大注目の現代アートから、うっとりしてしまう西洋絵画や工芸作品、今しか観られない貴重な日本美術の品々など、今日も各地の美術館・博物館で、見逃せない展覧会が数多く開催されています。2023年は400件近くの展覧会に足を運んだ、アートとカルチャー、そして美味しいものが好きすぎるアート・ライターが、いま観てほしいおすすめの展覧会と、寄り道して楽しみたいカフェが魅力の美術館をご紹介します。都内のおでかけの参考にしてください!

  • 東京都庭園美術館 本館2F ベランダ

■No.001アーティゾン美術館+ミュージアムカフェ

まず最初にお薦めしたいのは、東京・京橋にあるアーティゾン美術館です。

オフィスビルと商業施設が混在する京橋は、 銀座や日本橋からも徒歩圏内で、落ち着いた雰囲気を持つエリア。実はアートギャラリーや老舗の古美術店が数多くある、知られざるアートな街でもあります。

  • アーティゾン美術館 外観

アーティゾン美術館は、1952年に開館したブリヂストン美術館を前身とし、2020年1月、現在のスタイリッシュな建築が美しいミュージアムとしてリニューアルオープンしました。印象派と日本の近代洋画を中心に、古代から現代アート まで、なんと約3,000点もの充実したコレクションを持つ、歴史あるミュージアムです。

日本の美術館では初開催! 彫刻家ブランクーシの展覧会

  • 「ブランクーシ 本質を象(かたど)る」展 エントランス

コンスタンティン・ブランクーシ(1876~1957)は、ルーマニア出身の彫刻家。20世紀における彫刻の新たな表現を開拓し、後世の様々な美術作家に影響を与えた存在です。ただ、それほど有名な彫刻家なのに、日本の美術館で展覧会が開催されるのは、なんと今回が初めて。

なぜなら、彼の作品は世界中の美術館に点在していて、一つの美術館に集めて展示することが非常に難しいからです。しかも、ブランクーシがアトリエを構えていたフランスではなく、日本で開催される、ということも本当にレア! 二度とないかもしれない貴重な機会です。

  • コンスタンティン・ブランクーシ「雄鶏」(1924年/1972年鋳造)とアトリエの写真

  • 会場風景

本展は、国内外から集めた彫刻約20点をメインに、絵画やドローイング、写真など、約90点もの作品を通して、ブランクーシの創作活動全体を紹介しています。

さらに、ブランクーシ本人が撮影した自身や作品の写真、アトリエでの制作風景を収めた自撮りの映像も上映。彼が日々どのように作品を作っていたかがよく伝わってきます。

  • 会場風景

  • 会場風景

ちなみにこの展覧会、作品の横にタイトルや解説の文章が表示されていません。彫刻ってどうやって鑑賞したらいいの?と、戸惑うかもしれませんが、難しく考えなくても大丈夫。 かたちや色、素材、見たそのままの印象など、いろんな視点で作品そのものを観察して楽しんでほしい、という美術館の想いが込められた演出です。きっと思いがけない発見や気づきがあるかもしれませんよ。

「ブランクーシ 本質を象(かたど)る」展は7月7日(日)まで開催しています。

  • 会場風景

目にも美味しいミュージアムカフェで余韻を楽しもう

アーティゾン美術館のミュージアムカフェは、まるで海外のラグジュアリーレストランのような、開放的で洗練された空間。

季節に合わせた食材や、うつわにまでこだわったお食事やスイーツは、時間帯や季節ごとに何度でも訪れたくなるはずです。展覧会を開催している金曜日(祝日をのぞく)は、ディナーメニューも楽しめますよ。

■No.002 TOKYO NODE (東京ノード)とTOKYO NODE CAFE

次にご紹介するのは、虎ノ門ヒルズステーションタワーの高層階に位置するTOKYO NODE(東京ノード)。ギャラリーやレストラン、イベントホールなどで構成された全く新しい情報発信拠点として、2023年10月にオープンしたスペースです。

ため息が止まらない!「ティファニー・ワンダー」展

こちらで開催中のエキシビション「ティファニー ワンダー 技と創造の187年」は、あのアメリカのラグジュアリージュエリーブランド・ティファニーの展覧会です。

  • エキシビション「ティファニー ワンダー」技と創造の187年 エントランス(TIFFANY & CO. Japan Inc.)

数々の名作ジュエリーを世に送り出し、世界中の女性に愛されてきたティファニー。そのブランドの起源や伝統を辿ると共に、300点近い希少な未公開作品を間近に楽しめる、本当に「ワンダー」な空間が広がっています。

  • ルーム3 「ティファニーの起源」展示風景(TIFFANY & CO. Japan Inc.)

  • ルーム3 「ティファニーの起源」展示風景(TIFFANY & CO. Japan Inc.)

例えば、ルーム4 「想像の宝庫 ジャン・シュランバージェ」では、ジュエリーデザイナーのシュランバージェが手がけた傑作「バード オン ア ロック ブローチ」をはじめ、息をのむほど美しいリングやネックレス、ブローチ、ブレスレットなどが贅沢に展示されています。

  • ルーム4 「想像の宝庫 ジャン・シュランバージェ」展示風景(TIFFANY & CO. Japan Inc.)

