日本テレビ系ドラマ『花咲舞が黙ってない』(毎週土曜21:00~)。平成版を立ち上げたプロデューサーから引き継ぎ、今田美桜、山本耕史ら新たなキャストともにこの大きなタイトルに挑んでいるのは、『ブラッシュアップライフ』のヒットが記憶に新しい小田玲奈プロデューサーだ。前作で築かれた『花咲舞』というブランドに、新たな要素を加えて令和版の制作に臨んでいるという――。

  • (左から)山西惇、山本耕史、今田美桜=『花咲舞が黙ってない』5月4日放送の第4話より (C)日テレ

    (左から)山西惇、山本耕史、今田美桜=『花咲舞が黙ってない』5月4日放送の第4話より (C)日テレ

亡き前任プロデューサーの「血を受け継ぐものとして」

前作『花咲舞が黙ってない』には携わっていなかった小田氏。今作を担当することになったきっかけは、今や国内外で数々の賞を獲得するヒット作『ブラッシュアップライフ』(23年1月期)だった。

主人公・近藤麻美(安藤サクラ)が3周目の人生で日本テレビに入社し、ドラマ制作に配属された中で、劇中に出す実在の作品を考えたときに、日テレを代表するドラマが分かりやすいこと、そしてミタコング(鈴木浩介)を痴漢のえん罪から救う(※)時期に放送されていたドラマとして、『花咲舞が黙ってない』に白羽の矢が立った。

(※)…中学時代の教師・三田先生、通称ミタコングは、麻美にとって授業中に正論をぶつけるも理不尽に言い返され、ゲームボーイアドバンスの『逆転裁判2』を取り上げられるなど嫌な思い出しかないが、社会人になって電車内で痴漢の容疑をかけられているところに遭遇。麻美が盗撮していた動画が決め手となってえん罪から救出するのが定期ミッションとなった。

そこで、原作の池井戸潤氏に映像使用の許可を取ることになるが、『花咲舞が黙ってない』シリーズを担当していたプロデューサーの加藤正俊さんが亡くなっていたため、小田氏が直接オファー。すると、即日で快諾されたという。

そんな縁もあって、日本テレビで再び『花咲舞が黙ってない』をドラマ化するにあたり、小田氏がプロデューサーに就任。「亡くなる直前に『恋です! ~ヤンキー君と白杖ガール』や『悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?』で加藤さんと一緒にやっていた私が、多少は血を受け継ぐ者としてやらせていただくことになりました」と動き出した。

  • (C)日テレ

変わらぬ劇伴音楽「もらわない手はない」

前作からキャストを一新して9年ぶりに復活するにあたり、どのような意識で臨んでいるのか。

「加藤さんが作ってきた古き良きテレビドラマの良さは守りつつ、新しいものを付けることで、どうやって今の人がよりよく見てくれるものにするのかというのが、私がこのドラマをやる意義、チャレンジだと思っています。なので、無理に全部新しくするということではなく、つないでいきたいものは大切に残しながら作っています」

“守るもの”の分かりやすい例が、作品を彩る劇伴音楽だ。「『花咲舞』の劇伴は素晴らしい曲がいっぱいあって、例えば誰かが活躍するときに、いろんなテレビ番組でいまだに使われているんです。『水戸黄門』も『ゴジラ』も、キャストが変わろうがテーマ曲は変わらないですよね。それくらい力のある曲だと思いますし、当時から有名な劇伴作家である菅野祐悟さんと、今や『silent』(フジテレビ)などもやられて業界で大人気の得田真裕さん、この2人の音楽をもらわない手はないです」と引き継いでいる。

一方で、前作で生瀬勝久が演じた、舞たちに立ちはだかる役どころが、菊地凛子演じる昇仙峡玲子という女性になったことで、「今までになかった女性の敵に合う、新たな曲を作っていただきました」とバリエーションが増している。

  • 菊地凛子 (C)日テレ

「女性の働き方」を第1話のテーマにした理由

“新しいもの”としては、第1話で描かれた「女性の働き方」というテーマが挙げられる。

「銀行というところは、もちろん時代を経てアップデートされているところはたくさんあると思いますが、他の業界よりも旧態依然として残っている部分が多いものがあるといいます。そこに花咲舞が切り込んでいくというテーマが全体としてあるのですが、それを凝縮したものとして“女性の働き方”を1話でやりたいと思いました」

第1話は、女性行員(栗山千明)が支店長(迫田孝也)に抑圧される姿が描かれていたが、冒頭で花咲舞が人事異動の辞令を交付する支店長から「本部でもアシスタントとして頑張って」と言われてすんなり受け止めていたと思いきや、終盤で支店長に物申す際に「私に異動通知を渡すとき、“本部でもアシスタントとしてがんばって”とおっしゃいました。女性行員は一生男性行員のアシスタントだと思ってるから、そういう言葉が出てくるんですよね?」と迫っており、舞が“女性の働き方”について強く意識を持っていることを印象付けた。

ここ数年、自身の子育てやコロナ禍、新たな価値観を持ったスタッフの参加などによって「働き方」について改めて考えるようになったという小田氏。3月に放送されたスペシャルドラマ『テレビ報道記者 ~ニュースをつないだ女たち~』も、「女性の働き方」を1つのテーマとして制作した。

「テレビ業界も女性が増えてきていますし、『花咲舞』のチームも女性が多いのですが、カメラマンさんや照明さんは男性で、アシスタントが女性ということがまだまだあるんです。このアシスタントの子たちが、ちゃんとカメラマンや照明さんになれるために、私としても映像業界の働き方を変えていかなきゃいけないんだと思いながら、『花咲舞』を作っています」

  • 小田玲奈プロデューサー

●小田玲奈
1980年生まれ、東京都出身。日本大学芸術学部卒業後、03年に日本テレビ放送網入社。『ズームイン!!SUPER』『メレンゲの気持ち』『アナザースカイ』『有吉ゼミ』など情報番組・バラエティ番組を担当した後、『家売るオンナ』(16年)で連続ドラマを初プロデュース。その後、『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』『知らなくていいコト』『生田家の朝』『恋です! ~ヤンキー君と白杖ガール』『悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?』『ブラッシュアップライフ』『テレビ報道記者 ~ニュースをつないだ女たち~』『花咲舞が黙ってない』などを担当する。