藤井聡太竜王・名人がその強さゆえに打ち立てた記録には驚かされるばかり。記録達成には、棋力だけではどうにもならない日程調整なども関係するが、まるで将棋の神が彼を優遇しているかのように、なぜか彼は特別な場面に何度も恵まれ、そしてその期待に応えるように、ことごとく相手を撃破してきた。
本稿では2024年5月8日に発売された、『将棋のすごい記録大全 大山、中原、羽生、藤井―天才たちが打ち立てた奇跡の記録』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)に収録されている、藤井聡太竜王・名人が持つ様々な記録をまとめた「藤井聡太の記録をひたすら並べてみた!」より、一部抜粋してお送りする。それではデビューから現在に至るまで、様々な記録を塗り替えてきた藤井聡太竜王・名人の輝かしい記録の数々を振り返ろう。
超がつくほどのスピード出世
(以下抜粋)
史上最年少の14歳2カ月で、四段昇段を果たした藤井の伝説は幕を開けた。デビュー戦の相手は加藤一二三九段。奇しくも自身が昇段の最年少記録を次々と塗り替える相手との対戦は、天の配剤なのだろうか。
いきなり29連勝とデビューから負けなしの連勝新記録を打ち立てると、昇段では加藤一二三九段を、タイトル数では羽生善治九段を抜いて、記録を次々と塗り替えていく。
昇段ペースをまとめると、四段→五段には1年123日、五段→六段には16日、六段→七段には90日、七段→八段には2年94日、八段→九段には31日と、超がつくほどのスピード出世。ちなみに五段時代はわずか2週間で、その間には公式戦を5局しか指しておらず、順位戦B級2組昇級で、六段に昇級している。
初タイトル挑戦も最年少記録を更新した。屋敷伸之九段の17歳10カ月がそれまでの最年少記録で、藤井もその時期が近づいてきつつある中で、対局日程などの兼ね合いもあり微妙だったが、ギリギリ間に合った。棋聖戦挑戦者決定戦で勝ち、わずか4日の差で31年ぶりに記録を塗り替えた。その後の五番勝負で渡辺明棋聖(当時)から初タイトルを奪取し、八冠ロードへの幕開けにつながってくる。
タイトル数については、羽生とのデッドヒートになったが、すべてにおいて記録を更新している。2冠〜5冠までは約3年早いペースで、冠数を着実に増やしている。羽生は全冠制覇の七冠には25歳で到達したが、最後の王将位獲得には七番勝負を3―4で敗れて、1年足踏みしたのは有名な話。その翌年に偉業を達成しているが、藤井には停滞というものがない。六冠、七冠とまるで通過点のように冠数を増やすと、ついに21歳で永瀬拓矢王座から王座を獲得。全冠制覇を羽生より4年も早い若さで達成したのである。
八冠のその先には
初タイトルからわずか3年後に、8つのタイトルを独占したわけだが、すべてのタイトルが最年少獲得だったわけではない。竜王と棋王は羽生の獲得が、わずかに早かった。 詳細を記すと、藤井の竜王獲得は19歳3カ月と25日、羽生は19歳3カ月と0日で、25日の差しかない。また棋王は獲得は20歳8カ月で、羽生とは3カ月の差で、この2タイトルについては最年少とはならなかった。
タイトル戦連勝記録に目を移すと、4月現在の藤井は、名人戦と叡王戦の防衛戦の真っ最中だが、連勝記録は2位の大山康晴十五世名人の19連勝を抜いて、21連勝中でもちろん1位である。この先、いったいどこまで記録を伸ばすのか。連勝記録が途絶えた時点で、それは八冠の一角が崩れることを意味するだけに、ファンにとっては大きな関心事になるだろう。
ほとんどの最年少記録を藤井が更新して、今度はそれを抜く棋士が現れるかだが、さすがに藤井以上の若さで、上回る記録が出ることは、現実的には難しいだろう。
(藤井聡太の記録をひたすら並べてみた―最年少から珍記録までを深掘り―)
将棋界に輝くすごい記録を総まとめ!
2024年5月8日に発売された、『将棋のすごい記録大全 大山、中原、羽生、藤井―天才たちが打ち立てた奇跡の記録』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)は、藤井聡太竜王・名人が持つ様々な記録をまとめた「藤井聡太の記録をひたすら並べてみた!」のほか、年度最高勝率、最年少永世称号獲得などの記録を持つ中原誠十六世名人へのインタビュー、佐藤康光九段インタビュー「54歳の新人棋士」、当時の名シーンとともに数々の記録を紹介する「将棋界のすごい記録!」など、読み応えのある一冊となっている。
『将棋のすごい記録大全 大山、中原、羽生、藤井―天才たちが打ち立てた奇跡の記録』
発売日:2024年5月8日
定価:1,518円(本体価格1,380円+税10%)
判型:B5判112ページ
発行:日本将棋連盟
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