旦那さんにはパートナーとして魅力的な部分に映っているように見えて、“すごくバランスいいじゃん!”と思いました。細かい問題も小出しにして解決しているし、そんな2人がシェアハウスの真ん中にいるから、成り立っているんだなと思いました」