NHK連続テレビ小説『ブギウギ』での羽鳥善一役が記憶に新しい俳優・草なぎ剛。5月17日には、寡黙で実直な武士を演じた主演映画『碁盤斬り』が公開を迎える。「僕の代表作になった」と胸を張る草なぎにインタビュー。本作での役作りや演じることへの思いを聞くとともに、経験を重ねてたどり着いた「適当が一番」という生き方に迫った。

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    草なぎ剛 撮影:蔦野裕

白石和彌監督との初タッグに安心感「慎吾ちゃんのおかげ」

『孤狼の血』などの白石和彌監督がメガホンをとった本作は、ある冤罪事件によって娘と引き裂かれた男が、武士としての誇りを賭け仇討ちに挑むリベンジ・エンタテイメント。冤罪に貶められた浪人・柳田格之進を草なぎ剛、格之進の一人娘・お絹を清原果耶が演じた。

白石監督とは今回が初タッグとなった草なぎ。格之進という役について監督と話し合うことはなかったものの、監督の中にある明確な格之進像を感じ取ることができたという。

「監督の中にはっきりとしたものがあって、僕なりにそれを感じ取って演じられたのかなと。当たり前ですけど台本にセリフが書いてあるので、それを言うという感じでやりました(笑)」

『凪待ち』で白石監督とタッグを組んだ香取慎吾から話を聞いていたこともあって、最初から安心感があったと明かす。

「白石監督は慎吾ちゃんと友達なので、安心してできました。慎吾ちゃんから『つよぽんもいつか一緒にできたらいいね』と言われていて、僕も意識があったので、慎吾ちゃんのおかげだったのかなと。白石監督も慎吾ちゃんから剛くんのことを聞いているよという感じがあり、役についてほとんど話さなくても通じ合えているところがありました。年も一緒なので、監督と遊びながらできた感じがしています」

草なぎが演じた格之進は、冤罪に貶められ復讐に燃える武士。普段のお茶目な草なぎとは別人のような、気迫あふれる姿を見せている。

「清原さんや國村(隼)さんとの掛け合いの中でどんどん楽しくなって、そこに白石監督のグルーヴ感というか、こんな角度から撮るんだとか、周りに乗せられて演じることができました」

完成した作品を見て、「俺すごいことやってるな!」「俺こんなことやってたの!?」と驚いたという。

「役に集中して入り込んでいたのかなと。こんなことやっていたんだなと思ったのは人生で一番かもしれない。自分で見て『俺かっこいいじゃん!』『迫力すごい』と思って、『生まれた時代を間違えちゃったかな』と(笑)。江戸時代に生まれたらもっと人気が出たんじゃないかなと思いました。自分のクレジットが出た時に、『ミッドナイトスワン』の時は放心して立てなくて、今回は『俺、生まれた時代間違った』というのが最初の感想です(笑)」

また、笠姿にご満悦の様子。「似合っているなと。笠が似合う人ってあんまりいないと思うんですけど、馴染んでいてかっこいいなと思ったので、令和でも笠かぶろうかな。1周、2周回って笠が流行るかもしれないですし、2024年は“笠剛”でいこうと思います(笑)」と満面の笑みを見せた。

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目指すは“つよヴィンテージ”「経験を重ねてにじみ出てくるものがある」

そして、「僕は今の顔が一番好き。昔も嫌いではなかったけど、年齢を重ねて自分の顔が好きになりました」と語る草なぎ。

「ヴィンテージが好きで、デニムもギターもちょっと汚れたり枯れたりしわが入ったりしているものが大好き。若い時からなぜかそういうものが好きで、最終的に自分がヴィンテージになりたいと思っているんですけど、今回の格之進を見た時に、味が出ていい感じになっているなと手応えがあり、うれしかったです」

積み重ねた経験や生き様が顔に出るというが、草なぎもそう感じているという。

「(愛犬の)クルミちゃんと出会ったことで母性が目覚めて、清原さんのことを愛おしく思う父の気持ちが出たり。人間は一つ一つ経験を重ねて、特に失敗を重ねる中で顔ににじみ出てくるものがあるのかなと思います」

そして、「私は剛くんなので“つよヴィンテージ”を目指していければ」と笑顔で宣言。「うれしいことや悲しいこと、どちらもありますが、その時その時、自分に素直に生きることが自分の未来の顔を作っていくことなのではないかなと思います」と語った。