また、ティファニーのアトリエに勤務するジュエラーがデモンストレーションを実施していて、「バード オン ア ロック ブローチ」に宝石をセッティングする様子などを間近に見ることも。ジュエラーの方々との会話も楽しんでみてください。

  • ルーム4 「想像の宝庫 ジャン・シュランバージェ」展示風景

そして、ティファニーと日本の関わりを紹介する空間では、ジュエリーデザイナーのエルサ・ペレッティが、日本の伝統的な素材である竹や漆、それらを扱う職人の技にも魅せられていたことを紹介しています。

“オープンハート”や“ボーンカフ”など、アイコニックなジュエリーを多数手がけてきたデザイナーのクリエイションの源に、日本の素材やデザインがあったなんて、とっても嬉しくなりますよね。

  • ルーム5 「日本への愛」展示風景(TIFFANY & CO. Japan Inc.)

展覧会を締めくくる、「ザ ティファニー ダイヤモンド」は、圧巻の一言! 1877年、南アフリカで発見されたという、128.54カラットものイエローダイヤモンドは、世界最大級の宝石です。その周りには、無数のダイヤモンドをまとって羽ばたく5羽の鳥のモチーフがあしらわれ、本当に華やか。2,000時間以上をかけて製作されたという伝説的な至宝を、ぜひ間近でじっくり楽しんでください。

  • ルーム10 「ザ ティファニー ダイヤモンド」展示風景(TIFFANY & CO. Japan Inc.)

10のお部屋それぞれが、趣向をこらした光と音で彩られていて本当に美しい上に、テーマごとにさりげない香りの演出まで。夢のように美しい展覧会の光景は、間違いなく記憶に残るはずです。

なお、展覧会の音声ガイドが、ティファニー公式アプリから無料で楽しめます。美しい写真の数々や、展覧会の会場マップなど、展覧会を観終えた後も楽しめるコンテンツが多数あるので、あわせてチェックしてみてください。

エキシビション「「ティファニー ワンダー」技と創造の187年」は、6月23日(日)まで開催中です。

  • 会場風景(TIFFANY & CO. Japan Inc.)

東京タワーが間近に! TOKYO NODE CAFE

展覧会を観終えたら、目の前に東京タワーと開放的な景色が広がるTOKYO NODE CAFEにも立ち寄って、ほっとひと息。虎ノ門ヒルズステーションタワー8Fに位置し、時間帯を問わず、美味しいフードとドリンクが楽しめるカジュアルなカフェ&バーなので、ゆったりと展覧会の余韻を楽しんでくださいね。

■No.003 東京都庭園美術館+カフェ

最後にご紹介するのは、東京・目黒にある東京都庭園美術館です。

都心とは思えない開放的な庭園と、1933年に建設されたアール・デコ建築が美しい旧朝香宮が、美術館としてオープンしたのは1983年のこと。現在は、国指定の重要文化財という特性も兼ね備え、歴史的な建物の活用と、保存を両立させる美術館としても知られています。

  • 東京都庭園美術館 本館エントランス

企画展「開館40周年記念 旧朝香宮邸を読み解く A to Z」

現在開催中の企画展「開館40周年記念 旧朝香宮邸を読み解く A to Z」は、館内をくまなく巡りながら、アルファベットになぞらえた美術館にまつわるキーワードを読み解く、という内容。

キーワード一つひとつに、デザインの異なる解説カードがつくられていて、思わず全部集めたくなる素敵さ! もちろん持ち帰ることが可能です。

  • 本館3F ウインターガーデン

  • 全てのカードを集めると、こんなコレクションが完成します!

庭園美術館では毎年、建物や空間そのものを鑑賞する「建物公開展」が開催されていますが、今年はひと味違います。普段ならそれぞれの部屋に置かれている展示ケースや家具、調度品などが一切置かれていない、“素”の状態をじっくり楽しむことができるのです。

  • 本館1F 大食堂

すでに何度も美術館を訪れたことのある方でも、細かなデザインの理由や、見たことのない床、立ち入ったことのないスペースにきっと驚くはず。また、普段は作品保護のため締め切っているカーテンが、この期間だけ開け放たれるので、訪れる日の天気や時間帯によって、空間の印象ががらっと変わって見えるでしょう。

  • 本館1F 階段下化粧室に展示された 須田悦弘「椿」(2024年)作家蔵

さらに本展には、ゲストアーティストとして、木彫で制作した草花によるインスタレーションを行う現代美術家の須田悦弘(すだ よしひろ)と、土を素材とした造形で知られる伊藤公象(いとう こうしょう)が参加。館内や庭園で行われている展示にもぜひ注目してください。

  • 東京都庭園美術館 本館エントランス

建物の中を巡ったら、庭園の散策も楽しんでください。庭園から眺める本館の建築は、改めて美しい建物だなぁ、としみじみしてしまうかも。

「開館40周年記念 旧朝香宮邸を読み解く A to Z」は、東京都庭園美術館で5月12日(日)まで開催中です。

新緑の季節にぴったりのコラボメニューも楽しんで

東京都庭園美術館には、季節の景色を楽しみながら過ごせる飲食店が2つあります。

庭園レストラン「コモド」は、イタリアンとフレンチが融合したお料理を、窓の外に広がる四季折々の景色を眺めながら楽しめるお店。展覧会のチケットがなくてもお食事ができます。

  • 庭園レストラン「コモド」

そして、新館に併設された「カフェ庭園」は、日差しがさんさんと届く明るい空間で、サンドイッチや美しいケーキとドリンクがいただけるお店。現在は、企画展に合わせた特別デザート「ホワイトチョコレートと木苺のオペラ仕立て」もいただけます。新緑が美しい今の季節は特に、テラス席でゆったりと過ごすのが本当におすすめです。

  • 新館 カフェ庭園

ご紹介した3つの美術館は、それぞれに魅力と見応えのある素敵な展覧会を開催しています。日常を少し離れ、めくるめくアートの世界への旅を楽しんでくださいね。